天使で悪魔〜運命の罠に堕ちて〜
アリシア編『揺れる想いと、甘く蕩ける魔力〜僕、頑張ったんですよ?だから、ご褒美ください〜』のリアム編です。
本日二話目の更新です。
先に『仕組まれた襲撃〜そして、運命は加速する〜』をお読みください。
――予定通り。
襲撃は完璧に成功した。いや、正確には成功させた。結果は上々。彼女はしっかりと僕を意識してくれた。
「……本当に、無事でよかった」
部屋に入るなり、僕はアリシアを強く抱きしめる。これは計算ではない。彼女の温もりを感じた瞬間、どうしようもなく腕に力がこもった。
心臓が跳ねる。彼女の体温が、彼女の鼓動が、直接僕の内側に染み込んでくるようで――それが、どうしようもなく心地いい。
「そんなに心配してくれてたの?」
震える声で問いかける彼女に、僕はすぐに答える。
「……当たり前じゃないですか」
僕にとって、アリシアは特別だ。ずっと昔から、ずっとずっと――
でも、そんな言葉を口にするつもりはない。彼女には、まだ理解できないだろうから。
だから、代わりに腕の力を強めた。
彼女の細い肩が、僕の手の中にある。その事実が、僕を満ち足りた気持ちにさせる。そう、ようやくここまで来たんだ。
「先輩?」
「……な、何?」
「顔、赤いですね」
「そ、そんなことない!」
僕の腕から抜け出した彼女が、必死に否定する。だが、耳まで真っ赤になっているのは隠せていない。可愛い。
「先輩、逃げないでくださいよ」
背後から囁くと、彼女の肩がぴくりと跳ねた。
「べ、別に逃げてなんか……!」
言い訳しようとする彼女を、僕は優しく見つめる。
彼女はまだ知らない。
この腕の中が、どれほど安全かを。僕がどれほど、彼女を大切に思っているかを。
「先輩、怖かったですか?」
優しく問いかけると、彼女の指がかすかに震える。
「……怖くなんか、ない」
「でも、震えてますよ?」
指先がかすかに冷たい。強がる彼女の手を包み込み、ゆっくりと温める。
「大丈夫です。もう終わったんですから」
今回は偽の襲撃だったけれど。これが本当の襲撃だったとしても、僕が守る。何があっても、誰が敵でも。
たとえ、それがこの世界すべてを敵に回すことになったとしても――
彼女はまだ、それを知らなくていい。
今はただ、僕のことだけを見てくれればいい。
アリシアは僕の手を振り払うことなく、静かに目を伏せた。その姿が、なんだかとても愛おしくて、胸の中で小さな波が起きた。
彼女の気持ちはわかっているつもりだった。しかし、今目の前にいるアリシアは、まるで全ての動き、全ての反応が、僕のものになった気がして、どうしようもないほど胸が高鳴った。
「先輩、もう一回、抱き締めてもいいですか?」
わざと少し寂しそうに声を作りながら言うと、アリシアの瞳が揺れる。その小さな動きに、僕の心もまた反応してしまう。
「……っ、別に……いいけど……」
返ってきたのは、消え入りそうな、けれど確かに僕に許しを与える言葉。
再び彼女を抱きしめると、その細い肩が僕の腕に包み込まれる。ほんの少しの甘い香りが、僕の鼻をくすぐる。その香り一つで、すべてが溶けてしまいそうな気がして、思わず彼女を強く抱きしめてしまう。
「先輩、力抜いてください」
「べ、別に力なんて……!」
アリシアの声が、ほんの少しだけ震えていることに気づき、僕は思わず力を抜こうとする。だけど、その反応が可愛すぎて、胸がぎゅっと締め付けられる。
「ふふ、そんなに警戒しなくてもいいのに」
彼女の頬に指を滑らせると、震えが小さくなる。その瞳は僕から目をそらせない。
「ねえ、先輩?」
「……な、なに?」
心臓が少し早く打つ。彼女は僕の気持ちを感じ取っているのだろうか、伝わっているのだろうか。彼女の頭の中には、今、どんな感情が渦巻いているのだろう。
「今、僕のことだけ考えてます?」
その問いに、アリシアは一瞬言葉を失う。
わかっている。答えは聞かなくても、今の彼女の心は、僕にしか向いていない。僕が支配している、この一瞬。僕はそのことを確信して、心の中で静かに満足した。
「いいですよ、そのままで」
髪を指に絡めながら囁くと、彼女の呼吸がかすかに乱れる。
今、この瞬間、彼女のすべてが僕に向けられている。それが、どうしようもないほど嬉しくなった。
「先輩、やっぱり可愛いですね」
耳元で囁いたその言葉に、アリシアの頬が真っ赤になる。その反応が、また僕の胸を締め付けた。
「なっ……!?」
彼女の動揺を感じながら、僕は心の中で静かに微笑む。こんなに可愛くて、無防備な、彼女が僕にだけ見せてくれるこの表情。堪らない。
「先輩って、意外と素直ですよね」
「ち、違っ……」
「違わないですよ」
笑いながら、僕は彼女の手を取って、指を絡める。
「……ほら、もう逃げられません」
彼女の耳元に、僕の指先がゆっくりと触れる。小さな震えが、アリシアの体を伝わってきて、僕の胸を締め付けるようだ。
「先輩、僕、頑張ったんですよ? 本当に。だから……ご褒美、ください」
僕は少しだけ笑みを浮かべ、悲しげにその距離を縮める。唇が彼女に触れそうなくらい近づき、指先が彼女の柔らかな髪に触れるたび、魔力が少しずつ強くなるのを感じる。
「だって、一生懸命戦ったんです。ちゃんと認めてもらえたら、嬉しいなって……」
その言葉がアリシアの胸に響いているのを感じる。
アリシアは目を閉じ、少しだけ唇を差し出した。彼女のその仕草に、胸が締め付けられ、僕はますますその距離を縮める。
唇が触れると、まるで魔力が絡み合うような熱を感じた。その瞬間、彼女の体が弾けるように震えるのがわかる。まるで魔力そのものが二人の間で交わり、深く、強く絡みついていくような感覚が広がった。
「これじゃ、足りない……もっと、もっと欲しいです」
僕は彼女の唇をさらに深く貪り、アリシアを引き寄せた。彼女の反応が、僕をますます欲情させる。アリシアの唇が震え、息が荒くなる。彼女の体が僕に引き寄せられ、僕の胸にぴったりとくっつく。
「リアム……っ」
アリシアが息を呑み、僕の名前を呟くその瞬間、僕は堪えきれなくなる。彼女の声が魔力とともに耳に響き、僕の全身が彼女に引き寄せられるように感じた。
唇が重なり、舌が絡み合うたびに、魔力はさらに強く、熱く、絡み合う。アリシアの震えが僕の体を貫き、心臓の鼓動が激しくなる。その震えに、僕の理性が一気に揺さぶられるのを感じた。
「先輩……もっと、僕に甘えてください」
アリシアはもう、僕の魔力に完全に支配されている。彼女の呼吸が荒く、体の力が抜けていくのを感じる。彼女の瞳が、少しずつ焦点を失っていくのがわかる。彼女の体が僕に身を任せ、抵抗することなくそのまま流されていく。そのまま、魔力とともに溶けるように、僕の腕の中で壊れそうに震えていた。
彼女の瞳の中に宿る戸惑いと欲望が、僕の全身を熱くさせる。二人の魔力がさらに強く交じり合い、アリシアが僕の中に溶け込んでいくのを感じる。
理性が完全に消え去ろうとしている。
僕の中で、欲望と衝動が暴れ出し、アリシアを手に入れることをただ強く望んでいた。
アリシアを大切にしたいのに、それでも、どこかでその衝動を許してしまいたいとも思う自分がいる。
「っ……」
言葉にならない声を彼女が漏らしたその瞬間、アリシアの目尻に涙が滲んでいることに気付いた。
ーーダメだ、これ以上は。
意を決して、力を抜いた。
「……あんまり追い詰めると、先輩が壊れちゃいそうですね」
いたずらっぽく、でも彼女を大切に思う深い愛情を込めて言うと、彼女から離れた。
「今日はこれくらいにしておいてあげますね。ゆっくり休んでください、先輩♪」
無理やり余裕なふりをして微笑んで、僕は部屋の扉へと向かう。アリシアは呆然とその後ろ姿を見送っているだけだ。
音を立てないように早足で自分の部屋に戻って、扉を閉めたその瞬間、僕は床に座り込み顔を手で覆って天を仰いだ。
アリシアが完全に僕のものになっていく。そう感じた。
しかし、今、手にしてしまうと、僕は絶対にアリシアを滅茶苦茶にしてしまう。
今は、アリシアを守りたいという気持ちの方が強い。その気持ちが僕を引き止めた。自分を抑え、戻ってこられた。
今日はここまで。
いずれ、アリシアが自分から僕の手に堕ちてきてくれる日が来たら。
その時はーー
僕は心の中で静かに誓った。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
R15の範囲でどこまで書くか悩みました。
よろしければ、評価、リアクション、ブクマいただけると幸いです。
次話『交わされる約束〜運命は僕らの手に〜』




