10.園遊会、いや運動会です
布教活動、もとい、民への労い活動も無事終わって、政務秘書官室に戻って来た私達は、今イツメンで会議中だ。
来月に開催される予定だった「園遊会」について。
だったと過去形なのは、元々これを計画したのが、今上だったからだ。
今上とはもはや名ばかりで、本人はさっさと御所を出て、今は母上の宮で生活中。皇后陛下も、親王殿下も一家でお引越ししてしまったのだ。
「なぁ、これやる意味あるのか?」
半ば呆れ顔の光様が言う。
「……」
そもそも今は後宮は殆ど機能していない。
女達を集め宴会を開く意味が最早なくなってしまったのだ。
でも折角、三木堂さんに用意して貰った贈り物もあるしなぁ……
婚活パーティーでもやる? なら?
「では、宮に務める官や女衆、その御家族等や、三木堂さんや、文和堂なども招待して、懇親会でも開きますか? ならばそんなに無駄な金の出費ではないでしょう? 労いにもなりますし」
何言ってんだ? お前!って 顔で みんなが私を見た。
そもそも、宮殿内に、宮仕えの家族を呼ぶとかありえないだろ? の顔だろう。
「凛花様、流石に無理が御座いましょう?」
惟光様が苦笑いで言う。
まぁ警備担当ならね。大変でしょうけど。
「宮で働く者の家族ですよ? 滅多なことをするような肝の者がそうそういるとは考えにくいですけどねえ? 何なら出席にあたり、後見として本人に署名さすのも」
自分の娘や息子、夫や妻が働いている職場、しかも国の中央だ。ある程度の両家の子女達が殆どだ。
おかしな行動を取る心配は少ないとは思うが、最悪の保険として何か起こせば、一族処刑すると脅しておけばまあ問題はいだろう。
「殿下に似てこられましたね……」
支宣様が私を呆れた目で見た。
うるさいぞ? 柴犬め!
「で、何処まで呼ぶつもりだ? それは?」
殿下が具体的なことを聞いて来た。流石は光様。もう次に頭は向いていた。
「出来れば希望者全員を。食事は簡易で立食式。配膳ではなく、各自で所定場へ取りに行く形を」
そう、大掛かりな料理は到底無理だ。バイキング形式で行いたい。
「それは構わぬが、ただ一つ懸念は、混入の危険は?」
それだ! 私もそこだけはちょっと考えていた。現代日本と違いやはりまだまだ……な時代。
怪しげな薬や毒も存在するのだ。
待てよ? ならば持参にしたら?
「では、持参にしませんか?」
「はあ??」
流石の光様も久しぶりに驚いた顔をした。珍しく「シ」がひっくりかえるぐらい高い。
園遊会といえど料理目的ではないはず! ちゃんと土産は用意すれば!
「料理を食べる! が目的ではありませんよねえ? 皆を労うのであれば? なら皆が思い思いの弁当を持参し、身分の隔てをなくし、一緒に食べ交流すれば宜しいのでは?」
『……』
「まぁ間違えではないが……」
光様は何やら思案しているようだ。
「では、代わりに褒美を与えるのは如何でしょうか?」
「褒美? どうやって?」
少し殿下がくいついて来た。
「今回三木屋さんで用意した「白珠」は本来側室様や、高位女官様用に用意した物ですが、それを褒美対象にします」
「側室如きに様なんか要らん。で? 褒美対象とは? 如何に?」
一瞬不快感を顕にされたが、そこは直ぐに切り変えて続きを催促してきた。
「懸賞、富くじ? 矢? そこは色々な趣向を行いですねぇ。その勝者にと言うのはどうですか?」
うん、園遊会やめて運動会にしよう! 運動苦手な人にもチャンスある為に、いろんな種目考えよう!
「はあああああああああ? 富くじに? あの宝珠を? お前気は確かか?」
流石に光様もちょっと驚いた、いや呆れた? 御様子である。
恐る恐る、犬兄弟を私は見た。案の定、今にも食いつきそうな犬が二匹。
これ、私、処刑される案件かしら?
そこから私は必死で三人いあの手、この手で説明し、説得した。
「まぁ……競を行うのは良しとしようではないか。ただ、あれは俺が意匠を考えた物だぞ?」
「その殿下、いや皇太子殿下を御支えする者とその御家族で御座います。殿下に命さえも捧げる者達ですよ? 全員私達の家族も同然、子らです! 側室如きより、よほど尊い方々で御座います!!」
言ったーーーー
処刑されるかしら………
それでも、私は殿下の顔から目を背けることはせず、真正面から殿下を見つめた。
「だそうだ? 急ぎ準備しろ、惟光、支宣」
「御意」
「宜しいのですか?」
私は、殿下のお顔を少し下から見た。
「凛花さん、その顔はやめなさい」
そう言って、頭に軽くコツンとされてしまう。
「聡い、跳ねっ返りの夫は、何かと忙しいのぅ。ハハハッ」
そう言って殿下は笑った。
競技内容や告知に関しては、後程各配下へ回し、案を募ることで決定した。
それでもやはり人が集うとなると、準備はそれなりに大掛かりになる。何せ人数が問題である。
ただ、皆自分達が参加する会、自分の家族が参加する会と言うこともあり、意外と皆積極的に協力してくれ、準備もスムーズに進んで行った。




