4.逢瀬
──「凛花。お前、自分が何を言っているのか分かっているのか? 先程言ったろ? そんなことがなくても関係なく俺はお前を愛していると。無理することはない。俺はお前を大事にしたい」
「違うのです。私が殿下を欲しいのです!!」
私は自分の気持ちを誤魔化すのはもう止めた。
今までも、こんな状態になりかけた際、本当の気持ちを誤魔化し逃げていた。
飽きられるから? 捨てられるから?
関係ない。
私がこの人と繋がりたいと願うからだ。
もう自分に嘘はつかない。
「まいったな……」
「途中で止めて欲しいって言っても聞かぬぞ? いいのか? それでも?」
「はい」
私は覚悟を決め、目を閉じる。
「優しくしたいが、その自信はないぞ。受け入れろ」
そう言った殿下は、自分の上衣を脱ぎ捨てた。
──アッ イッ
「力抜け、直ぐ楽になるから」
「あ、」
伽羅の薫と殿下の吐息が混じり合う。
既に思考することすら、ままならない。
段々早くなる鼓動を感じながら、殿下の吐息が荒くなる。
しがみつくだけが精一杯の背に、汗が滲んでいる。
殿下が髪を掻揚げた隙間から見せる、狂おしい本能の姿。
止まることのない激情。
堪えきれず彼の背に爪を立てる。
アッ
それから、もう何度も突き上げてくる痛みをのみ込み、押し寄せる波に身体を任せながら、彼の流れに合わせていく。
とめどなく続く激情の先で朝を迎える頃、今まで味わったこともない感覚が体中を駆け巡った。
◇
「おはよ?」
ハッ!
昨夜の殿下の艶かしい汗と吐息を思い出してしまい、顔が赤くなった。
「昼まで寝てろ。朝食の用意をさせておいたから腹が減ったら食え」
「何処に?」
私は殿下の腕を思わず掴んだ。
「そんなに良かったなら、続きをしたいところだが残念だが夜までお預けだ」
「何事かあったのですか?」
私は不安になり、聞いた。
「いや、定例会議の時間だ。流石になぁ、このままお前を抱いても良いが、そこはなぁ? 仕方あるまい」
は! 忘れてた!!
今日は週一の全体会議だった!!
──イタッ
飛び起きようとした瞬間、下腹部に激しい激痛がした。
「無理するな。徐々に慣れれば良い。まぁ俺が悪いのだけどな。ちと抑えが効かなくてすまなかった」
そう言って、殿下が軽く私の肩を抱いた。
私は彼の袖を掴む。
「おい!」
「ごめんなさい……」
分かっている。皆が殿下を待っている。そして彼が行かないと駄目なことも。
それでも私は縋ってしまう。強請ってしまう。
殿下の唇が覆い被さってきた。もう何度もした口づけ。
激しく奥まで入り込む。
何度も繰り返し探られ、殿下の手は下方へと。
「ちょ、殿下、か、会議に遅れます……」
それでも殿下は続ける。
首筋を通り、下着しか着ていなかった衣に手が掛かる。
「あっ」
思わず声が出てしまうが、即座に唇で塞がれ手首を強く掴まれた。
振りほどこうとするが、気持とは裏腹に身体が先に反応し、彼を自ら求めて身体を捩る。
それに応えるかのように強く奥へ。
「あ、」
昨夜のせいで敏感になっている私は
思わず声が漏れた。
そのまま彼に身体を預けた私は、何度も繰り返し誘われ、もう立ち上がることも出来ないぐらいの気だるさと、激しい睡魔に襲われた。
「行ってくる。おやすみ」
殿下が額に口づけしたのを感じながら深い眠りについたのだった。
◇
「大丈夫ですか? 殿下? 凛花様のお加減が悪いと、紀恵殿より連絡を受けたのですが? 医務士を呼びましょうか?」
支宣が心配そうに聞いた。
珍しく遅れて来られたが、少し殿下の様子も普段と違い、凛花様を心配されているのだろう。
会議も一段落し昼食の準備の為に、皆が部屋を後にした。
部屋には殿下と、弟の宣と俺の三人しか居ない。
「支宣、婚約発表を早めるぞ」
殿下がいきなり唐突に言う。
「え?」
「まあ、……そう言うことだ」
「は?」
「え?」
「ちょ、殿下??」
「一応報告はしたからな?」
そう言って殿下が隣の資料室に足早に去った。
俺達二人は顔を見合わせた。
が、瞬間、二人で鍵が掛けられた資料室のドアを叩いていた。
「開けて下さい!」
「何でまた? 殿下!!」
──その後やっとのことで鍵を開けた殿下は、二人の兄弟から厳しい取り調べを受けたのは言うまでもない。
「もう、よいだろ? 全て話したではないか」
殿下が、涼しげな眼差しで俺達を見る。その顔があまりにも爽快で凛々しく見えたのが、少しばかり羨ましくなったが、それとこれとは別だ。
『ダメです!』
『いいから、座って下さい!!』
「あ、俺に伽番は要らぬぞ? 他の女を抱く予定は今後一生ないから、稚児が出来たとて凛花との子しか出来ぬから記帳する必要はなかろ? まぁお前らにそう言う趣味があるのなら、好きにすれば良いけどな?」
──「趣味って……」
「一応護衛の問題もあるしなぁ……」
「寝所で私欲の願い事をするのを防ぐ目的もあるのだが、御方様だしなぁ……」
「それは今更だろう、それに側室作らないなら私欲も何も……」
「最近は剣術も習われておいでだしな……」
「結から聞いたわ。中々の腕前らしい」
──今日も、大好きな主の為に兄弟は仲良く悩み中でした。




