イタコノイド1
日に三度と出ていないバスを何度も乗り継いで、やっとこさ肇番はサンザイ山の中腹まで来られる。野晒しのベンチとバス停は元が思い出せないほどに錆びついて、その横にある雑草に塗れた祠は、普段人が寄りついていないことを物語っていた。バスはこの後山の裏手まで回り込み、懋坂村へと降りていくはずだが今じゃ事前に連絡がないとここまでこないのだと、たどたどしく方向転換を繰り返し、もと来た道を帰っていった。
バスを見送った後、仕方なく山頂を目指そうと記憶を辿り道を歩く。最後に登ったのはいつだったか。曖昧な記憶では脇道の多いサンザイ山は遭難しそうだ。と笑ってみるが真新しい轍が雑草を薙ぎ倒しており、しばらくはそれを追ていけばいい。
夏の山は木々が青々と茂げり、木漏れ日だけが道を照らしている。そのおかげで随分と涼しくはあるのだが、それでも水分補給はこまめに取るべきだ。空になったペットボトルを振り、駅で購入しておけばと後悔する。サンザイ山に自販機はない。麓の懋坂村へ降りるか、ここからバスで数十分はかかるそこそこ栄えた街がある鈍豅谷へ行くか。どちらにせよバスも車もない現状、さっさと頂上まで行くしか選択肢はない。背負っていたリュックにペットボトルをしまい、額から流れる汗を舐めた。
リュックの中には大したものは入っていない。スーツに着替えに手袋に。衣類が多いだろうか。まったく何故、飲み物を余分に買わないのか。だがそのおかげで荷は軽く、足取りは重い。
少しして道が細くなり、轍を作っていた白のセダンとワゴン、そしてロールスロイスが放置されていた。片田舎の山には似つかわしくない車を横目に気を引き締める。三分の一は登っただろうか。どうやらここからは真に記憶を頼ることになりそうだ。
「……えっ? もしかして扇?」
突然、懐かしい名前を呼ばれて振り向いた。いつのまにか着いてきていた赤いアウディから降りてきたのは喪服にサングラスの女。恐らくは知り合いだ。だが、幾年振りの再会であるが故に誰か分からない。そう感じ取れるように目を泳がせはにかんで見せる。思惑通り女はサングラスを外し、自らを指差して名乗った。
「やっぱりそうじゃん! ほら私よ、梓月。いとこの梓月」
「あっ、あぁ! えぇ梓月? 本当に梓月か?」
「ちょっと、それどう言う意味?」
梓月はムッと不機嫌になり俺を睨む。白山梓月。俺の母の妹の娘。つまりは従妹にあたる。十五年、いやそれ以上か。男子三日会わざればというが、女の変わり様も凄まじい。かつては引っ込み思案で兄の後をついて回っていた彼女も今や自信に満ち溢れた笑みを持つ魅力的な女性になっていた。
「なんか目つきがやらしいんだけど」
心外にも胸を隠した梓月を鼻で笑い、山頂を目指す。そんな俺に慌てて梓月は黒い日傘をさしながら追っかけてくる。
「ちょっと待ってよ! 淑女がいるんだからもう少しゆっくり歩いたら?」
「山に登るとわかっててなんでパンプスなんだか」
膝下まである喪服のスカートとローヒールのパンプス。およそ登山には向かない格好に呆れつつ立ち止まり彼女を待つ。意地悪をしてしまったが、そもそも道を覚えていないので待つつもりではあった。それを優しさと勘違いしたのか梓月はありがとと笑う。
「それにしても扇まで来るなんて思わなかったなぁ」
「どうして?」
「だって十五年だよ! もう死んじゃったんじゃないかって。全然連絡もなかったし、おばあちゃんもずっと会いたがってたよ」
「……ああ、そう」
祖母、菊理紐は詐欺師だった。いや、俺にはそう見えただけで、そうであってほしいだけで、本当は違うのかもしれない。祖母は故人を呼びその身に降ろし言葉を伝える、いわゆるイタコのような巫業を営んでいた。その力が本物かは定かではないが、祖母を訪ねる人々は絶えずいたと記憶している。だが、この山の様子では少なくとも数年、祖母を訪ねる者はほとんどいなかったのではないだろうか。
そんな祖母が先日亡くなった。
十五年も音信不通だった俺がそのことを知れたのは、実に偶然の出来事だったが、そのことを梓月や他の誰かに言うつもりはない。知ってほしくないことを話したいとも思わない。
「梓月はよくばあちゃんのところに来てたんだな」
だから話題を相手へ向ける。
「まあね、野瀬さんだけにおばあちゃんの世話を任せるのも悪いから」
野瀬さんというのは五年前に梓月が雇った家政婦らしい。といっても前までは祖母の客で、祖母に心酔し、自ら志願してきたのだという。なんでも死別した夫と話せたお礼がしたいのだと。
「でも、未だに信じられないよ。降霊術なんてさ」
梓月はどこか寂しそうに言った。
「扇は知ってたんだっけ?」
「ああ、あと風梓も知ってたろ」
十五年前まで俺と母は祖母の所で暮らしていた。それに色々手伝わされていたから当然知っている。梓月は長期休暇くらいでしか来れなかったから知らないのは無理もない。彼女の家族で知っていたのは、祖母の娘である彼女の母と好奇心旺盛な兄の風梓くらいだろう。
「そうだよ。十歳の頃には知ってたってさ。なんで教えてくれないかなぁ」
「そうだな。……にしても野瀬さんだっけ? ここに住むのも大変だろう、買い物とか。車も途中までしか来れないし」
そう言って思い出したように梓月に問う。
「そう言えばめっちゃいい車に乗ってたな?」
梓月は快活に笑みを浮かべ、そうでしょうと満足げに言った。浮かべているのは笑みだけではないが、その汗すらも眩しく水々しい。この十五年の間に何があったのやら。聞かれたくないことを聞こうとは思わないが、彼女はそうでもなく自慢げに語り出す。
「私さ、今会社経営してんの」
「へぇどんな?」
その質問にさらにふふんと楽しげに笑った梓月は鞄から一枚の名刺を取り出した。チラリと見えた黒のミニバックには他にも色々入っていたが飲み物らしき物はない。少し残念に思いながら名刺を受け取った。
「『アワギハラ』……って言うと化粧品のか? すごいな」
『アワギハラ』は有名な化粧品メーカー。万人のための美をモットーに国内外で人気を博している。たしか、直近の経常利益が2,000近くはあった。化粧品メーカーとしてはかなりの額だ。まさか梓月が一流企業の社長だったとは。改めて驚きだ。
「扇は? 十五年……あれからどうしてたの?」
心配そうに聞いてくる梓月を他所に顔を上げた。木々は開け、夏の日光が顔を照らす。入道雲すらない晴天とそれに続くように並べられた石段。蝉の声が一段と響く。思っていたよりも早く見えてきた格式高い建物は、俺や母が住んでいた巫業の家。その名を斬罪霊宅。
あいもかわらず物騒な名前だ。斬罪山の幽霊屋敷。サンザイ山と言っているのは散財、つまりは祖母に金を払う奴らを馬鹿にして掛けた名だが、本来の名前は斬罪山。その昔、ここは処刑場だった。昔から山だったのか、死体が積み重なり山ができたのか。民話は後者だが、ここに住むのは並の胆力では不可能だろう。
いざと勇ましく石段へ足をかける。梓月は何も言わない俺に不満そうだったが、茹だるような暑さが彼女の元気を削ぎそれ以上追求することはなかった。
石段の数は200近い。子どもの頃に数えたことがあったが、今じゃ覚えていない。そして数える気もないし、今後数えることもない。俺たちは一刻も早くこの灼熱の処刑台を登り切らんと足を運んだ。
「ああ、梓月ちゃん!」
「こんにちは。扇、この人がさっき言ってた家政婦の野瀬さん。で、おばあちゃんの長女の息子でおばあちゃんの養子でもあり私と風梓の従兄弟で十五年音信不通だった菊理扇」
「扇です。よろしく」
野瀬さんは想像していたよりも随分と若く、冷たい目を持つ人だった。冷たく鋭く何かを見定めようとする目。俺はその目をよく知っている。人を疑う時の目だ。そりゃこんな日に長年音信不通だった親族が現れれば誰だってそんな目になるだろう。俺はそんな疑いを気にしないよう努め、笑顔で握手を求めた。野瀬さんはまるで百面相のように顔から疑心を隠し、手を取った。
「まあ、はるばるどうも野瀬妙子です。風梓くんたちもすでに来ております。ああ、それから紐様に挨拶をお忘れなく」
梓月の兄、風梓はサンザイ山を命名した者でもある。昔は歳の近い男同士ということもあって山中を駆け回った。後ろから梓月もついて来ていたっけ。懐かしい記憶を思い出しながら、俺たちは野瀬さんに連れられ祖母の遺体の安置場へと案内される。廊下は雨戸が開いているためか、蝉の声がよく聞こえた。そんな中、ふと沸いた疑問を口にする。
「そういえば、ここまで車では来れないけど、ばあちゃんの遺体はどうやって火葬場まで運ぶんだ?」
つい口をついた疑問に今言うことではなかったと反省する。立ち止まっては振り返り冷ややかな瞳で悲しみを見せる野瀬さんの横顔に息を呑んだ。野瀬さんは何かを言おうと口を開きかけるもすぐに案内を続けた。代わりに答えたのは梓月だった。
「ヘリで運ぶらしいわ」
「ヘリ!? ……あ、いや、そうか。ごめん。ありがとう」
そして十五年という年月は俺が祖母に対する情を忘れさせるのに十分な時間だったことを認識する。
白い棺。襖に羊が描かれた、涼しい十六畳の和室には白く険のある顔の祖母の遺体が眠っていた。十五年前と変わらない、厳格な祖母の顔。その顔が苦手だった。梓月は鞄から真新しい化粧品をいくつか取り出して祖母の顔へと近づける。
「葬儀の人にお願いしていたの。おばあちゃんの化粧だけはどうしても私がやりたくて」
震えた声で手で祖母を愛おしそうに彩っていく。俺はその横で目を閉じ手を合わせる。梓月や野瀬さんほど祖母に悲しみが湧かなかった。それが胸苦しさを覚えさせ、逃げるように部屋を後にする。
「え、扇? 嘘だろ扇か!」
「ああ久しぶりだな。風梓」
梓月と野瀬さんが化粧を進める中、俺は先に親戚や祖母と縁のある方が集まっている通夜の会場へと向かった。さっきの部屋の数倍はある和室にはすでに何十人もの人が思い出話に花を咲かせていた。
そんな中でいち早く俺と気がついた風梓の近くへと座る。
「えぇ扇くんかい? おっきくなったなぁ」
「久しぶりです。梓月も来てますよ」
「さぁさぁさぁ暑かったろ。飲んで飲んで」
彼の周りにいたのは風梓と梓月の両親。俺の母の義理の弟と母の実妹。他に知り合いがいないので俺は彼らと過ごすことにする。知り合いと言っても十五年もの空白がある。その間に二人は老け込み、梓月は金持ちになり、風梓はよくわからないが太った。だが、顔つきが子どものころそっくりだ。きっと俺もそうなのだろう。
「やっぱりな。雰囲気が扇だったぜ」
「雰囲気?」
「ああ、なんか二重の暗さがあるよな」
「なんだよそれ。それなら俺も白山家は全体的に白く見えるぞ」
「苗字に引っ張られてるだけだろ」
そう言われてしまえばそうだと笑い、俺たちは冷えたビールを片手に子どもの頃の思い出話へ移行する。
「いや、あの時は風梓が鬼だったろ。先に寺に帰ったのはお前だ。おかげで梓月がずっと隠れっぱなしになって……」
「ああ思い出した。地下室幽閉事件な」
まあ、その地下室も家の中から通じていて、母さんが見つけたんだっけ。こんな古臭い建物に地下室があったなんて子どもの頃は衝撃だったな。後で見に行こうか。そんなくだらない思い出話に花を咲かしていると、風梓はずっと気になっていたであろうことを聞いてくる。
「……にしてもこの十五年どうしてたんだ? 叔母さんが亡くなってから全然連絡が取れなくなってよぉ」
それにしても本当に多くの人たちが来ている。幸いこの家は馬鹿みたいに広いのでこれだけの人数も寝泊まりできるスペースはある。というよりほとんどの人がそのつもりだろう。もちろん俺もそのつもりだ。通夜葬儀といわず暫くはここに居させてもらおうと思っている。
「おい、聞いてるか?」
中には昔テレビなんかで見たことのある政治家や俳優までいる。変なやつもいる。黒いゴスロリや長すぎる髪の女。祖母の仕事柄かああいったオカルトチックなやつが集まるのだろう。そんなことを考えていると見ていることに気がついたゴスロリに微笑まれる。もちろん俺も笑顔で返した。人間関係の第一歩は好印象を与えることだ。
それにしても、こんなに大人数。駐車場(?)には梓月の前に三台しかなかったが、まさかヘリで来ているとでもいうのだろうか。まあ、普通に考えて別の場所に留めているのだろう。
「扇? おーい聞いてるかぁ?」
「なんだよ。聞いてるよ」
風梓は諦めるという言葉を知らない。人が考え事をしている最中でも平気で自分の疑問を尋ねてくる。仕方なく俺は答えてやった。
「何をしていたかか。全部話すとなると時間が長くなるが、まあ、今は記者をしているよ」
嘘である。俺は胸ポケットから名刺入れを取り出しそこから一枚を選び取り、彼らに見せた。今はこれしか実名のものがない。彼らは一様に安堵した様子を見せる。家出小僧がなんとか生きていることに安心したか?
「にしてもなんで記者になろうと思ったんだ?」
……本当にしつこい野郎だ。理由なんて何だっていいだろう。心で悪態をついても、顔にはそれを出さず適当な言葉で返す。
「知りたかったんだよ。皆んなが秘密にするようなわからないことを全て」
「うん? ぁっ……そう、だよな。すまん」
「いや、謝るほどじゃ」
風梓は俺がいなくなった理由を想像し踏み込みすぎたと謝った。十五年前、母が亡くなったことを俺がまだ引きずっているとでも思っているのだろうか。だが所詮、人と人との繋がりなんて一過性のもの。たとえそれが親や兄弟であっても、過ぎてしまえば見終わった映画のようにただ余韻を残すものでしかない。長く続いた映画の終わり。母の死も祖母の死も、もう二度と見られない映画に俺は「ああ、もう見れなくなったんだな」と思うだけだ。その理由が第三者による打ち切りだとしても。
だが、多くの人はそうではないのだろう。だから祖母の降霊術がこれだけの人に求められていた。
その後も少し早い酒盛りと思い出話は続いた。
「もし、菊理扇ちゃん?」
「はい?」
日も傾き出し、一向に来ない梓月を呼びに行こうと廊下に出た時、背後から声をかけられた。親しみを感じさせる呼び方に知り合いかと振り返ってみれば、先ほど微笑んでいたゴスロリ少女が立ち、後ろ手に鼠の描かれた襖を閉めた。恐らくは喪服仕様なのであろう。幾つものフリフリとした装飾が施されるも色は黒一色。胸には彼女と似た衣装のフランス人形が抱えられ、その宝石を嵌め込んだような澄んだ蒼い眼がこちらを凝視する。気味の悪さに目を逸らしゴスロリ少女に名を聞いた。
「ええ、菊理扇は私ですが……あなたは?」
「初めまして。事解パラミィと申します」
そういって事解は深々と頭を下げた。彼女の平らな胸に押されて人形の首もカクンと倒れる。パラミィとは変わった名前である。見たところハーフというわけでもなさそうだが。さては偽名だろうか。仕事柄、他人に偽名を使われることには慣れている。特段不快感はない。それよりもと、彼女と人形のなんとも言えない不気味さに顔を顰めていると、人形を見つめていたことに気がついた事解がわざわざ紹介してくれる。
「この子は鎹ちゃん。私の一番のオトモダチです」
「あ、ああそう。…………可愛らしい子だ」
心にもない言葉に事解は嬉しそうに笑い、俺は愛想笑いをする。それにしても気味の悪い人形だ。魅入るほど深い蒼の瞳が常に顔を凝視し身震いする。不気味の谷を越えられない人形は今にも動き出しそうだ。
……? なぜ俺を見ている?
事解の持つ人形、鎹は見たところ磁器でできている。これはフランス人形はフランス人形でもビスクドールと呼ばれるものだ。ビスクドールにはそりゃ首が動くものもある。球体関節なら他の部位も動くだろうが、だとするならばアンティークと比べ値打ちは下がるだろう。それはともかく、たとえ首が動こうが球体関節だろうが赤べこのように頭が元の位置に戻ることはない。
だからおかしい。頭を下げた人形があいもかわらず俺を見続けるはずがないのだ。
その事実に気がついたとき、ゾッと寒気がした。体が緊張で強張り、瞬き一つできない。人形が俺を見ている。その蒼い双眸が俺を離さない。寒い。辺りは静寂に包まれ、心臓の音がはっきりと聞こえてくる。深い青が全てを飲み込み、体は謎の浮遊感に包まれる。渦のように飲み込まれる。上も下も左も右も混ざってゆく。ただ無機質な人形だけが俺を見ている。
「……嘘」
パンッ――。
乾いた音に意識が覚醒する。数秒それとも数分。記憶がない。ただスッキリとした脳に煩わしい蝉の声が響き始めている。乾いた音の主、事解は人形の前で手を合わせ変わらずに微笑んでいた。心なしか驚きを隠そうとしているようにも見える。
「……」
「あまり目を見てあげないでくださいね。この子は魂をとってしまいますから」
「はぁ……」
魂をとるというのは何かの比喩だろうか。生返事を彼女に返す。人の嘘を見抜く自信はあるが如何せん頭が働かない。だが事解の貼り付けたような笑みと人形の瞳が真実だと訴える。飲み込まれる感覚はなくなったが、それでも不気味さと恐怖は薄れない。嫌な汗が吐き出し、なおも肌寒さを感じる。それらをなんとか紛らわせるように、彼女が話しかけて来た理由を聞いた。
「……それで、えっと、何か用事でも?」
「ええ、お話でもどうかと思いまして」
「話? なんの……?」
「そうですね……紐ちゃん。あなたの祖母、菊理紐について」
紐ちゃん。その呼び方に違和感というのか、少し驚いた。事解の容姿は十代半ばといったところだが、仲が良かったのだろうか。米寿間近の祖母と。一体どんな関係だったのか。それとも人形にもちゃん付けをするところを見ると癖のようなものなのかもしれない。しかし、どちらにせよ彼女が祖母のことを知っていることは事実。俺は気になった。
この十五年の祖母のこと、そして――
祖母の『遺産』のことを。
だが一先ずは彼女の正体を暴かなければならない。彼女が何者で何を知り、それが真実か、信ずるに値するか見定めなければならない。
「あの……ところで、祖母とはどういったご関係で?」
事解は言い忘れていたと気がつき、ごめんなさいと一言謝った。
「私と紐ちゃんはオトモダチですの」
当然だと言わんばかりの口調で。
「お互い霊感を持った霊能力者ですから」
そう事解は微笑んだ。常に人懐っこい笑みを見せ、柔らかい口調で話す。相手に敵意を見せず持たせない。見た目はアレだが話してみると中身は普通の少女。育ちの良ささえ感じるほどの好青年。そして突飛な発言。
ああ、そうか。間違いない。
彼女は――こちら側の人間だ。