7.白珠
──店主が奥から出して来たものは、ちゃんと研磨されており、品質上質な物ばかりだった。
お金足りるかなぁ……
とりあえずでも、選んでから考えよう。
「これと、それと、こっちの水晶と、翡翠と、あと其方の銀粒と金粒と……」
これ持ち金で足りないかも……そう思っていたら。
「凛花、私にも作り方教えてくれない? あの人の分を。だから一緒に選んでちょうだい。お代は、教授代として私に出さしてちょうだい?」
「で、でも……母様、これは私が……お礼に……」
「その気持ちだけで十分よ。きっと喜ばれると思うわよ?」
そう言って母様は優しく微笑んだ。
光様へのプレゼントって私言ったっけ?
「こっちが良いかしら?」
「父様ならこの瑪瑙と、瑠璃が宜しいのでは?」
「そうねぇ、あ! ついでに私の分もお願いしようかしら? なら凛花のも一緒に買いなさいよ?」
「え?」
「お揃いで。ね?」
「そんなお揃いだなんて……」
まぁでも、プレゼントしたからって付けてくれるかは分からないんだけどね……あんな高貴な方が私の手作りなんかを……
結局四人分の宝珠を大量購入することになったのだが……。
「これ以上は無理ですって、うちが潰れてしまいますって」
「では、これでは?」
そう言って母様が再度そろばんを弾く。
値切るんかい!
二人の一歩も引かない攻防戦をよそ目に、私は店内をウロウロしていた。
ん? これは?? まさか天然真珠? それとも養殖? ってこの時代に核入れして養殖する技術なんかあるのだろうか? 最低でも二年は用するはずよねぇ。そんな長期に渡り、海で養殖なんて無理よねぇ…… では天然本真珠? うそん! この大きさの??
「店主様、こちらの白い珠は真珠ですか?」
そろそろ値段交渉の決着がついたようで、私は店主に聞いた。
「おや、お嬢ちゃんお目が高い! この「白珠」に目をつけるとは!」
こっちの世界だと「白珠」て言うのね……
「此方は貝から取れた一品ですか? それとも、養殖で?」
「よう? しょく?」
あ、養殖って言葉が分からないか!
「貝の中に小さな核、を埋め込み、年月をかけて育てた物ですか? それとも貝からこの形で採取したんですか?」
「ちょ、ちょっとお嬢ちゃん!!」
しまった!
店主の顔色が真っ青になり、硬直した。
ガラリと変わった空気に一早く気づいた両親が、私の両隣りにすっと来た。
「嬢ちゃん、それは何処で知った? いや聞いた?」
私はどう答えたら良いかわからず、母様の方を向く。
母様は優雅な物腰で
「三木屋の旦那、この子はねぇ実は宮廷の高官の女官なんですよ。今日も主のお使いで市井に出ただけで、だから其方方面で色々書物や見聞をちょいとね」
そういってこれ以上は聞くなと、圧がこもったウィンクをした。
「そ、そうですか……。女官様とは知らずに無礼を、お許しください」
「あ、い、いえ此方こそいきなりすいません」
でも、どうしても気になった。養殖技術が存在しているかを!
「で、何方なんですか? 育てたのですか?」
「……。まだ実験段階ですので、絶対にご内密に願えますか?」
そう言って主人は私達を奥の部屋へ通した。
結論から言うと、やはり真珠の養殖を行っているそうだ。
なんでも奥方の里が海の近くで、その一帯にはアコヤ貝があり、真珠自体は昔からたまに採れていたらしい。ただ数があまり採れなく商売にするには向いていないから、家に飾っておいたり、神事に使ったりと。市場に出回ってないのはそういう理由だそうだ。
天然本真珠が、珊瑚の値段の半分以下と聞いて驚いた。
ありえない……
しかも9ミリ超えの大玉もある。
これだけでも欲しい!!
核の注入は偶然の産物らしい。それから研究を重ね試行錯誤して今に至るそうだ。
驚いた。これは外貨獲得のチャンスかも!
米飯の普及により、今、絶賛開墾中! ではあるが、やはり金がなければ賃金も払えない。
国が豊かになるには外貨獲得は重要だ!
私が色々店主と真剣に話していたら、母様がいきなり言い出した。
「三木屋さん、今此方にある「白珠」を全て頂くわ。あるだけ買い取ることはできますか?」
は?
え??
お金は?
「全てですか?」
「ええ、でも生憎今私共には、先程の買い物で、持ち合わせがないの。藤の家の総領息子、右大臣中尉中将閣下をご存知ですか?」
「へ?」
「え?」
店主様も私もまさかの名前が登場したことで驚いた。
「今から其方に使いをやりますから、お代は少々お待ち頂いても宜しいかしら?」
「え? 藤の家のっていやぁ……左大臣家の?」
「左用。この子の上官は、右大臣中将閣下です」
言うんかい! 母様!!




