最新情報更新中
一年ってあっという間に過ぎる。
子供の頃は一日一日が長く感じられたものだが、年を取るごとにその時間の短さに驚いてしまう。
俺だってついこの前まで20歳だったのに、気が付けば30歳をオーバーしている。
このまま年を取ったら俺の将来はどうなるのだろう。
……何も変わらねぇな。
しかし今日も暑い。
歳を取ったら顔中シミだらけになるんじゃないかな、と思うくらい真夏の紫外線をモロに浴びながらリフォームしていた。
以前アパートを売ってくれた大家さんが歳を取ったこともあり、持っていた物件を処分することになった。そこで何軒か見繕って俺が引き受けることにした。
当然お金もかかったが、電たんぽの売り上げも好調だったので、思い切って購入した。
大家業のいいところは、時間と期日がないところ。
親方の弟子をしていた頃は「いついつまでに仕上げる」という期日が決まっていたため、日々忙しく動いていた。
けれども今は、期限を切るのも労働時間も自由である。
ただ入居者が決まらなければ家賃が入らない。家賃が入らなければお金がなくなる。というリスクはあるが……。
どんな仕事でも楽して設ける術はない。
親方直伝の腕をフルに発揮して、一部屋一部屋を丁寧にリフォームしていった。
Tシャツが汗で絞れるくらいビチョビチョになり、作業パンツにペンキをこれでもか!といわんばかりにベッタリ付けて帰宅した。
「お帰り」
「……」
エアコンで冷やされて、体中が幸せをかみしめている。
「お仕事ご苦労さま」
「……」
「今日は暑かったね」
「……」
「なんか言いなさいよ。シスコン!」
帰れ! バカヤロー!
墓地で妹と遭遇し仲良くなった凛は、俺の最新情報を更新し続けている。
妹が面白半分でしゃべるものだから、あることないこと全部筒抜けだ。
個人情報保護が叫ばれるなか、俺の情報は悪性ウィルスに感染してしまった。
トロイの木馬よりタチが悪いんだけど。
さらに、大学に進学した凛は「1人暮らしがしたい」という事でのアパートを借りたのだが、運悪く、凛の通う大学近くに俺所有のアパートがあった。
アパートに関しては妹にも誰にも教えていない。別に教えても何のメリットもないし、相手だって興味もないだろう。住所も場所も購入したことさえ言ってないのでバレる心配はない。
だが、不動産屋から入居申込の通知がきて、そこに書かれた名前を見た時、俺は彼女の情報力の凄さに震えた。
松下凛……なんで知ってるの?
そして今、ベッドの下に隠しておいたエロ本を広げ「ほぉ~」だの「へぇ~」だの言っている。
おい、お前は一体何者なんだ。そして何が目的だ!
妹の手土産にわざわざ北海道から注文したメロンを食べるのはいい。
だが、思い出のエロ本に汁をこぼすな! 手でふくな!




