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5.たくましい彼女
「あ、騎士様!」
出会い頭に叫んだ侍女は、どこからかハエ叩きのようなものを取り出すと、目にもとまらぬ早技で壁を打ちつけた。
「ふふっ。虫が止まっていました」
にこにこと嬉しそうに笑う侍女。
騎士が壁を見れば、哀れな害虫はすでに灰となり、跡形もなくさらさらと風に飛ばされていた。どうやら火の魔術が仕込まれているらしい。
儚い外見からは思いもよらないたくましさに、騎士は侍女をまじまじと見つめた。
「あ、はしたなかったでしょうか」
「……いえ、私は好ましく思います」