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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第六章 変革の刻編

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6.小さな宝物

 ──私達は一列に並び、橋を渡っていたが、いつもと違う光景だ。


「お、おい、あれ」

「天女様?」

「綺麗~~」


「まぁ~~」

 口をポカンと開けて見る者、驚いて尻餅をついているもの、若い女性は頬に両手をあて硬直気味だが、その目はキラキラ輝いている。


 爽やかな風が一筋吹く。

 それに伴いふわりと流れるサラサラの髪から、仄かに香る香雪蘭(フリージア)と百合オイルを配合したこの世界での一般的な香木を使ったものではなく、草花から抽出する精油、香水を使用した。


 これも信に命じて、各種急ぎ作成中だ。「ブティック凛」で販売する一押し商品の一つ。

 侍女達にもその「広告塔」として働いてもらう為、柑橘系やフローラル系の試作品を使用させている。


 香木は香木で上品な高貴な香りが楽しめる。ただ高貴な薫のものは、そのお値段も可愛くない値段であった。

 殿下が愛用している伽羅はとんでもない値段だ。

 そこで少量でも楽しめる精油からの香水販売に着目した。


 そんな観客に、私はにっこり微笑んで小さく御手振りをしてみる。


「きゃぁーーーー」

「私を見られたわ!!」

「お美しい!! 天女様!!」


 段々、殿下に似てきたような……あそこまでの地がないので、化粧と衣装と所作で誤魔化すが、これで数名の侍女はゲットできたはず!


 侍女を増やすのには意味があった。職の斡旋もあるが、私が探しているのは「ブティックプレタポルテ凛」(仮の名前)の店員だ。RIN・SAKURAの夢はまだ実現してない。




 ──後を付けて来ていた男女に手を振り、私は殿()()()執務室の前に立つ。

 大所帯になった「政務秘書官室」は新体制になった今、裕進様の後進の者達で実質行っている。

 入室制限のある部屋の為、秘密の話もしやすいのだ。



 ──トントントン

 結がドアを叩く。


「入れ」


 惟光様の声がした。


「おはよう御座います」


 私は普段と変わらぬ声だが、少しだけゆっくり歩き、ほんのすこしだけ皆に軽く会釈をする。


「え?」

「ちょ、」

 犬兄弟が体制を崩し、あの冷静な柴犬が豆鉄砲を食べたあとの顔をした。


「何事でござる? あ、いやごぁい、あ、ござります……」

 最早、裕進様は何を言っているのかわからない状態である。


 皆が慌てふためくなか、一人すっと立ち上がり、微笑んでいる御方がいる。


「ほぅ。そう来たか。相変わらずの負けず嫌いよのぅ。そのままで良いと申したのに。ハハハッ」

 そう言って殿下は笑った。


「お嫌いですか?」

 私はにっこり微笑んで、殿下にたずねる。


「このまま、寝所に掻っ攫いたいぐらいだ」

 殿下はその笑顔のまま両手を広げた。


 私はその手に納まらず、続ける。


「もっともっと上を目指します! 付いて来てくださいね?」

 そう言って彼にウィンクした。


「その勝負受けて立とう」

 そう言って、殿下が私の腕を掴み軽く抱きしめる。

 だが、私は肩にのせられた手をそっと離し、続ける。


「今日の議題は何ですか?」


「お、お前……」


「ささ? 仕事の時間ですよ? 皆さん?」


 ワナワナしている高貴な御方をスルーして仕事モードに入る私を侍女衆が後に続く。

 まだ、夢見心地の裕進様や、プルプルしている犬兄弟を蹴散らし、手際よく仕事を進めていく精鋭侍女軍団。


 この日を境に彼女らは「凛花親衛隊」と別名が付いたことは、また別のお話。





 ◇



「殿下、お願いがあります!」


 私は意を決して殿下に言った。


「お前のお願いは毎回とんでもないお願いだが、今度は何をしでかすつもりだ?」

「今回()危険はないですよ?」

「本当だろうなぁ?」


 私はプレタポルテのブティックの計画について皆に話した。


 安価ラインの雑貨屋「凛堂」の評判はよく「R」を模したハンカチや、屑石をつかったアクセサリーなどの売れ行も好調で、他には巾着やら手提げ袋等も順調に売れていた。


 この機会に、高級服飾店、セミオーダーメイドの店を市井で作りたいのだ。

 政府高官の家は「外宮」にある。その御家族をターゲットにしたいのだ。


「良いんじゃないか? で、どうせその意匠も自分で描きたいと申すんだろ?」

 殿下は苦笑いしながら私を見た。

 流石はよくご存知で!!


「少しお手伝い願えたら? と」

 店舗の立体画の出来栄えは確実に私より殿下のほうが数段上だ。


「俺がお前に惹かれたのは()()だよ」

 そう言って殿下が私の頭をポンポンと軽く叩いた。


 ん? 何処? 

 何処? 何処ーーーーーー!!


 今の会話に、そんな色っぽい会話なんか何処にも無かったけど??

 それとは? どこですかああ!!


「それとは?」

 私はすかさず聞いた。


「そう言うところだハハハッ」


 え?? どういうところ??

 私は、犬兄弟を見る。

 二人共、首をブンブン横に振る。


 うん、君らに聞いた私が馬鹿だった。

 親衛隊を見る

 同じくブンブンした。


「何処ですか? それって?? ねぇ? 殿下ぁ? ねえってばぁ。教えてください!!」


 私は殿下にしがみつき縋るような目でたずねた。


「ハハハッ。そこだよ」

 そう言って殿下は柔らかい笑みを浮かべた。

 その笑顔は少し普段より崩れた、目を細めた笑顔だった。



 身分関係なくズケズケと突っ込んでくるかと思えば、妙に堅く、そして何か閃いたら一直線で突っ走る。喜怒哀楽が直ぐ顔に出てクルクルと表情が変わる。時に人目を気にせず童子のように甘え、泣く。そんな女に惚れずにいられようか? 

 そんな女が、真っ直ぐに自分を求めて乱れる姿を他の男になど。

 出来るはずがない。


 俺は目の前の女性にもう何度も心を奪われていた。




「凛花。おいで」


 手を放したら、何処までも飛んで行ってしまいそうな小さな鳳凰(たからもの)を、俺は自分の手から逃げないように見守るだけが精一杯だった。


 飽きられてしまうかも知れない?


 冗談じゃない。その瞳に映り続けたい為にどれだけ頑張っているか?


 目の前でキラキラ輝く小さな小鳥が、安眠出来る場所を作るだけが、精一杯なのに。


 愛想尽かして飛んで行きやしないか?

 心配なのは俺のほうだ。


 自由に飛んで行く翼を折ってでも、自分の我儘で籠に入れた罪を一生背負い、大事にして行くと誓ったあの日。



 それでも、俺は彼女が欲しかった。
















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