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【R15】婚約破棄されたけど、気にせずエルフの後輩と魔法特訓してたら、いつの間にか彼の最愛になっていました〜キスから始まる甘い魔法〜  作者:
extra story

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20/21

【番外編】初めての夫婦喧嘩(?)

番外編です。

アリシアとリアムは結婚してからも、相変わらず仲が良いです。

 リアムはアリシアを溺愛していた。それはフィルヴェルデの王宮の誰もが認めることであり、本人も否定するつもりはない。

 婚約時代はもちろん、正式に結婚してからはさらに拍車がかかり、隙あらばアリシアに触れ、傍にいる時間を増やそうとする毎日。朝食の席では手を重ね、散策中は腕を取り、執務中は側に置き、夜になれば当然のように抱きしめて眠る。彼にとってそれは、ごく自然な愛情表現だった。


 だが最近、そんな彼に王宮の側近たちが苦言を呈し始めた。


「殿下、あまりにも王太子妃殿下を構いすぎでは……?」

「もう少し距離を取られた方がよろしいかと」

「その、宮殿内でも、あまり堂々と愛情表現をなさるのは……」


 何を言っているのか、リアムにはさっぱり理解できなかった。

 アリシアを愛することの何が悪いのか。彼は彼女の夫であり、王太子としての務めを果たしつつ、妃を大切にすることに何の問題があるのか。


 だがその時、アリシアが最も信頼している侍女が、気まずそうにこんなことを言った。


「……最近、王太子妃殿下が少し寝不足気味でございます」


 その瞬間、リアムは凍りついた。


 寝不足?

 それはつまり――自分がアリシアに負担をかけているということなのか?


 リアムは急激に不安になった。

 アリシアが何も言わないのは、彼に気を遣っているからではないのか? もし本当は疲れているのに、無理をして付き合ってくれているのだとしたら……?


「……少し、距離感を考えるべきなのかもしれない」


 初めて、リアムはそう考えた。



   ◆



 翌朝から、リアムは意識的にアリシアとの距離を取ることにした。

 いつもなら朝食の席で当然のように重ねていた手を、そっと引っ込める。昼の散策も、今までは当たり前のように腕を組んでいたが、今日は並んで歩くだけ。話しかけられても、必要以上に甘えた口調にならないよう、あくまで淡々と答えた。


 だが――


「……なんか、今日のリアム、変じゃない?」


 アリシアが訝しげな視線を向けてきた。


「え? そ、そんなことないよ」


 リアムは慌てて取り繕う。


「いつも通りだよ、うん。何も変わらない」


 変わらないどころか、全力で我慢しているのだが、それを悟られないようにするのが難しい。

 戸惑ったようなアリシアの表情に罪悪感が募る。だが、これはアリシアのためなのだ。少しでも休めるように。少しでも負担を減らせるように。

 そう自分に言い聞かせ、リアムは必死に耐えた。



   ◆



 だが、その夜。さすがにアリシアもリアムの態度に限界だったのだろう。


「リアム」


 寝室に入るなり、彼女は真っ直ぐにリアムを見つめた。


「私を避けてる?」


 リアムは一瞬息を呑む。


「えっ……そんなことないよ」

「嘘」


 鋭い言葉に、思わずたじろぐ。


「朝も、昼も、夜も。いつもは必要以上に隣にいてくれたのに、今日はどこかよそよそしい。まるで距離を取ろうとしているみたい」


 リアムは観念した。


「……その、寝不足だって聞いたから」

「寝不足?」

「アリシアの侍女から聞いたんだ。アリシアが寝不足気味だって。だから、僕が近くにいすぎて負担をかけてるのかもしれないって思って……」


 言葉を続けるたびに、アリシアの表情が呆れ顔になっていくのがわかった。


「……リアム、それ、本気で言ってるの?」

「え、え?」

「私、あなたのせいで寝不足になったわけじゃないわよ」

「……えっ?」

「むしろ、距離を取られるほうがよっぽど気になって眠れなくなるわ」


 リアムは目を見開いた。


「えっ、でも、でも……!」

「私が疲れていたら、自分で言うわよ。あなたが勝手に判断しないで」

「でも、僕はアリシアに辛い思いをさせたくなくて……」

「だったら、距離を取るんじゃなくて、もっと甘やかして!」

「甘やかして……?」

「そうよ。あなたらしく、ちゃんと私を甘やかして!」


 お互い譲らず、睨み合うようにして沈黙する。

 だが――


(……なんだ、この状況)


 リアムはふと我に返った。

 自分たちは何を言い合っているのか?

 アリシアは「甘やかしてほしい」と言い、リアムは「甘やかしたい」と思っている。

 意見は一致してるじゃないか。


「……やっぱり距離なんて取れない!」


 リアムはそう叫ぶと、アリシアを抱きしめた。

 ふわりと香る甘い髪の匂い。しなやかで温かい身体。やはりこの腕の中に閉じ込めているのが、一番しっくりくる。


「もう距離なんて取らない。後悔させないくらい甘やかす」

「最初からそうしてくれればよかったのよ……!」


 頬を膨らませるアリシアに、リアムは笑みをこぼし、自然と唇を重ねた。



   ◆



 二人が言い争う声を聞いてしまいソワソワしていた侍女や側近たちは、苦笑しながらそっと扉から離れた。


「……殿下たちの『初めての喧嘩』かと思って慌てて来てみたら……これ、ただイチャイチャしているだけだな」

「アリシア様がお辛そうな日が続いて思わず諫言してしまいましたが……完全に、余計なお世話でしたね」

「王太子妃殿下の明日の午前中のご公務は調整しておきます。代わりにリアム殿下に頑張ってもらいましょう」


 ――こうして、『王太子夫妻の初めての喧嘩(?)』は平和に幕を閉じ、その微笑ましい様子は二人に近しい者たちの間で密やかに語り継がれることになるのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


次で番外編ラストです。

次話『番外編③ 愛され過ぎて魔力が暴走!? 甘い香りでお城がパニック!』

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