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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第六章 変革の刻編

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7.化身

「そんなに沢山は着れないですよぉ~」

「ん? なら一日に二回着替えると言うのも一興だぞ?」

「殿下!!」


 朝から私達は、殿下の執務室で小さな言い合いをしていた。

 あれ以来、私の着る服のデザイン、生地、色、全てにおいて、なんと全て殿下がしているのだ。

 殿下の画才は国内最高といえる程の腕前だし、それはそれで有難い話しではあるが。


 が! しかしだ! 毎日のように新作! と言ってはデザイン画をサラサラと描き「お針所」へ発注をかけている。当然殿下が指定してくる布地は最高級の絹地だ。それに金糸や銀糸を惜しみなく使い、贅の極み近い上質な物だ。ただ、下品な華美な物とは違い、デザイン自体はとても上品なで雅さがある。


「いやぁ。凛花にあれだけの着せ甲斐があったとはなぁ」

 殿下は私の話しなど聞いていないかのように、自分の顎に手をあてながら、紙にまた新しい衣の絵を描いていた。


 うん。この人根っからの「美」の魔道士だわ。私よりもデザイナーに向いていると思う。

 ちょっと悔しい気持ちはしたが、殿下の創作意欲を諌める。



 あ! 思いついた!


「凛花さん? 今度は何ですか?」


 流石は察しが早うなりましたな? 光さんや?


 この世界の服は、平安時代の程でもないが基本二部式着物に近い装束だ。

 下女や侍女はそのままだが、高貴な女性はそれに打ち掛けを羽織る。身分が高くなるにつれ打ち掛けの長さも長くなる。五つ重ねではないものの、正直重いし歩きにくい!


 もう少し軽い、夏場は特にワンピースみたいな? ドレスはどうだろ? ローブデコルテ? パニエで膨らます形のではなく、もう少し簡単なAラインなドレス。


 殿下から紙を奪い、拙いドレスの絵を描く。



「ん? 凛花? それは?? 下は袴ではない??」


 殿下が私の即興で描いたドレスの絵を見て、少し悪そうな顔をした。

 おい? 今何考えた??


 殿下が、閃いたような顔をして、新しい紙にサラサラと描きだした。


 才能とは時に残酷で不公平である。


 私は殿下に一度も今回はドレスの説明していない。

 私が描いた拙いドレス()のデザインを完全なローブデコルテに再現していた。

 しかも、少し柄や、刺繍を入れたとても可憐な感じにアレンジされている。


 そのドレスが描かれた紙を私の前に掲げ、満足そうに言う。


「うん。良いんじゃないか? この感じで数枚作ろう!」


 おい! 何故そうなる!!






 ──それから数日後、私は国内では「ドレス」の袖に手を通した最初の女性になったことは間違えない。



「良いねぇ? 思った通りの出来栄えだ。この背の紐が良いねぇ。解く時の楽しみがまして」


 ちょおおおおおおおおっと! 何考えてるのよ!!


 と、思ったら、殿下がそっと耳元に唇を押し付けながら


「これなら何処でも可愛い声が聞けそうだな」

 妖しいく囁いた。


「ちょ、殿下!」


「男が女に衣を贈る意味って何だと思う? 自分の手でそれを汚すのも楽しみの一つなんでね」

 背後に立った殿下は誰にも聞こえない小さな声で耳元で呟いた。



 上品で、まるで菩薩様のようで慈悲深い高貴で妖艶で、唯一無二の国の花。

 と、皆から愛でられている高潔な竜胆の花。

 その紫の花は、時に危険な薫を纏わせて狂い咲く。


 颯爽と髪を靡かせ去った背中がいつにも増して、色っぽく艶やかに見えたのは私だけかしら?


 色気お化けめ!!


 覚えてろよ? 


 何故か、負けず嫌いの血が騒いだ凛花であった。


 しかし、とんでもない化けの面、いや、仮面だな……

 夜になると昼間の温和で優しい菩薩像が、時に狂おしい程激しくなる。




 ◇




 新築された湯殿の中に、三人仲良く入るお年頃の男子がいた。


「なんで凛花より、お前らが先に入ってるんだ?」

「まぁまぁそこは?」

「凛花様とのは、凛花様の私室にも作りますよ? 其方でお楽しみ頂けたら宜しいかと?」

「そう言う問題か?」


「ところで、大丈夫なんですか?」

「ん?」

 支宣が少し心配したことを、直球で聞いてみた。


「ああ、多分? 一応はちゃんと。出来たらまぁそれはそれだがな」

「そうですか。承知しました」


 ──ブクブクブクッ


 何故か暫くの沈黙のあと、犬兄弟が湯船に頭まで浸かっていた。

 意外とシャイな兄弟であった。


「で、何でお前達も一緒に入るんだ?」


「たまにはご一緒しても?」


「たまにって、お前、ついこの前も入ってきたろ?」


「あーーーーーー宣抜けがけ!!」

「殿下! 言わない約束じゃないですかあ!!」


「抜けがけって……て、お前ら! 遊ぶな!!」


 そこは兄弟の水掛け、いや湯の掛け合いがすでに勃発していた。

 付き合いきれぬと思った殿下は先に黙って湯殿を出て、可愛い嫁の待つ寝室に向かうが、あろうことか既に、想い人はスースーと寝息を立てて夢の中だった。



「無防備過ぎるだろ。これで襲われても文句は言えんぞ?」


 そう言って掛け布団を掛けてやり、部屋を後にした男は、客間ソファに座り外を眺めていた。



 次の日に、機嫌が超絶悪くなる彼のことは、まだ誰も知る由もなかった。












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