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20.おにぎりと卵かけご飯

 ──「お待たせしました」


 そう言って私は、釜ごと執務室にある長テーブル横に運んできた。


 昨日、「料理処」のワゴン台を一台頂いてきたのだ。最近何故か毎食必ずやってくるこの兄弟と、宮様。

 まぁ光様に関しては、ご自身の東宮御所(以前父帝が即位される前に使っていた所)を出て此処に引っ越して来られたんですが……。それに、両親と大所帯になったので、配膳が便利と言うこともあり、頂いたのだ。まぁ正確に言えば、宮様が勝手に取って来たのだが。勿論運んだのは宣様だけどね。


 此処って確か「政務秘書官室」だったような?

 料理処じゃないよねぇ。とも最近若干思うけれど、まあ、美味しいご飯を広めることは、国民の働く意欲と、健康、脳の働きも良くなるしね。国政において大事なことだから、よしとしようか。


 とりあえず、この「粥生活」を何とかしたかったのが、正直なところだった。


 ──ジャーーーーーン!!


 釜の蓋をそっと開けてみる。


 そうそう、これよこれ! 甘くて柔らかく食欲をそそるこの匂い! そしてこの艶々!

 粥では表せないこの、ピカピカよ! ダイヤモンドの輝き。まさに至高の輝き!


 宮殿に納められている高級米であろう米を、竈で炊き上げたご飯! 美味しくないわけがない!!


 炊きたてのご飯を軽く混ぜ、椀に盛って行く。

 先ずはこのままで、少し召し上がってもらおう。


「先ずは皆さんこのままを召し上がってみて下さい」


 皆、目をパチクリさせて、ご飯を一つまみ口にいれた。


『なんじゃぁ、これはーーー!!!』


「美味い」


「おいし!!」


 聞かなくても、皆の無言で茶碗のご飯をもくもくと貪る姿で、感想はわかる。


「まだ、この後もありますので、その辺で一旦止めて頂いても?」

 そう言って、ストップを皆にかけた。


 いつまでも貪り続ける熊男から茶碗を取り上げると、泣きそうな顔で此方を見てきた。

 まぁまぁ待ちなさい。気持ちは分かるけれども。この後に続く、握り飯や、卵かけごはん。シメの茶漬けと、フルコースがあるんですから。


 先ずは卵かけご飯から。

 用意した卵にほんのすこし醤油を入れ、箸で混ぜる。

 そして、先程のよそったご飯に投入!


「え? このまま? 火を通さずに良いのですか?

「え? 生で?」


 この卵は、宮廷内で飼育されている鶏から毎朝産みたてを使用している。半日も経ってない新鮮な卵だ。生で飲めるぐらいの代物だ。


「問題ありません。本日産みたての卵で御座いますゆえ」

 そう言って皆にすすめた。


 皆、恐る恐る箸を椀に近づけ、卵かけご飯を一口、口に頬張る。


『なんじゃこりゃあーーーーーーー!!!』

「これまた美味だね」

「美味しいわねぇ」


「あ、皆さん、まだ他にも御座いますから、先程同様そのぐらいで一旦止めて下さいよ?」


 そう言ってまた、熊男の茶碗を取ろうとしたら、今度は両手でがっちり抱えて離そうとしない。


「父様……」

 そして、今回は中将様も同じように、まだモグモグをやめてない。


 まあ、お若いから二膳程度なら問題ないでしょう。と今度は最初に椀によそってすこしご飯を冷ましていた物を持ってくる。


 手水を用意し、すこし塩を手につけ「おいぎり」を作る。

 具なしの「塩むすび」昆布の佃煮をいれた「昆布むすび」高菜の漬物をいれた「高菜むすび」と、脇に大根の漬物を少々のせて。

 今回は「おむすび」の定番の形である「三角おにぎり」にしてみた。


 私が握っている姿を見て、母様が見よう見真似で手伝ってくれた。流石母様。簡単な説明だけで最初はまん丸だった「おむすび」が慣れてきたらちゃんと三角になっていた。


「こちらが、塩だけでこしらえた物。そして左から順に中に具材が入っている物になります。どれでもお好きな物をお取りください」


 そう言って皆の前に出す。皿の上に笹の葉を敷いてみた。

 いずれは竹皮で「握り飯」を包み、外出用の弁当にしたい。と思っている。


「これまた、美味い!」

「なんだこれ? 塩を使っただけでこのように違うのか?」


「ワシのは、昆布が入っておったぞ! これはツイておるわ!」

「兄様、この高菜入り、ピリリと苦味があり、なんとも言えませんよ。何個でも食べれます!」


「凛花、全種、私の前へ持って来なさい」


 うん。「おむすび」は気に入ってもらえたようだ。


 そして、最後にすこし残った茶碗に白茶を注ぎ、そこに昆布をいれた茶漬け、大根の漬物をいれた茶漬け、高菜と昆布を入れた茶漬けを、皆の前に置いた。


 先程の「おむすび」で学習済の皆は、直ぐに各自手に取り、茶漬けをサラサラと召し上がられた。


『ふーー美味い!』

「美味しかったわ。でもお腹一杯。今日はお昼はもういらないかも」

 と、母様は満足そうに笑いながら言った。


「凛花、後ほど昆布を入れたこの三角の「おむすび」と言ったか? それを部屋に持って来てくれ」


 え? 光様? まだ食べるのですか??



 皆に「粥」ではなく「ご飯」の良さを分かって貰う為の試食会だったけれど、大成功だった。

 

 後に、食いしん坊兄弟が「食事処」にも「ご飯」を持って行き、今日のレシピを色々とまとめて、広めてくれると約束してくれた。


 これで、若い働き盛りの者達の活力に少しでも貢献できれば良いな。と思った。


 そして、新たな発見をした。


 光様って普段あまり食べないので食が細い方だと思っていたんだけど……

 実は大食い? 




 やんごとなき御方の大食い疑惑がにわかに立とうとしていたことは、また別の話。





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