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4.赤髪の彼女
王宮内でたまにすれ違う、赤髪の侍女。
彼女は、自分を好意的に見てくれているように感じる。
諜報を得意とする職務柄、他人の視線には敏感なのだ。
「お疲れ様です、騎士様」
こちらの心をほぐすような笑顔でもたらされる、やわらかな挨拶。
「はい。お疲れ様です、侍女殿」
以前は、ただすれ違うだけだった挨拶を、少し立ち止まって応えるようになった。
そうすると、彼女の笑顔がよく見える。
だが袖からのぞく彼女の手首の細さに、無骨な自分が近づくことは躊躇われるのだ。