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はじまりの刻 ~Shall we sweet?~  作者: 蒼良美月
第一章 出会い編
14/30

14.鶴の一声

 ──ここ数日間、引っ越し作業におわれ、今が朝なのか、夕なのかが分からなくなる時間に寝ていた。



「で、出来た」


「う、うん」


『やったーー寝れる!!』


 光様の半ば無理矢理とも言える、引っ越し作業も、やっと今日で終わった。

 この短期間で、これだけの建物とこれだけの設備を揃えてしまうところは、もはや驚きと言うより、この御方の立場を改めて知ることになった。


 で、何故こうなったかと言うと。


 振り出しに戻ったと二人で頭を抱えていたら、一言。



「なら新たに造れば良いだけだろ。「政務秘書官」でも「政務秘書官、兼皇弟料理番」とかにすれば良い話だろ。何をさっきからゴチャゴチャと」


 ちょっとムッっとした表情をした光様が、ソファから気怠そうに、起き上がって言った。


 ──そんな後出しジャンケン出来るなら、最初から言って下さいよ……




 で、鶴の一声で新たに出来たこの立派な造りの建物を「大公所」と名付けた。

 そしてなんとご自分も引っ越して来たのだった。


 皇弟君と言う御立場上、御所内にある一角に寝所を構えていらっしゃったのだが、「折角新しい処が出来たのだし!」と言って勝手に引っ越して来たのだった。


 当然、君にお仕えする者達は大反対で、一騒動あったと風の噂に聞いた……

 ただ、そこは権力の差、いや、産まれの差とも言うべきか、現状で天子様に次ぐ身分の方の言うことに正面から否と唱えれる者など、この国内には天子様以外には居なかった。

 まぁ、反対されたからと言って素直に聞くような御方ではないとは思うけど。


 そして、この御方に天子様は甘いのだ。寵愛を超えた溺愛とも言える。

 ブラコンか! と思うぐらい天子様はこの御仁に愛を注いでいた。


 皇子殿下が東宮の座に正式に就かれたらまた変わるのだろうか?

 それにはまだ暫くの時間を要することになりそうだ。


「あ、そうそう凛花に渡す物があったんだ、支宣」

 武官の実際のトップ(左膳様を除いて)が中将様なら、文官のトップがこの支宣言う男だ。

 なんと、この方、この中将様の弟だそうだ。何ともまぁ……


 長女は皇后陛下、長男は国の軍部の実権者、次男は頭脳の中枢。これらを束ねる父上様太政大臣様とは、如何に権力の持ち主かと思うとちょっとこの国の将来が不安視された。

 先の藤原氏の栄華もいつかは盛衰した。ただ、その時代は長くそして帝を凌ぐ程の強欲さ故? とも……


 太政大臣宰相様の家は代々、時の帝、皇族を支えている由緒正しいお家柄。

 その中でも特に、現太政大臣宰相様は聡明かつ、安分守己を徹底されている御方と聞いた。


 まぁ私のようなド平民にはあまり関係のない話だろう。




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