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にくゑ-本編-  作者: 匿名希望
第六章 清音
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間章 あゆみ

 橋を渡って必死に追いかけた。夜の道は怖かったけれど、清音のそばに行きたい一心で、足は止まらなかった。

 胸はどきどきして、息も苦しい。けど、それも全部、清音に近づける証のようで嬉しかった。


 追いついた時、美穂と健太は地にのたうち、血を吐きながら苦しんでいた。


 二人の身体のあちこちが、不意に裂け、血と肉が、噴水のように吹き上がり清音に降りかかる。


 月光に照らされたその姿は、おそろしいほど惨かった。

 けれど、あゆみの目はそこに向かなかった。


 清音――。

 赤黒い血に頬を濡らしながらも、祈りの言葉を口にするその横顔。

 月光に浮かんだ睫毛の影まで、美しくて仕方がなかった。


(やっぱり、わたしは清音のこと、だいすきなんや)


 胸の奥が甘く震えて、涙が滲んだ。

 美穂と健太のことより、清音の姿が尊く思えた。


「清音……やっぱり、きれい……」


 小さく呟く。唇の端が自然と緩んだ。

 美穂と健太がこうなったのは、きっと自分が清音に知らせに走ったからだ。


 あの二人の逃亡を止める役目を、自分が果たしたのだ。


 そう思うと、胸がいっぱいになり、誇らしくすらあった。


(わたし、清音のために役に立ったんよ。えらい子やろ……?)


 血の匂いも、呻き声も、夜風に消えていく。

 残ったのは、祈りを紡ぐ清音の美しい姿だけだった。


◆◆◆

あとがき。


清音と言いつつ、美穂と健太の物語がメインの章でした。

間章「美穂」はかなりの長尺でしたが、一気に読んで頂きたくこの様な形に。

美穂と健太のお話はこれでお終い。

次章、「家族」主軸は悲劇翌日の佐藤家に移ります。


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