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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第六章 変革の刻編

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5.婚約発表

 その後、直ぐに国全体に私達の婚約が正式に発表された。


 が、思ったよりも皆の反応が薄く? と言うよりは、皆薄々と気づいており、今更感のほうが強かったらしい。従って大きな混乱もなく、正式に発表されたことで、日々祝いの品が多く届くようになったぐらいだった。


 一つ大きく変わったことと言えば──


「行ってくる」


「いってらっしゃいませ。後程わたくしも、参内します」


「ああ、無理せずとも良いぞ? 少しはでも慣れたようだな? 俺の身体にも」

 そう言って殿下が頭を撫でる。


「もぅ。遅刻なさいますよ?」

 私は恥ずかしくなり、殿下を追い出すように部屋の扉を閉めた。


 あの日以来、私は殿下の宮で殿下と寝食を共にしていた。


 ケジメとは……


 私が自分から破ってしまったケジメ。

 結婚の儀までには……


 いつかは言わなくてはいけない、私の秘密。

 私は思い悩んでいた──



 うん、考えても仕方がない。

 もう引きかえすことは出来ないのだから。前に進もう。


 って……下腹部に鈍い痛みを感じた。

 でも、それが私は嬉しかったのだ。彼の感触がまだ残っているかのようなこの感触が。


 ──早く帰って来ないかなぁ。



 と、悠長なことを言っている場合ではない。

 私は、彼の言った言葉を思い出した。

「愛され続ける女になれ」


 当たり前だ。どんな絶世の美女ですら、綺麗でいる為の努力を惜しまず続けてきた。

 それに伴う教養や所作は当然のこと。

 なら、凡人なら?

 答えは簡単だ。彼は今のままの私で良いと言った。でもそれは「今頑張っている私が良い」のだ。


 地位にあぐらをかいて、何も努力せず、向上心も探究心も捨て、贅沢だけを追求する者に愛想をつくな。と願うほうが我儘な話だ。



「結を」


 私は侍女を部屋に呼んだ。


 私室がまだ完成していない為、彼の部屋の奥を仕切って本来は客室となる部分を仮の私室としている。まぁ仮とは言え、十分の広さではある。


「化粧をお願い出来るかしら? そして爪を此方で」


 先日偶然手に入れることが出来たマニュキュアである。婚約発表の産物だった。諸外国からの贈り物の中に入っていた物で、今急ぎで信に成分を研究させている。

 研究肌の信にはそういう物の開発を任せることにした。

 彼のお陰で絶対この国の産業は発展するはずだ。


「あ、髪の香油は少なめにしてね? 頬は此方の色粉を」


 そう此方の化粧の主流は所謂、能面メークが主流。西国系の顔立ちだから、それでもまぁ何とかではあるが、真っ白な顔に唇だけ濃い赤い紅を引く。チークや、アイシャドウは基本無し。


 うん。絶世の美女ならまだしもだ。中級の私が、それも日本人である……濃淡が欲しいところだ。


 此方の高貴な女性の受け入れがたいファッション二つ目に髪、髪のセット方法だった。

 折角の綺麗な御髪でも、香油を塗りたくってはサラサラ感が全くないのだ。寧ろベトベト感しかない。

 艶は増しても、それは油の艶だろう! と言いたい。

 髪にたっぷりの香水油塗りたくり、服にも香木認めて、最後に全身に振りかける。


 うん。虫が寄ってきそうなぐらい、の匂いだ。

 その人が遠くから近づいただけで、今では誰かわかるようになった。


 本当のオシャレとは、さりげなさ? ではないかと。

 と、折角の髪なら、それがサラサラと風に靡く。これだろ! これ!

 光様のようにはいかなくても、見た目だけでも()()は真似する価値はある。



「綺麗~」


 侍女衆から声が上がる。


 まぁ、陰影テクニックを使ってちょっとズルしてますけどね? あくまでもナチュラルメーク目指しましたけどね? あまりキラキラさせず、ほんの少しだけ艶感を出すメーク。少しだけ下唇を大きめに紅を引き、ぷっくり感を出し香油をほんの少しだけ塗った。


 勉強ばかりしていたが、雑誌や動画でメイクを研究するのは好きだった。絵画が好きだったように、大学生になったら自分も! と思い、ファッション雑誌は毎月買っていたのだ。

 高校デビュー出来なかった私は、大学デビューの為、色々と研究していたのだ。



「妃殿下、髪飾りはどれを御付になりますか?」

「妃殿下はまだ……」


「申し訳御座いません、でも……凛花様は流石に……」

 侍女の一人が申し訳なさそうに下を向く。

 ですよねぇ。私もわかるわそれ。


「僭越ながら、皇太子殿下より「妃殿下」と本日より御呼びするよう達しが御座いました」


「え? そうなの??」


 私は結のほうに顔をむけた。 

 知らなかった!!

 まぁ呼び方なんか何でもよいか? 皆が好きに呼んだら。ってこれっていつぞやの殿下?

 最初にお会いした時のやり取り! と、ほんのまだ二ヶ月も経ってない頃のことを思い出した。


 にしては、凄い急展開だったなぁ……

 二ヶ月ちょっと前は私は違う世界に居たのだから……

 そして、今は別の世界の后になろうとしている。

 麗しの君の傍で。


 一瞬、彼の熱い身体、時折、苦痛に顔を歪める本能を隠さず見せる艶かしい様相を思い出し、頬が熱くなるのを感じた。


「妃殿下?」

 結がたずねたが、私は何でもないと誤魔化した。



「お美しいです……」

「うわぁ~~」


 化粧。化けるって言うのはあながち間違ってはないわね。


 うちの侍女達は精鋭揃いだ。()()以来、結が本気で選定した、文武両道、特に武芸は必須、それ以外に裁縫や料理、算術、センスに至るまで全ての厳しい試験を合格した者達ばかりだ。


 その中でも私に直接接する、衣装係や、湯浴み、化粧係は特に美に対して研究熱心な見目麗しい者が揃っていた。

 今や惟光様の侍女衆から「結軍隊侍女衆」と怖がられる研修を行っていると聞いた。

 侍女の育成は結に全てを任せている以上、私は口出すことはしない。



「御手を、凛花皇太子妃殿下。参りましょう」

 結が私の手を取る。


 いざ、出陣の時である──











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