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謎の協力者と謎の女

 それから1か月くらいたった頃、祖父から電話が来た。


「はい、あっしはオオカミ男でガンス」

「……隆志、お前何かしたのか?」

「はい?」

「お前も弁護士に相談したのか?」

「言っている意味が分からないんだけど」

「俺のところに「ぜひ協力したい」と弁護士から連絡がきたんだが、お前か?」

「俺、弁護士じゃないけど?」

「わかってるよ、そんなことは! 真面目に聞け!」

「至って真面目ですけど」

「とにかく今からこっちへ来い! 話はそれからだ!」


 医者のくせにカルシウムが足りないな。

 最近、すごく美味しい低温殺菌牛乳を見つけたのでそれを持って行きますよ!


 言っている意味がサッパリだったが、来いと言われたので祖父の家へ行った。



 祖父の話によれば……。


 知り合いの弁護士に相談依頼をし、着々と裁判の準備を始めていた所、「今回の件でお手伝いしたい」という人が現れたらしい。その数4人。

 4人の弁護士が今回の案件について協力を願い出たのだという。

 祖父はてっきり俺が依頼したものだと思い、連絡をしてきた。

 という展開だ。


 俺は弁護士の知り合いなど1人もいない。職人なら最低10人は集める自信はあるけど。


「どうする?」


 珍しく真剣な祖父。


「どうするって、せっかく相手が協力してくれるって言ってるんだろ? だったら手伝ってもらえば?」

「そう簡単にはいかないだろ」

「なんで?」

「弁護士費用って結構高いんだぞ。しかも4人って……」

「その人達は報酬をよこせ、って言ってるの?」

「いや、そこまでは聞いてないけど」

「依頼した訳でもないのに手伝うって言うことは、もしかしてタダじゃないの?」

「慈善事業ってことはないだろう」


 そこへ妹がコーヒーを持ってやってきた。


「なんだか気味の悪い話ね」

「なんで?」

「だって、依頼した訳でもないのに、どうしてこっちが大変だってことが分かったのかな?」

「弁護士同士、中で繋がっているんじゃないの?」


「隆志、そりゃ違うよ」


 祖父が口を挟んだ。


「弁護士には守秘義務があるからな。医者も同じで患者の情報は漏らしちゃダメなんだ」

「でも、患者さんを他の病院に紹介することもあるだろ?」

「それは病院同士の話で患者は別だ」

「……」


 妹はコーヒーをすすりながら、


「お兄、心当たりないの?」

「まったく! 金輪際!」

「……」


 しばらく3人とも黙ったまま考え込んでいた。


 祖父が依頼したのは1人。妹は友人のツテを辿って交渉中。俺は知り合いがいないので頼むことすら難しい。


 では一体誰が。


 脳天が突き抜けるほど甘いコーヒーを飲みながら、いままで出会った人を思い浮かべてみた。


 親方、おかみさん、姉ちゃん、職人、レジェンド、社長、凛……ん? 凛?


 あいつ、もしかして……。


「二人ともごめん。ちょっと用事思い出したから帰る!」

「な、何だ急に!」

「ごめん。また来る!」


 俺は急いで愛車に飛び乗ると、寅ちゃんをドリフトさせながら自宅へ戻った。


 急いでいて言い忘れたが、俺はブラック派だ。これも覚えとけ!



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