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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第八章 践祚編

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7.ネズミ退治(1)

 無事旅行も行くことが出来て、私達は、相変わらず忙しい毎日を送っていた。気づけば、少しづつ夏の暑い日々が和らいでいた。




 ───ドンドンドンドン

「緊急事態で御座います!!!」


「何事?」


 私は思わず驚いて、殿下と顔を見合わせた。


「入れ」


「失礼します! 殿下! 大変で御座います!! 緊急事態で御座います!!!」

 その声は裕進様で、朝の修練からここまで走って来たのだろう、修練着のままの姿だった。


「何だ、裕進よ? 朝っぱらから賑やかな奴だなあ?」

 その慌てように、殿下も少し怪訝な顔を浮かべる。


「銀山が! 銀山に!!」

「ハァ、ハァ」

「何だ? 今度は、銀脈でも出てきたのか??」

 殿下もあまりにもな裕進様の慌てように、少し呆れていた。


「落ち着いて話せ。裕進」


「西の銀山より侵入者を発見しました!! 既に砦で捕らえておりますが!!」


「侵入者?? 何処からのだ?」


 殿下の表情が一変した。

 ちょうどその時、惟光様と支宣様の声がした。と同時に彼らが入って来た。

「殿下入ります」

「報告に参りました」



「銀山か? で、何処のだ?」

 殿下が惟光様にたずねた。


「殿下の白玉山です。西国からの違法侵入者、七歳~十七までの男女合わせて十二名。男七、女五。西砦牢にて現在捕縛中です」


「ほう、余の山に()()()が入ったと?」




 殿下の顔が先程とは打って変わり、笑っている。

 但しそれは凍りつくような冷たい笑いだった。


「しかし、また西か? あいつら何考えておるんだ? しかも小童ばかり寄越して」

 明らかに不快な顔をされた。


「皇后崩御、親王病死を受け、今上もお下がりになったことを聞きつけてかと……」

 支宣様が冷静に答えた。

「なるほどな。六年前は、猛将為時殿を恐れておったようだからのぅ」

「すいません……」

 惟光様が殿下に小声で謝る。


 元服前の若干十三の小童が禁軍を率いて先導し、街を一瞬にして瓦礫の山にしたなんて言える訳もなく、直ぐに箝口令が敷かれ当時のことを知る者はもう父上とその当時のお仲間数名ぐらいしかいない。


 その時も、先帝がお隠れあそばした後だった。和平条約の中での狂気に腰を抜かした今上に代わり、お立ちになったのが()()()



「では、ネズミを丁重にお返ししに行くかのう、挨拶兼ねて」


「!!」

「殿下!!」


 え? 戦に??


 一瞬部屋が、異様な空気に包まれた。


「案ずるな、ちゃんとネズミを返してやるだけだ」

 そう言って、殿下が笑った。


「惟光、何人出せる?」

「騎馬三百、歩兵で三百なら二時間かかりませぬ。残りは途中で拾います!」


「宣、為時と、左膳呼べ、あと結を。後はお前に任せたぞ!!」

「朱雀門は?」

「念のため閉門しろ!」

「御意」



 え?

 戦になるの?? 入口の大門閉めるって……




「お待たせしました」

 一番に結が部屋の前に参上した。


「宣。あとの指示を」

「結、分かっておるな? 宣の指示に従え! 急げ!」

「承知しました」


 私は支宣様の指示で一旦、結と宮に戻ることになった。

 その道中、私は支宣様にたずねた。


「西国と戦に?」


「……殿下は()()は選ばないと思いますけどね」

「では何故?」

「一応念のためです。絶対にならないと言う保証は御座いませんから」


「御方様? 大丈夫ですか?」

 結が私の手を取り、心配そうな顔をした。


 そうよね……平和な日本で育ったから戦争だなんて……何処か他所の世界の話しって思っていた。

 実際には現状でもずっと戦争を繰り返している国があったと言うのに。

 私が甘いだけなんだわ。しっかりしないと……


「結。御方様はじめ宮の者達を頼むぞ。私も出来るだけ其方に顔をだすが、何かあれば直ぐ私に直接言うように」

「承知しました。此処はお任せ下さい。支宣様は御自分の仕事にお戻りを」

「申し訳ない。では後程」

 支宣様は走って、殿下の執務室に戻って行った。






 ◇



「為時、念のため北の民に連絡を頼む。この時期ならまだ居るだろう」

「御意。物資の応援も念のためお願いしておきます」


 為時は急ぎ足で部屋を去った。


「宣、留守を任せたぞ」


「殿下!」

 主のその声に、俺は引き止めることは出来ないのは分かっていて、無意識のうちに彼の袖を掴んでいた。


「心配するな。俺だって無駄な血を流そうとは思ってない。ただ、このまま放置していて良いとは思えぬ。ここらで釘を刺しとかねばな。安眠できぬからのう」


 そう言った殿下は、普段と同じ柔らかな表情をほんの一瞬だけ見せたが、直ぐにその顔には温度を全く感じさせない冷血な妖鬼と変幻していた。


「惟光、着替えを」


「御意!」


「惟光、禁軍の旗掲げよ!!」


「裕進、騎馬、歩兵共に長槍持たせろ! 弓隊出せ! 西砦全員武装させて待機命令。皇都全域に戒厳令発布せよ!」


「御意」


「宣! 西国に早馬出せ! ()()()をお返しに行くから迎えに来いとな」



 それから二時間足らずで騎馬四百、歩兵三百、総勢七百の部隊を用意し、大門を風の如く駆けて行った。


 途中の領地で合流させて行き、西国と境界線の西の砦に着く頃には総勢一千名を超える大軍隊となっていた。

 小童十数名の侵入者を祖国に送り届ける為にしては異常な数を用意していた。


 また、皇都には残りの兵が警備の為どんどん集結していた。

 市井には戒厳令がしかれ、外宮の入口にある四門、東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武全てが一斉に閉ざされた。


 内宮との門である「朱雀門」を閉めることによって、内宮は完全に神門の中で護られることになる。建国以来この国が外敵からの襲撃を受けることが少ない理由の一つはその徹底的な「天子様のおわすところ」の強固な守りと立地にあった。

 それでも尚、御代替りに伴い朱雀門の内側にもう一つ「鳳凰門」を建設し、より強固な護りにする計画だ。絶対的天子様の存在を国全体で命懸けで護ると言うのを内外に示す為に建設される。


 東と南は海に囲まれており南は小さな島々しかなく、彼らは豊富な鉱山資源があり、人口比に対し財源が余る程豊かだったのと、その土地の性格上や宗教上、多民族との交わりをあまり好んでいなかった。東の海は広く、当時の船舶技術では辿り着くには厳しかった。


 また北は遊牧民族の国で、我が国の皇家から姫が何人も過去にも降家した経緯もあり、友好関係が続いている。彼らとは互いの利害が一致していたからだ。


 彼らは夏場しか国内に留まらないので、旅に出る間の自国の警備と物資の調達を我が国に、そして我が国は、移動民族である彼らに、諸外国への輸出入の運搬をお願いしている。

 互いにウィンウィンで良好な関係が長年続いていた。


 唯一の懸念材料と言えば、地続きである西国だった。境界線の砦には両国の門番が常に見張ってはいるのだが、その門以外から違法に入る、密入国者に頭を悩ませていた。

 我が国の豊富な資源と安定した職業雇用事情などによるものだろう。


 ここ数年で密入国を試みる者が増え続けていること(殆ど防いではいるが)に対し殿下は以前から危惧していた。

 その一番の原因が西国の国王が、今上に劣らぬ……な御方だと聞いた。




「殿下!! お待ちしておりました。此方へ」


「して? ネズミは?」


「此方に!」


 縄で手足を縛られて引かれている者の中には、まだあどけなさが残る幼い子も数名混ざっていた。



「弓用意しろ!」


 殿下の怒号に、兵士全員がギョッとした。


 何故なら馬の足音があまりなく、自軍の馬も落ち着いている為、西国からは多数が近づいて来ていないことは明白だったからだ。

 それに既に自軍の歩兵は、砦内の周囲を囲んでいた。


 にも関わらず、まるで宣戦布告をするかのように? 弓攻撃の準備を?? 本当に戦を仕掛けるのか?

 と、皆に緊張が走る。


 総勢千名以上か固唾を飲んで西国からの使者を待っていた──













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