仕組まれた襲撃〜そして、運命は加速する〜
アリシア編『突然の襲撃と恋心〜大丈夫です、大好きな先輩が無事なら〜』のリアム編です。
「――ついに見つけたぞ、精霊王の血を引く者よ!」
闇の中から響く不気味な声。
演習場に突如現れた黒装束の男たちを見て、アリシアがすぐに魔力を練り始めるのを感じた。
(さあ、どうする?アリシア)
この襲撃は、すべて僕が仕組んだものだった。本物の敵ではない。だが、演出としては申し分ない。
狙われるのは僕――『精霊王の血を引くエルフの王子』としての存在。
そして、アリシアがその場で『僕を守る』選択を取るよう仕向ける。
(あの日、森で助けてくれたようにーー)
人間には騎士道精神があり、アリシアには特に強く『誰かを守る』意識が根付いている。
僕以外には発揮してほしくないが、それは間違いなく、僕にとって都合のいい性格だった。
「リアム、下がってて!」
アリシアが黒装束の男たちに対抗するように構え、僕に叫ぶ。
彼女の言葉に従うふりをして、僕は後ろへと下がった。
……と、見せかけて。
「そんなこと、できません!」
わざと必死な表情を作りながら、アリシアの前に飛び出した。
(ここは『アリシアが庇われる』べき場面だからね)
「リアム!?」
アリシアの驚いた声が響く。
敵の攻撃が迫る。
そこで、僕は予め決めていた通り、敵の攻撃を避けることなく、アリシアの目の前でわざと受けた。
……と言っても、本気でダメージを受けるわけじゃない。
事前に仕込んでいた防御魔法が、ちょうどいい具合に攻撃を受け流してくれる。衣服のダメージと、巻き上がった砂埃と煤が、いかにもそれっぽさを演出している。
それでも、アリシアから見れば――
「リアム……!?」
あたかもぼくが『アリシアを庇って負傷した』ように見える。
(さあ、どうする?)
アリシアの表情が変わった。
戸惑い、焦り、そして――明確な怒り。
「……許さない!」
彼女の魔力が爆発的に増幅し、敵へと向かって解き放たれる。
次の瞬間、炎の奔流が襲撃者たちを包み込み、一瞬で制圧した。
圧倒的だった。
(……素晴らしい。やっぱり、僕の選んだ人だ)
すべてが計画通り。
アリシアは、僕を守るために戦った。
そして、僕は彼女にとっての『守るべき、失いたくない存在』になったのだ。
ちなみに、襲撃者役の影たちには、事前にどんな強力な魔法も一度だけ防げるエルフ秘伝の魔道具を渡してある。
彼らの足元には巧妙に隠された転移魔法陣があり、アリシアの攻撃を防いだ直後にちゃんと発動して、全員無事に離脱したことは確認済みだ。焼け焦げた彼らの服の犠牲は無駄にしない。
(これで、僕への意識は格段に強まるはず)
傷を負ったふりをしながら、ぼくは地面に膝をつく。
「リアム!」
駆け寄ってくるアリシア。
作戦が成功して内心ほくそ笑みつつも、彼女が必死にぼくを確認する様子に、本当に嬉しくなる。
(ちゃんと心配してくれてるんだね、アリシア)
思わず、顔が綻びそうになったが、ここは『庇って負傷した』ことを強調する場面だ。
「大丈夫……です、大好きな先輩が無事なら……」
「馬鹿! なんで庇ったのよ!」
アリシアが眉を寄せて怒る。
その顔がまた可愛い。
(……ほんと、たまらないな)
アリシアは僕の手を取ると、魔力を流し込んで治癒魔法をかけ始めた。
その瞬間――
ゾクッ……と、甘美な快感が全身を駆け巡る。
(……やっぱり、相性が最高すぎる)
僕の魔力とアリシアの魔力が触れ合うたび、身体の奥から蕩けるような感覚が広がる。
それは、僕にとっては計算済みの現象だ。
しかし――アリシアにとっては想定外のはずだ。
彼女の顔が一瞬、わずかに赤く染まる。
「っ……?」
気付き始めたな。
彼女の魔力もまた、僕の魔力との触れ合いによって特別な感覚を生み出しているはず。
エルフと人間の違いこそあれ、これほどまでに魔力の相性が合う相手なら――
(僕なしじゃ、もう駄目になるよ)
アリシアの瞳が揺れ、どこか戸惑っているように見えた。
無理もない。
魔力の相性が良すぎる相手と長時間接触すれば、徐々に理性が溶かされていく。
(あと少し……)
アリシアの心地よい魔力に揺蕩いながら、僕は彼女が堕ちるその瞬間を心待ちにしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日もう一話投稿します。
次話『天使で悪魔〜運命の罠に堕ちて〜』




