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氷のエメラルダス

 今日もキンキンに冷えた身体を温めようと布団に潜り込んでくる妹。


「お前、本当に冷たいな」

「でもお兄が温めてくれるでしょ?」


 小3が小6に言う言葉ではない。


「てかお前さ、湯たんぽがあるだろう。この間お母さんに買ってもらったろ?」

「あれは朝になると冷たくなってて余計に寒いの」

「だからって、毎晩毎晩俺の部屋に来るなよ」

「お母さんが言ってたでしょ。私が寒い時はお兄が温めなさいって」

「いや、それを言われると……」

「じゃあくっついていいでしょ」

「……」


 俺は来年中学生になる。

 妹はまだ小3だから「かわいいね」で済むが、俺にとっては今後の人生を左右しかねないのっぴきならない状況だ。

 中学生になっても妹と寝てることがバレたら確実にターゲットにされる。

 それどころか、あだ名はロリー隆志に決定である。


 昔から仲が良く、歩くときは必ず手を繋いでたし、つい最近まで風呂だって一緒に入ってた。

 近所のおばちゃん連中には「いつも仲がいいわね」と言われ、友人からは「学校指定カップル」とからかわれていた。


 それもこれも小学生同士だから許される技で、中学になったらそんなアクロバティックは通用しない。

  妹を愛でる変態兄貴としてその名を学校中に轟かせるだろう。



 小悪魔の甘美な囁きに己を見失いそうになりながらも、黙って迷惑そうな顔をしていると、


「……イヤなの?」


 申し訳なさそうに小さくつぶやいた。


 俺はシスコンではない。断じて妹のことなど何とも思っていないが、小さい体で「寒い寒い」としがみついてくる姿は……まんざらでもない。


「まあさ、冷たいのはどうしようもないもんな」

「……でも本当は迷惑なんでしょ?」

「迷惑というか、その……俺のハーロックが無法者に」

「やっぱりイヤなんだ」

「いや、大宇宙の魔女に……重力サーベルが……」

「……」


 まあ、小3の小娘にはどう説明しても分かりっこない。


 それに俺は、よき兄として可愛い妹を愛でているのだ。寒いと言えば温めてあげるし、苦しいと言えば背中をさすってやる。悲しそうな顔をしていたら笑わせてやろうと思うし、笑っている時は俺も心から嬉しい。それが兄妹愛ってものだろう。


  決してお前らの思うような……取り乱してすまん。



「遠慮しないでくっつけよ。温めてやるから」

「ほんとに?」

「うん」

「ホントに本当?」

「ああ」

「じゃ、もっとくっついていい?」

「おう、どんと来い!」


 その言葉を聞いて調子に乗ったのか、俺の腕をギュッとし、冷たい足をさらに奥へと滑り込ませた。


 ひぃー---------!


 冷える。心底冷える。

 腕も足も体のすべてをくっつけてくる妹。

 しばらくすると安心なのか温かさなのか、スヤスヤ眠りについた。

 俺は妹に体温のすべてを奪われ、寒さで震えながら眠った。



 遠い彼方の水と凍りに覆われた惑星。そこに現れた絶世の美女。

「私の名はエメラルダス。これから私と一緒にまいりましょう」

 そう耳元でささやかれ、フーッと吐息をかけられると全身ガチガチに凍って身動き一つできなくなる。そんな夢を見た。


 もう勘弁してくれよ、氷のエメラルダス。


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[一言] 眩しい兄妹愛だ
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