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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
最終章 継承編

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13.ただの役職

 楽しいことは早く感じると言うのはあながち間違いではない。


 長く感じた休みも、あっと言う間に終わってしまい、皆より一日長かった殿下の休みも今日から通常運転に戻る。

 昨日は軽く挨拶周りだけの為、殿下は出仕していない。本日から御出勤となるのだが……


「殿下! 起きて下さい。今日からお仕事ですよ!」

「やだ。行かない」


 子供か! 起きろ!

 相変わらず、朝は苦手なご様子で。


「駄目ですって! 今日は新年の挨拶が御座います!」


 即位の礼こそ終えていないが、年内で今上帝が退位され、既に「奉告の儀」は終了している。


 本来なら直ぐに翌日に即位の礼を行うのが慣例であったが、正月に重なることを配慮し三ヶ日を終え末広がりの八日を即位の儀としただけで、事実上既に帝の位置にお在りになる。


 あ! 殿下って呼んだら駄目なのかしら?

 天皇陛下ではないわよねえ?  今上としか誰も呼んでなかったから分からない……

 聞いて見よう!


 あ、そんなこと考えている場合じゃないわ!


「起きて下さい!」

「んーー。凛花~~寒いってぇ此方へ」


「行きません! はい! 起きて!」



 朝の着替えを手伝いながら聞いてみる。


「ねぇ? ところで帝って呼ぶの? 今上? 何て呼ぶのが良いのかしら?」

「光潤」

 即答された。


「いや、そうじゃなくて……流石にねえ? なら惟光様や支宣様は何て呼ぶように?」

「さぁ? 別に何でも良かろう?」

 うん、聞いた人が間違いでしたね。良いです。為時様に聞こう!


「あ、お前は光潤な?」

「無理です!」


「着替え持って行きます? 一旦お戻りに?」

「うーーん……戻ると言いたいところではあるが……厳しいかもなあ」

「分かりました。では後程お持ちします」

「有難う。では行って参る」



 仕事納め同様、本日は仕事始めで新年の挨拶を臣下に行う大事な日だ。

 皆の礼服と違い、帝の正装着は後ろの裾が長いのだ。

 流石にそれで一日中は、ちょっと可哀想な気がしてたずねた。




 ◇




 ──カチャリ


「お帰りなさいませ。早かったですねぇ?」

「ん? こんなものだろう?」


「先に御着替えになられますか?」

「ああ」


 そう言って奥の間に入られた。

 って後数日で天子様に本当になられるのよねえ……

 着替えを終え、烏帽子の中に結っていた髪を解き、黄楊櫛で御髪を梳かしながら改めて思う。


 緊張とかないのかしら? この御方に?


 って! その前に結婚の儀!!


「殿下……あ! 殿下じゃないわ! 今上? 何が良いのかしら?」

「阿呆か? 俺は俺で、凛花は凛花だろ? あんなものは単なる役職に過ぎん」


 あんなもの……

 最もな意見ではあるが。


「光潤で良いと言ったろ?」

「それは流石に……」

 私は目を伏せた。


「産まれてから呼ぶこともない名を付ける必要は、その行為に意味があると思うか?」


 彼は私の手を取り、隣に座らせる。


「せめて愛した女の前ぐらい、人で在りたいと願うは俺の我儘か?」


 そう言った彼が重ねた手の指先が僅かに震えていた。

 私は、咄嗟に彼の顔を見た。


 空いてた片方の手で彼が自分の顔を覆っている。

 その美しい白い手が小刻みに揺れる隙間からのぞく綺麗な紫の瞳に、少しずつ溜まる宝石が溢れ落ちる前に私は彼を抱きしめた。


「光潤様!」


「この世で俺が赦す唯一の女だ」

 そう言って彼は唇にそっと口づけをした。


 ただ公的な場でそれは流石に……とお願いし、光潤陛下と御呼びすることで何とか赦して貰った。



 ──トントントン


「失礼します。神官よりお預かりした書類をお持ちしました」

 支宣様の声がした。


「入れ」


 結婚の儀の案内のような物だ。

 日時や場所、当日の流れなどが神官所から届いた。


「それって俺達入れないですよねえ? 護衛は? どうしてました?」


 支宣様が真面目な顔で質問した。


「皇族意外は入れぬな。凛花の介添は貞舜が務める。貞舜ならまあ、護衛も必要なかろ」


「なるほど……」

 支宣様が短く答えた。


「名乗りを上げるなら入れてやるぞ?」

「ちょ、何を」

 支宣様が少し慌てた顔をした。

「あ、凛花には先日話してある。何かの際は頼んだぞ?」


 陛下が真面目な顔で支宣様を見た。


「お断りします。何かは御座いませんゆえ」

 支宣様がはっきりした口調で答えた。

「まあ周りを惟光らが固めるし、影は入るし、貞舜もおるし心配ない」


 支宣様が心配した理由は、神殿に入る際、殿下は勿論だが母様も全員刀類は持ち込めないからだ。


 流石に神殿内で事を起こすような者は居ないだろう。


 即位の儀は神官が大内裏にお越しになり、臣下の前で行うので警備の心配はないのだ。


 一応念の為に極秘に逃走経路の確認をこの後行った。


「心配ないぞ? 流石に宮の神殿内にネズミに入られるほど、まだ俺も朦朧してないわ」

 そう言って陛下が笑った。


「今上、此方が祝賀会の出席者の名簿で御座います」


 あれ? 今普通に今上って言った?

 やっぱり今上なんだ?

 そして普通に何ごともなかったように打ち合わせしてるし!


 皆さんそんな感じなの?



 ──トントントン


「惟光です」

「どうぞ」


「今上、当日の護衛の段取りの確認に参りました」

「ああ」


 え? 皆さんそんな感じ?

 凄くない? 


「ん? 凛花?」

「いや……何でも御座いません」


「あーー。な? ただの役職だろ?」

 そう言って陛下が笑った。


「何のことで御座いますか?」

 惟光様が陛下にたずねた。


「いや? たいしたことではない」

 そう言って陛下が私を見て少しまた笑った。


「皇后様? 何か気分でも?」

 支宣様がたずねてきた。


 いやいやちょっと待て待て。

 まだ皇后じゃないし?


「いや? まだ? 違いますし?」


「同じでしょう?」

「あと二日なので宜しいのでは? 周りも混乱しますし」


 しれっと犬兄弟に言われたので、陛下に助けを求めて見たが笑っていた。


「延期はしないってお前が言ったのだからな?」

 そう言って陛下が私の頭を軽く撫でた。




 ついに、カウントダウンがはじまってしまった……


 緊張からか軽く目眩がする感じがして、今日は早めに退出した。


 宮に戻り、紀恵さんに後をお願いして横になった。


 私だけか……順応出来てないのって。

 少し情けない気もしたが、陛下の言うようにやはり役職が変わるだけ! ぐらいに考えないとね?


 あ、光潤様って呼ばないといけなかった!


 うーん……

 頑張ろう色々と。




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