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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第六章 変革の刻編

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9.鳥

 それから数日経った今、私は支宣様と、三木堂の店主、誉堂の店主と一緒にいた。


「御方様、此方が先日の予約品の数です。あと「白珠油」の追加がニ百申し入れが」

「用意できる? 三木堂さん?」

 私は三木堂の主人にたずねた。これが決まればニ千万金になる。

 先日のローズクオーツ、ガーネット、トルマリンと香水「凛~シリーズ」を入れたら三千は越す。


「長谷部堂さんとも協力し、加工品の生産も順調です」

 長谷部堂は古くからの皇室御用達の店で時刻を知らせる「鐘」を初代が献上した老舗だ。

 近年は宝飾屋(首輪や腕輪に加工した物)を販売する国内トップクラスの宝飾品店だった。そこに「凛」ブランドデザインの宝飾を売って貰えるように、三木堂さんが話しをつけてくれたのだ。


「手前共の反物も順調に注文が来ております。妃殿下の桜の紋様の反物と、意匠の入った絹地で共に五百づつで決まっております」

「お願いできますか? 誉堂さん?」

「勿論で御座います。と、此方が先日注文頂いた新作の生地になります」


 あ!「ドレス」用にお願いした、シルクサテン! これよこれ!! うんイメージ通り。


「これでお願いしていいかしら? 誉堂さん?」

「分かりました。追加注文が参りましたら。都度ご報告します」

「はい。宜しくお願いします」




 ──そうして私達は伝ての店を頼り、奔走して約三億をストックした。

 それもこれも協力を申し出てくれた皆のお陰よね。と、隠し玉の予約をなんとか取り付けれたことが大きかった。


 反物、酒のラベル、食器から、筆、思いつく物全てに「R」のロゴと「凛」の文字や、物によっては桜の紋様を形振り構わず入れまくった。良いのかこれは? と言うぐらい、あらゆるアイテムの「R」の販売に踏み切った。


 その結果、プレタポルテが勝手に出来上がったのだ。


「R」のロゴ入りの生地を大量に作成したことにより、その生地を使っての「小物」受注で国内だけでなく、諸外国からの問い合わせが殺到した。


 ただ、一つ殿下に内緒で支宣様と私がやったことは……


「ロイヤル」の称号だ。


 国外には「王女」「王妃」が存在する国がまだ沢山ある。その中で通用する絶対的称号。

「プリンセス凛花」そう、皇后陛下のロイヤルの称号が必要だったのだ。


 王妃が立ち上げた国花を冠した「ロイヤルワイン」「ロイヤルウィスキー」「ロイヤル食器」などを勝手に作りまくったのだ。

 公的にはまだ婚約中の身である……



 さて、どうしたものか……






 ──支宣も一緒に謝りについて行くと言ったのを私は断った。

 ずるいかもしれないが、自分の価値に私は掛けてみた。

 これで切られたら、それまでだ。私は意を決して殿下の執務室に行く。


 仕事の話しだ。自宅で女の武器を使って報告するのは筋が違う。



 ──トントントン。


「入れ」

 惟光様の声がした。


「凛花です」


 そう言って私はドアを開いた。


 結がついて来ていないことに、少し惟光様は驚いた様子だが、特にそれ以上は何も言わなかった。


「殿下報告の議があります」

 そう言って私は先ず最初に、売上表と、入金済、入金確定予約金などを記した概要書を出す。

 惟光様が受け取り、殿下に渡した。


「ほう。三億のう。中々頑張ったのう。と言うか、想像以上だ。よう頑張ったのう」


 流石にこれだけの短期間でこの数字を出したのは殿下も驚いた感じだった。

 ただ、これには仕掛けがある。一番の問題はそこだった。


「殿下、実はお話してなかったことが一点御座います」


「あん?」


 殿下の顔色が一瞬で変わった。


「今何と申した?」


 惟光様が立ち上がる。


 ロイヤルを使用するにあたって、前もって許可を頂く必要性は理解していた。

 でも「光潤皇太子殿下」を使うわけでなない。私は彼と対等であり「妃殿下凛花」として自分を冠したのだ。私のブランドとして。


「わたくしの名を冠する際に「皇妃」として世に出しました。わたくし本人を価値として商品にしたのです」


「ふーーん。好きにしろと言ったのだし自分の名を使うんだから、俺の許可を取る必要はなかろ。ただ、俺に言わなかった理由を述べよ」


 来た! 流石殿下。怒られる? 反対される? いや、そんなことは考えてなかった。

 殿下に負けたくなかったのだ。殿下に言えば「国」が協力している事業となってしまう気がしたからだ。例え違う! と言っても、交易相手の諸外国は少なくとも背後に殿下の存在を感じ、殿下の顔を立てて付き合いで購入もあるかもしれない。


 今回「ロイヤル」を使うにあたって一番懸念したのはそこだった。

 だから「デザイナー凛花」が婚約し、「ロイヤル」になる記念品として宣伝したのだ。

 それでも背後にパトロンとして殿下が付いていると思われるのは仕方がないことだが。


「国に頼るのではなく、自分の価値だけでやってみたかったのです」


 とは言え、妃殿下にしても結局は殿下があるからその地位がある訳なんだけどね。

 私だけの名前では悔しいが動かない。

 でも、頼ってばかりの女でありたくなかったのだ。


「惟光、席を外せ」


「御意」



 殿下が人払いをした。


「困ったお嬢さんだなぁ」

 殿下が少し呆れて言った。

「まさか、たった二週間足らずで三億作ってくるとはな」


 殿下が笑いながら私の頭を撫でた。

「ごめんなさい……」


「お前の負けず嫌いは相当だな。しかしよく宣が()()を飲んだな?」

「反対されました」


「俺に保護され、護られるのがそんなに嫌か?」

 殿下は笑いながら少し嫌味を言う。


「違います……同じ所に立ちたいのです。追いかけるのではなく、隣に立ちたいのです」

「俺が疲れるわ……」

「ごめんなさい……」


「でも、黙って言うことを聞くだけの女はお好きじゃないのでは?」

 私は少し上目遣いに聞いた。

「たまには素直で言うことを聞くよい子が良いぞ?」



 ──俺の思い違いも甚だしかったな……

 この女は籠に入った小鳥なんかではない。


 腹が減れば餌を食いに戻り、眠たくなれば寝に戻る。飛びたくなれば大空を自由に飛びまわる。

 飼われているのではなく、そこに帰って来ているだけの自由な鳥だ。


 その帰る場所を間違わせないように、ちゃんと餌と寝床を与えないとな。

 大空へ舞って家を忘れないようにしないと。


 最高に悪食な鳥に出会ったもんだ。



 彼は窓の外を飛んでいる、大きな鳥を見た。


 彼女を自分の手の中で「皇后」と言う地位で縛りつけることになることを、恐れて懺悔していた自分の愚かさに笑っていた。



「まだまだよのぅ」



「ん? 何か言いました??」

「いや、何も」

 そう言って殿下は何か吹っ切れたような、とても清々しい顔で微笑んだ。


「しかし、まさか船まで売ってくるとはなぁ」

 殿下が苦笑いした。


 そう、一番の切り札は「ロイヤルプリンセスR号」の注文がニ艇確定したことが大きかった。

 南方の島国に話しを持って言ったら、大変気に入ってくれて即決だった。


 豪華客船の建造計画をしたのだ。

 この世界の船は、まだまだ貨物用の認識だ。

 鉱物資源の豊富な島国。国土は狭いが金は大量にあるはず。キャビンを豪華にした遊覧船の建造を商談してみたのだ。



「凛花、これを」

 そう言って殿下が大きめな紙をクルクルと丸めた筒を私に渡す。

 見てよいか? と目配せする。


「嘘……」


「これぐらいは手伝っても良かろう?」

 私は思わず殿下に飛びついた。



 そこには、見事な客船の詳細な設計図が描かれてあった。


「何で分かったのですか?」

 私はちょっと不思議に思ったのでたずねた。

 船の話しは支宣様以外誰も……!!


 まさかのスパイが!!


「海図や、船の建造図を奴が取りに来てな」

 殿下が苦笑いした。


 犯人は為時様だった。南方の島国に手紙を書いて貰ったのでまぁ仕方なかった。


 しかしまぁ、この設計図。



 この人に出来ないことってあるのかしら??


「殿下、職を間違えたかもですねぇ?」


「そうか? 政も結構頑張ってるんだけどなあ?」


 ですね……

 結構ではなくかなりです。はいすいませんでした。

 なんだか憎らしい感じがしたので、その綺麗な髪をツンツンしたあと引っ張って見る。


「何やっとんじゃ?」

「悔しいから……」

「餓鬼か?」

 殿下は呆れて笑っていた。











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