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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
最終章 継承編

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最終話.はじまりの刻(輪廻)

今話で完結となります。

 親王誕生より二年後の春、春の日差しが柔らかに差し込む中、とても元気な内親王が今誕生した。


「おぎゃああーーおぎゃああああ。おぎゃあああああ」



「今上! 内親王様で御座います! 珠のように可愛い皇后様にそっくりな女児で御座いますよ」

 第二子誕生に、兄となった蒼綬を抱えたまま、彼が足早に入って来た。


「凛花。よく頑張ったな。有難う。蒼、お前の妹だぞ?」

 そう言って、兄になった蒼を産まれたばかりの姫の横に寝させた。


 その後、彼と話し合い名を「花音(かのん)」と命名した。

 私の名の一文字を彼が授けたのだった。


 春の訪れと共に私達の下にやって来てくれた可愛い娘へと。二人で考えてつけた名前であった。

 実は私が大好きな有名な曲の名を連想したのもあったことは、皆には秘密にしてある。



「花音ちゃん、()()()ですよ~~」

「花音ちゃん、()()()()ですよ~~」


「やめぬか! お主ら! 花音が紛らわしくて困るわ! 帰れ! 宣つまみ出せこいつら!」


「こいつらって……上皇」

「左大臣家当主……」

 元相方同士が小さくなる。


「あ? 当今だ! 文句あるか! 帰れ!!」


「蒼ちゃんは仕方ないとしても、せめて花音ちゃんぐらいは? な? 光よ?」

 それでも引き下がらない上皇様の形振り構わない御姿に流石に皆が同情の目を向ける。


「せめてとか要らぬから。()()()! 宣!」


「今上、内親王殿下が怖がりますゆえ……」

 支宣が今上を諌めた。


「あーあ。あーあーーっ」

 その時だった。光潤様が抱いていた花音が支宣様に自ら短い両手を出し、抱っこを求めたのだ。


「は? 何で此奴に?」


「あーー。あーーああ」

 再びやはり支宣様に手を伸ばす。

 仕方なく光潤様が支宣様に花音を渡した。


「あーぃ。あああああぃ」

 何と花音が嬉しそうに笑い、支宣様の髪を掴んだのだ。


「か、可愛い……」

 支宣様の顔がぱぁっと明るくなった。


「おい! 離せ! 離れろ! 花音を返さぬか!」

「光様!」


 ──それからと言うもの花音は何故か支宣様に特別懐き、どれだけ泣いていても支宣様が抱き上げると、不思議にピタリと泣き止んだのだった。


 その度に、光潤様は支宣様を怒っていたが、寧ろ花音が支宣様を追いかけていたのだった。



「花音様、痛いですって……」

「あぃーー」

 支宣は、自分を探し追いかけてくる、小さなぷにぷにした生き物に目を細めながら、優しく頭を撫でてやった。


 ──その後、何と花音は父、光潤の大反対を押し切り、十三の若さで支宣のところに嫁いだのだった。


 最初はずっと反対していたが、愛妻の若い頃に瓜二つの愛娘に「父上なんか大嫌い! もう二度と口を聞かない!」と絶縁宣言され、仕方なく折れたのだった。


 だが、彼女の嫁入り衣装から道具全て彼が一からデザインし持たせた。

 ついでにと言って、長年の弟子であり()であった支宣の衣装も彼が自らデザインした。


 花音が嫁入りして三日間は部屋に籠り一人泣いていたことは、彼以外の皆は知っていた。




 ──「義父上様、義母上様、彼女を生涯大切にすると約束します」


「お前に、父上なぞ呼ばれたくはないわ。さっさと行かぬか阿保」


 式当日まで、生涯敬愛して止まない兄であり、父に口癖の「阿保」と呼ばれたことに支宣は涙が止まらなかった。


 何と支宣はその後、愛する()()とずっと一緒に居たい願いと、年の離れた嫁の行く末を心配し、あれだけ頑なに拒否していた皇族に名乗りをあげ、大公の座につき、皇居内の一角に屋敷を構えたのだった。




「なあ? これ嫁入りした意味があるのか?」


『ここが一番だから?』

「もう、それ良いわ……」


 ──二人は両親に負けず劣らず、仲睦まじい夫婦になった。





 ◇





 第二子内親王花音が産まれてから時同じくして、何と惟光様は初恋の人結と、とうとう結ばれ二人は結婚したのだ。

 その後二人の間には元気な男の子が産まれた。


 皇太子蒼綬が元服し「蒼儁(そうしゅん)」と名乗り、後に帝の座についてからも、父惟光と同じように蒼儁の筆頭の護衛「左大臣宰相」を生涯務めた。

 惟光と結の子である。武芸の腕前は言わずもがな。春国建国以来最強の護衛となったのはまた別のお話である。


 花音の誕生から五年後、第三子親王「麟惇(りんしゅん)」が誕生した。


 その名の通り英才に育った彼は、兄蒼儁に寄り添い、助け、時には叱咤し、年の少し離れた兄を支え続けたのであった。

 が、一つだけ父から継いだ大きなものが彼にはあったのだ。



「父上様……また麟が湯殿の岩壊しました……」


 兄の蒼綬が、呆れ顔で父のところにやってきた。


「は? この前直したばかりだろ? 麟にやるなって言うたのか?」

 かなり背も伸びてきた愛息に優しく問う。


「言いましたよ……なのに麟の奴また……」

 少し困った顔をした兄に再度聞く。


「で、どのくらいだ?」


「半壊し湯が溢れています……」

 蒼綬は小さな声で言う。



「はあ? 何やっているのだ! あやつは! 行くぞ、蒼!」




 ──そこには露天風呂の岩が湯船に崩れ落ち湯が溢れ、流れ出ている中で、小さな可愛らしい男の子が裸のまま立っていた。


「えへへ。こわれちゃた。ちちうえ」


 天使のような笑顔を見せ、恥ずかしそうに笑う我が子を見て光潤は、呆れていた。


「蒼、許す」


 兄、蒼綬に短く言う。



「えへへじゃないわ! 危ないからやるなって前にも言ったろ! 麟!」


 兄の雷が落ちた瞬間だった。


 父光潤は、末子の麟には人の道に外れたことをしない限り怒ることはしなかった。


 何故なら彼は将来、兄の臣下となる為、自分の言葉より兄に従うように育てたかった為である。


 そんな麟が一番、父から継いだのは気の多さ、いや気の凝縮率の高さだった。

 ただ、今は幼くその力を制御出来ていなかったのだ。


 兄蒼綬は出来ないことがあればコツコツ諦めず、忍耐強く頑張る真面目な秀才型。面倒見も良く人当たりも良い好青年であった。


 それに対し、弟の麟惇は天才タイプであった。

 兄が光潤に見た目もそっくりに対し、麟惇は両親の良い所を半々に受け継いだ、可愛らしい男の子だったが、やることは常にえげつなかった。


 齢五歳にして、石造りの大きな露天風呂を半壊させたのだ。


 実はこの麟惇、クリクリの大きな目にぷにぷにの餅のような丸い頬のとても愛らしい容姿であったが、二歳中頃に父が兄に「気」の使い方を教授していた際、遠くで見ていた彼は、縁台を吹っ飛ばし、目の前の洗濯物の下敷きになると言うとんでもないことをやっていたのだ。



 ──ドンッ。ガチャガチャ。ガリガリッ。


「何事!」

「なんぞだ?!」



「り、麟?」

「麟惇!!」



「ちちぃ。こうれしゅか?」


 まだ言葉もはっきり話せない目の前の小さき者が、にっこり笑う。


 その白い大福のような頬に泥をつけて、頭から白い布が覆いかぶさったまま、嬉しそうに笑っていた。


 俺は目眩がしそうになった……


「こうれしゅかじゃないわ!! 怪我ないか?」

 光潤は急いで、愛息を抱き抱えた。



 その後も、麟は可愛らしい容姿とは似つかわしくないぐらいの風雲児と揶揄された。

 紫の悪魔再来と将来諸外国に恐れられる話しは、また別のお話。





 ◇





 光潤は長男、蒼儁が十五で元服するまでずっと手元に置き珠のように可愛がった後、次期皇帝としての徹底した帝王学を厳しく教えた。


 三年間、軍部の一番下の階級である平取から学ばせる為、自宅である御所を出し軍の寮に入れ、盆と正月以外に自宅に帰ることを禁じた。


 周りの反対の声を押し切り、開墾や災害時にも現場の最前線に向かわすことを厭わなかった。


 その後、次男、麟惇が元服し兄と同じ三年の修行期間を終えた時に、長男蒼儁に帝位を譲った。








 ◇






 ──仄かに薫る伽羅の中、部屋の主に請われ襖を開ける。

 遠くに見える山々は白く靄で覆われたが如く滲んで見える。


 庭先から見える大きな桜の木は薄紅色に染まり、風の調べに儚く嘆き花吹雪と変わる。

 桜が泣いていた──


 穏やかな温かい春の陽射しが、次第に金色に煌き迎えに来る。


 その中で、最愛の妻と愛する子達三人、彼が永遠に焦がれた「家族」だけの愛にに包まれていた。



 ──「光潤!」


「蒼、母を頼んだぞ。麟よ、兄を支えてやるのだぞ? 花音、宣と仲良くな?」


 最愛の彼が、青白く細くなった腕に子等を抱き寄せた。灰紫の瞳から涙が流れる。


「父様! ごめんなさい我儘な娘で。でも絶対父様と母様以上に幸せにずっと暮らすと約束します!」

「父上! 母様と麟と花音、そして春国のことは、私がこの命に換えても必ず護ってみせます!」

「父上!! まだまだ父上には教えて戴くことが多御座います! 逝かないでください!」


 泣きながら父に(しが)み付く子らを私は離し彼らを抱きしめた。


「凛花。有難う。こんなに宝に恵まれて俺は幸せだった。少しばかり先に旅に行くだけだ。案ずるな。子らを頼んだぞ?」


「貴方! 私こそ貴方に出逢えて良かった! こんなにも楽しい刻を貴方と過ごせて……あなた、光潤。愛している。ずっとずっと貴方を」



 最期はまるで、鳳凰が(つがい)で楽しそうに舞っているかの如く穏やかな旅立ちであった。


 彼の遺言通り、彼の柩には生花ではなく、彼が没する最期の刻まで描き続けた大量の最愛の妻の画を抱き天子(かみ)となった。


 ──「凛花、お前のお陰で愛することができた。今度は彼方(あちら)で逢おう。輪廻(りんね)で」──


 それが彼が残した最期の言葉だった。



 凛花もまた、彼の崩御後まるで後を追うかのように、その生涯を掛けて愛した永遠の伴侶が唯一描いた、夫婦揃った画を胸に抱いて召された。


 その姿は画の女性そっくりで、まさに天女の微笑みだった。







 ◇






 ──「光月(こうげつ)君、絵画大賞展、二年連続大賞受賞おめでとうございます! 感想を一言お願いします」


「光月さん、現在医学部の学生と言うことですが、将来は医者を? それともお父様の跡を継がれ画家となられるのですか?」

「光月君、今回の受賞をお父様は何と?」




 ◇




鈴音(すずね)何してるの? 講義遅れるよ? 行くよ~~」


 赤門の前の人だかりを私が見ていたら、親友の結以(ゆい)に声をかけられた。



「あれは??」


「え? 鈴音、光月様知らないの? 嘘でしょ? うちの大学の有名人よ? 医学部の天才。文武両道の上おまけに父親は日本画の大家、母親は大病院の娘。本人はこの前の有名な絵画展覧会で大賞を取ったって言うので、今大騒ぎの時の人よ? 学校にまでマスコミが追いかけてくるなんて」


「そうなんだ。そんな有名人だったのね……まあ私には関係ないわね」


 何となく懐かしい気がして、足を止めてしまったが、そんなキラキラした有名人、私には縁がないと思い、立ち去ろうとしていた。


「まぁあのルックスだしねえ、そりゃファンが増えるわよね? 勉強ばかりしていた鈴音は知らないのも当然か?」






 ──「見ぃ〜つけた! 僕の宝物。ちゃんと()()()希望の大学に受かったようだね」




「光月くん! 何処に? 光月くん! まだインタビューが終わって……光月くん」

「光月君、っちょっと何処に? 待って!」



「退けろ邪魔だ」


 その低い声により先程までの人集りがすっと引いた。



 色白で長身の彼は、大勢の大人達に背を向け一直線に歩いて行く。

 左耳にはシルバーのピアスが光っていた。


 春の陽射しを浴び、彼の少し青みががった瞳が綺麗な濃紫色に煌めいていた。



鈴音(りんね)やっと会えた。僕の大切な宝物」

 そう言って彼はいきなり私の目の前に現れた。

 そして手を差し出す。

 彼の小指には綺麗なパープルサファイヤの石が光っていた。


 私はその吸い込まれるような濃い紫色の瞳に、何故か言われるがまま自分の手を重ねていたのだった。



 ちょうど()が亡くなって今日で十八年目であった。




「行くよ? 約束の地へ」


 そう言って彼が私の手を引き寄せる。


「え? 何処に行くの? 光月君?」





 ◇





「うわぁ、こんな所があっただなんて! 知らなかったわ!」


 そこは春の陽射しを目一杯受け、まるで白い霧のように光輝いていた。



 近づけば、頭上を薄紅色の雲が一面に覆う。

 まるで桜の精霊が舞い降りて来そうなぐらい幻想的な世界。


 河の両岸から大きな桜の木が幾重にも連なり川面に溢れそうなぐらい咲き誇っている。


 薄紅色の小さき花びらは風が吹くと桜吹雪となり川面を埋め尽くした。

 枝の隙間から僅かにのぞく蒼空が薄紫に染まっている。



「綺麗……」


「あ、じっとして?」


 彼が軽く髪に触れた。


「ついていた」


 そう言って優しく微笑む彼を見て、私は何故だか分からないが瞳から涙が溢れ、頬にとめどなく水滴が伝っていた。






 ──彷徨い続けた魂の片割れが一つになりたくて。

 愛しているそんな言葉では言い表せれない。

 魂が震えるぐらい強く繋がりたいと願い、片割れの半身を求めた。


 それは輪廻のはじまりの(とき)──









(完)




「長い間お付き合い頂き有難う御座いました。今話で本編完結となります。機会があれば幕間的またいつかお会いできればと思います」

慈悲深い方是非とも広告下にある✩✩✩✩✩から作品へ評価を頂けると、泣いて喜びます。宜しくお願いします。また、その後二人や細かい幕間話が気になると少しでも思われたらブックマークも是非お願いします。


活動報告に継承者のプロフィールを載せています。







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