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はじまりの刻 ~Shall we sweet?~  作者: 蒼良美月
第一章 出会い編
18/34

18.ごはんが食べたい

 ──由緒あるレシピのいきなりの改変に「御料理番」様は当然最初は激怒していたそうだが、その話を持って行ったのはなんと「皇弟君」自らだった。


「御料理番殿、すまないが()()してくれないかねぇ?」


 皇族に「すまないが善処」と言われて否を唱えれるはずはなかった。

 それは善処ではなく、もはや命令であるから。


 ましてや香瞬様の紹介状付きの指南役。受け入れる以外の選択肢は彼にはもはやない。


 そうして、またも「鶴の一声」を最大限に利用し「宮廷食事処」のレシピはどんどん刷新して行った。

「宮廷食事処」と言ってもこれと言った名前がなく、折角だからこの機会に名前を考えよう! となった。

 ここは、侍女や宮廷で働く者全てが利用できる、所謂「食堂」だ。


 ただ、警備の問題上、市井の者達は利用することが出来ない。「内宮」内に設置せれているからだ。

 では、少し手頃な値段の弁当を作って「外宮」で売ってはどうだろうか?


「宮廷メニューの弁当」

 これは売れるんじゃないか? 皇室に出される御前とは違って、武官達や侍女等に出される「食事処」の定食は実際そんなに豪華な物ではないし。

「カツレツ定食」や「照り焼き定食」「しょうが焼き定食」どれも庶民的な味だしなぁ。

 弁当箱、簡素な物で構わない。竹皮や竹筒などの。


 あ! これを市井に外注すれば? そしたら、民の小遣いかせぎ、内職にもなるし!


 ついでにプリンも売っちゃう?


 早速私は、紙束を取り、頭の中に浮かんだ構想をサラサラと書いていた。



「おはようございます」

「やぁ、凛花さん、って早! 早起きだねぇ?」


 中将様と、支宣様が()()してきた。


「朝食の用意ができましたよ? あら? お二方。ご一緒しますか?」


「母様、ありがとう御座います。朝餉まで作って頂いて。それに洗濯まで……申し訳なく……」


「何言ってるの? 凛花。好きで私がやってるんだから。昨日はちゃんと寝れましたか?」


「はい。お母様」


「ご一緒させて頂いても宜しいでしょうか?」

 そう言って少し申し訳なさそうに中将様が、母様にたずねた。


「はいはい。ちゃんと()()()ご用意できておりますよ」



 暫くして隣のドアがゆっくり開いた。


「おはよ。凛花。貞舜」


「おはようございます。殿下」


 今日は珍しく寝巻きに上掛けを軽く掛けただけのお姿で、欠伸をしながらゆっくりと出て来られた。

 少し気怠そうに、髪をかきあげる姿は、また生々しく、艶っぽく色めいてみえる。

 目の毒だ。朝から刺激が強すぎだろ。この人は。


「まぁま、殿下、昨夜は遅くまで徹夜でも? ご無理はなりませぬよ?」


「宣の奴に言ってください。此処で朝飯食ってる暇があるなら、仕事しろ」と。


 そう言って、光様は支宣様を睨んだ。


 ヒッ


 小さな柴犬が出来上がたのは言うまでもない。


「まぁま、とりかく皆揃ったと言うことで、朝餉にしましょうかね」


 今日の朝食は、魚の干物を軽く炙った物と大根の酢漬、汁と粥だった。


 と言うか、此処に来て一度も「白米」所謂、お粥じゃなく「ごはん」を食べたことがないんだけど。

 

 この世界って「米」があまり穫れないの? それとも米は高価で「粥」にして量を増やしている?

 でも庶民じゃなくて、ここにいる御方達って皇弟君と、高級官僚よねぇ。最高権力者達のはずだ。


 朝はまあ粥でも良いとして、武官である中将様や、軍の皆様も「粥」ばかりでは……


 気になったので聞いてみた。


「あの、ちょっと質問と言うか、失礼かもなんですが……宜しいですか?」

『どうしたの?』

「なんだ? 急に改まって? ここでは思ったことは身分関係なく正直に申せ。と最初に伝えたではないか?」


「そうですね。では、遠慮なく。あのぅ。この国では米の収穫量は国民全体に行き渡る程ない? いや、少ない? 米は高価なのでしょうか?」


『?』


 皆が、? と言う顔をした。


「米は高価であることには違いないが、必要量に足りていないと言うこともない。飢饉などが起きればそれは別だが」


 支宣様が真っ先に答えてくれた。この手の話は文官である支宣様が一番、具体的な貯蔵量なども詳しい。


「では、普段の生活に足りてないってことはないのですね?」


「うん。そうだねぇ。ただ、やはり貧しい者達は米に粟などを混ぜたりはしているようではあるが、出来るだけそのようなことをせずとも、安価で提供できるよう日々努力はしているつもりだが」


「なるほど。では何故、皆様「粥」を食しておいでなのですか?」


『え?』


 鳩が豆鉄砲を食らう。とはこのことをきっと言うのだろう。


 皆がポカンとした顔をした。中にはそれこそ豆を入れたら? と言うぐらい口をポカンと開けている髭親父も。


「粥」だから、おにぎりも作れないし、弁当も難しいのだ。

 米を「粥」ではなく、水加減をもっと減らし「ご飯」にすれば良いのでは? と私は思った。


 そうすれば、外出する際や、軍の遠征、旅行など「握り飯」の弁当を持って行けるのに。──




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