【こぼれ話】甘い誘惑と、限界のキス
本編からはみ出たこぼれ話です。
時系列は「未来の約束〜ずっと、傍にいてほしいんです〜(side.Alicia)」「交わされる約束〜運命は僕らの手に〜(side.Liam)」の少し前です。
リアム、調子に乗っています。
夕陽が差し込む演習場。静かに揺れる木々のざわめきだけが、心地よいBGMのように響いている。
「ん……今日はここまでかな」
アリシアがそっと魔力を解きながら、額に浮かんだ汗を手の甲で拭う。
「ふぅ……頑張りました、僕」
リアムがその場に座り込み、ゆるく息をつく。その銀髪が微かに風になびき、陽の光を受けて柔らかく輝いていた。
「うん。ちゃんと制御できてたわね。でも、まだ安定してない部分もあるからーー」
「先輩」
不意に遮られ、アリシアは目を瞬く。
「ん?」
「ご褒美、ください」
リアムは甘えるような声音で、アリシアに身を寄せた。
「……は?」
頬がほんのり朱に染まるアリシアに、リアムは艶然と微笑む。
「今日の特訓、すごく頑張ったでしょう? だから、ご褒美のキスをください」
「な、何言ってるのよ」
「いいじゃないですか、少しくらい」
「少しくらいって……今日だけで何回キスしたと思ってるの?」
アリシアがジト目で見下ろすと、リアムは無邪気な顔で指折り数え始める。
「えっと……五回?」
「十回以上したわよ!」
「そんなにしました?」
「したのよ!」
呆れたようにため息をつくアリシアに、リアムはくすくすと笑う。
「じゃあ、もう一回くらいしてもいいですよね?」
「よくないわよ!」
「……えぇ、ケチですね、先輩」
むくれるように唇を尖らせるリアム。だが、すぐにその表情が妙に色っぽいものへと変化した。
「……あれ?」
「な、何よ……?」
「なんだか……体が熱い……」
リアムは苦しげに眉を寄せ、胸に手を当てる。
「え、なに……?」
「魔力が……暴走、してる……?」
「えっ!? うそ、ちょっと待って!?」
アリシアが慌ててリアムの顔を覗き込む。確かに、彼の瞳は潤んでいて、ほんのりと頬が紅潮していた。
「ま、まさか……」
「うぅ……先輩が、キスしてくれなかったから……」
「は!?」
「だから、魔力が暴走して、発情しちゃったんです……っ」
艶っぽい吐息を漏らしながら、リアムが熱っぽくアリシアを見つめる。
(ど、どうしよう……!)
普段のリアムなら、こんなにあからさまに乱れることなんてない。
「し、仕方ないわね……」
アリシアは覚悟を決めると、そっとリアムの顔を両手で包み、唇を重ねた。
「んっ……」
リアムの熱が、アリシアの中に流れ込むような錯覚。優しくて甘くて、どこかアリシアの中をくすぐるようなキスだった。
「……っ、どう? 落ち着いた?」
「……全然、だめです」
「えぇっ!?」
「これは……ただのキスじゃ、もうおさまらないみたいです」
「ど、どうすればいいの!?」
リアムは今にも泣きそうな顔でアリシアを見つめている。
「……先輩の方から、もっと深くしてくれたら、きっと治ります」
「なっ……!」
からかわれているのかもしれない。でも、彼の瞳に宿る色気は、本物の熱を帯びていた。
(どうしよう……でも、このままじゃ……)
アリシアはぎゅっと拳を握りしめると、意を決してリアムの顔を引き寄せた。
「……っ」
先ほどよりも深く、じっくりと口づける。
舌が触れ合い、魔力が絡まる。
「ん……っ……」
次第に、どちらのものともわからない熱が体内を駆け巡る。
(こ、れは……やばい……)
リアムがぞくりと背筋を震わせると、アリシアの手が無意識のうちに彼の胸元へと伸びた。
「……っ先輩!これ以上、は……!」
はっとして、アリシアは慌ててリアムから離れた。
息が乱れ、唇が濡れている。
「き、今日の特訓は、もうおしまいっ!」
真っ赤になりながら踵を返し、足早に去っていくアリシア。その背中を見送り、リアムはそっと呟いた。
「……危なかった……」
本当は、魔力なんて暴走していなかった。
けれど、今のキスは……想像以上に危険だったかもしれない。
アリシアが可愛すぎて、演技のはずが、本当に限界を迎えそうになってしまった。
「……本当に、魔力が暴走しちゃってたのかも」
リアムは苦笑しながら、頬を火照らせたまま、その場に座り込んだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この後は二人の結婚後の番外編(イチャイチャ成分強め)を投稿予定です。
『番外編① 神灯の宵、エルフの王太子夫妻は甘美な儀式に囚われる』
『番外編② 初めての夫婦喧嘩(?)』
『番外編③ 愛され過ぎて魔力が暴走!?甘い香りでお城がパニック!』




