未来の約束〜ずっと、傍にいてほしいんです〜
アリシア編、完結です。
それからというもの、アリシアはリアムのことを意識しすぎてしまうようになった。
特訓のたびに、リアムは当然のようにアリシアにキスをねだる。しかも、以前はご褒美として特訓がうまくいった時に一度だけだったのが、いつの間にか日に何度もすることになっている。
「先輩、魔力を安定させるために、今日もお願いします♪」
「毎回しなくてもいいんじゃない?」
「えー、それは困ります。だって、先輩のキスがないと、僕、暴発しちゃいます」
そう言って、リアムはアリシアの腰を引き寄せる。
「ちょ、ちょっと……!」
「じっとしててくださいね」
抗う間もなく、柔らかな唇が重なる。
瞬間、じわりとアリシアの体が熱を帯びる。魔力が流れ込み、脳が痺れるような快感が走る。
「……んっ……」
抑えようとしても、甘い吐息が漏れてしまう。
リアムの指がそっと彼女の背中を撫でるたびに、身体が勝手に反応してしまう。
「やっぱり、先輩といると落ち着きますね」
「……落ち着いてないじゃない……」
「そうですね。でも、先輩もだいぶ蕩けてますよ?」
「そ、そんなこと――」
否定しかけて、アリシアは言葉を詰まらせた。
リアムの瞳が、愉しそうに見つめている。
確かに、特訓という名目で何度もキスをされるうちに、アリシアの体はリアムとのキスで甘い痺れに包まれるようになっていた。
「先輩、どうしました?」
「……っ!」
リアムの手が頬に触れるだけで、心臓が跳ねる。抱き寄せられるたびに、胸が苦しくなる。
その事実に気づいた途端、どうしようもなく恥ずかしくなった。
「な、なんでもない!」
誤魔化しながら、リアムを突き放す。でも、彼は相変わらず優雅に微笑んでいる。
「本当に?」
「本当に!」
「ふーん……。じゃあ、今日の特訓では、ご褒美なしにしておいた方がいいですか?」
「……それは……」
なぜか言葉が詰まる。
「え、もしかして、先輩……僕とのキス、嫌じゃなくなりました?」
「ち、ちがっ――」
「それとも、好きになっちゃいました?」
「~~~~っ!!」
からかうように言うリアムの顔が、妙に近い。
恥ずかしくてたまらないのに、思わず目を閉じた。
その瞬間――また、優しいキスが落ちてきた。
「……んっ……」
甘くて、蕩ける感覚。
ーー私はもう、リアムの魔力に、彼自身に、抗えないのかもしれない。
――こんな私が、彼と離れられるわけがない。
「……ねぇ、リアム」
「なんですか?」
「あなたは、卒業後はどうするの?」
「どう、って?」
「学園を卒業したら、エルフの国に帰るんでしょう?」
アリシアは今年、リアムは来年、学園を卒業する。二人の特訓は、アリシアが卒業するまでの期間限定だ。
そして、他国の王族であるリアムは、ずっとこの国にいられるわけではない。
「……はい」
「そうよね」
口にすると、胸が痛んだ。
――リアムがいなくなる。
それが、思ったよりもずっと怖い。
「先輩」
「……なに?」
「僕の国に、一緒に来ませんか?」
「え?」
驚いて見上げると、リアムは真剣な瞳でアリシアを見つめていた。
「ずっと、傍にいてほしいんです」
「……リアム」
彼の手が、そっとアリシアの指を絡める。
「僕はずっと先輩が好きでした。だから、一緒に来てほしい」
胸が熱くなる。
「……ずるいわよ、こんなの」
「ずるくても、いいです」
その瞬間、リアムはそっとアリシアの頬を両手で包み込み、優しく唇を重ねた。
魔力が溶け合い、心まで蕩けそうになる。
こんなに幸せな気持ちになれるのは、きっとリアムだから。
「……いいわ、リアム。私、あなたと一緒に行く」
「本当ですか?」
「ええ。でも、一つだけ条件があるわ」
「何でも言ってください」
「あなたの国で、ご褒美をねだるのは禁止」
「えー!? それは無理です!」
「無理じゃないわ!」
リアムが拗ねたように頬を膨らませるのを見て、アリシアは思わず笑ってしまう。
「ふふ、冗談よ。……まあ、半分はね」
「ええっ、半分は本気なんですか!?」
「当然でしょ。あなた、甘えすぎなんだから」
ふくれっ面のリアムに、アリシアはそっと指を絡める。
「でも……本当に、ずっと一緒にいてくれる?」
不安を隠しきれずにそう問いかけると、リアムは驚いたように目を瞬かせ、そしてゆっくりと微笑んだ。
「もちろんです。先輩が嫌だって言っても、ずっと隣にいますから」
「……ふふっ、それなら安心ね」
繋いだ手の温もりが、心の奥までじんわりと染み込んでいく。
これから先、どんな未来が待っていても、この手を離さない。
ーーずっと、二人で一緒に。
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次回からリアム編に入ります。
次話『大丈夫、私が守ってあげる!〜運命が廻り始める時〜』