106.いちばん親しい異性
エイプリルフール話、ようやく終わりです!
「――というわけで、私はリアン様に嘘をつく必要があるらしいのです。ですがあなたに嘘をつくのは憚られ、できれば今日は会いたくありませんでした」
右手を放してもらった後、ラシディアは簡単に事情を説明した。
上司の名前が出た時点でオリアントは顔を顰めていたが、ひとまず最後まで聞いてくれた。そしてラシディアが話を終えると、よく分かりましたと、彼はひとつ頷いた。
「団長の話が本当か冗談かは、ここで判断はできません。あの方の考えることは私には到底理解が及ばないので。ですがだいたいはくだらないことなので、今回も気にしなくて良いでしょう」
そんなにあっさり上司の言葉を放り投げて大丈夫なのかしらと、ラシディアは目を瞬いた。
そこへ、一度は解放されたはずの右手に、今度はゆっくりとぬくもりが触れた。見れば、指先だけを緩く掴まれている。
「それよりも気になることがあります」
「はい?」
「シディのいちばん親しい異性は、私ですか」
「え?」
まっすぐに見つめられ、頬に熱が上る。
「団長の話を聞いてすぐに私を思い浮かべてくれたのは、そういうことではないのですか?」
「え、あの、」
「それとも、他にふさわしい相手が?」
指先にかかる力が、少し増した。
「い、いません! そんなひと!」
すぐに否定すれば、よかったと笑った騎士は指の力を弱めてくれた。
「もしも団長の話が本当であれば、では私は、あなたに嘘をつかないといけませんね。私のいちばんも、あなたなので」
言われた言葉の意味を理解して、その日は嘘をつくどころではなくなってしまった。
このシリーズは、ラシディアの方が押せ押せのつもりで書き始めたはずなのですけど、どうもオリアントの押しが強くなり気味なこのごろ……(^^;)
ラシディアには頑張って押してもらって、オリアントをたじたじにさせてほしいですね。




