表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/72

違反切符と姉とスッポン

 まだ寒さが厳しい2月頃。春の引っ越しシーズンに向けリフォームをしていた。ちょうど材料が足りなくなったので、休憩がてらホームセンターへ行った。

 フードコートで飯を食い、必要な材料を取り揃え岐路に着いていた。


 田舎の長閑な道を鼻歌を歌いながら運転していると・・・。


 ウゥィーーーーン、ウゥィーーーーン。


 突然サイレンが鳴った。

 なんだ? 事故か? 火事か?

 周りをキョロキョロ見渡したが、それらしい気配はない。

 気のせいか。そう思いアクセルを踏みなおした。


 ウゥィーーーーン、ウゥィーーーーン。


 再び鳴るサイレン。

 なんだよ、ウッセーな!と思いながらバックミラーを覗くと、真後ろにパトカーがピッタリくっ付いていた。しかもパッシングしながら……。

 パトカーが煽り運転していいのかよ! ふざけんなよ!


「はい。前の軽トラ、左に寄せて止まりなさい!」


 拡声器から発せられた声は、明らかにあいつだった。


 内心、めんどくせー奴に絡まれた!そう思ったが、逃走するわけにはいかない。

 ここで逃げ出したら田舎道でカーチェイスが行われ、ハンドルを切り損ねて田んぼに落下だろう。

 特にあいつの運転は幅寄せガンガンで乱暴極まりないから。



 ハザードを出しながらしぶしぶ左に寄せた。


「はい。免許証出して!」

「なんでだよ。俺、違反なんかしてねぇだろう!」

「あれ、警察に対してその口の利きかたは何?」

「はぁ? 俺が何をしたっていうんだよ!」

「いいから免許証を出しなさい」


 ドアをこじ開けられ、無理やり表へ連れ出された。


「ちゃんと説明しろよ!」

「スピード違反。3キロ速度超過ね」

「さ、3キロだと!?」


 姉は笑いながら何かに書き込んでいた。


「なあ、3キロなんてみんな軽く超えてるだろ」

「3キロでも違反は違反です!」


 こ、このドSサイコ野郎が! 


 俺の言うことなどまるっきり無視し、

「はい。これキップ! 期日までにちゃんと払ってね」

 ニコニコしながら違反切符を渡してきた。


 なんか物凄く納得いかないんですけど……。


「姉ちゃん。張り切るのはいいけど、これはやりすぎだぞ」

「でもオーバーはオーバー。違反でしょ?」

「だからってわざわざ俺を狙い撃ちしなくても……」

「狙い撃ちじゃないわよ。たまたま前を走ってた車がスピードオーバーだっただけ」

「違反者なんか他にも沢山いるだろう」

「違反する人って、いつも人のせいにするのよねぇ~」

「……」


 が、我慢だ。相手はサディスティック警察官。


「町の安全を守るのが私の使命だから」

「身内の安全は守ってくれないのかよ!」

「あれ? あんた他人でしょ? 拾われてきた捨て子でしょ?」

「こ、このマニアックパンツ野……」

「ん? 逮捕されたい?」

「……」


 隣にいたもう1人の女性警官が、

「仲いいわね」

 と笑っていた。


 たぶん、パトロール中に俺の軽トラを見つけ、「あれ弟だから、ちょっとからかってやろう!」的な発言をしたに違いない。田舎では知り合いの車種とナンバーは結構覚えているため、見つけた途端ウキウキが止まらなかったのだろう。己のカッコいい所を見せつけるために!



 俺が不服そうな顔をしていると、

「妹さん元気?」

 唐突に尋ねてきた。


「ああ、一応生きてるけど」

「そう、良かったわね」


 そう言うと、後部席から何やら怪しげなモノを取り出した。


「これあげる!」

「なにこれ?」

「スッポンの粉」

「す、すっぽん?」

「滋養強壮にいいんだって」


 そういやあ、親方がたまに飲んでたな。一度飲ませてもらったことがあるが、独特な味わいがあってちょっと苦かった気がする。それにこれって、どちらかというと精力剤に近いんじゃないの? そんなモノ飲ませて大丈夫かな? 


「ありがたいけど、気持ちだけ貰っとくよ」

「なにぃ! 受け取らない気ぃ?」

「いや、こんなの飲ませたら吐くかもしれないし」

「妹さんじゃないわよ。あんたによ!」

「はぁ?」

「看病するには体力が必要でしょ。これ飲んで元気つけなきゃ!」


 俺が飲んだら大変なことになりそうな。一つ屋根の下だぞ?


「本当に気持ちだけ貰っとくよ」

「受け取りなさいよ!」

「いらないよ!」

「受け取れ!」


 ドコッ。


 つま先で腹筋を思いっきり蹴られた。


 警官になっても何も変わってねぇじゃねぇか! それどころかますますタチが悪くなってるぞ!


 違反切符とスッポンを無理やり手渡され、

「じゃあ、またね」

 笑顔でパトロールに戻って行った。



 まさか、これを渡すために止めたんじゃないだろうな。

 違反切符まで切って……。


 俺を心配してくれるのは有難いが、やり方がエゲツないんだよ。

 今日の所はさくらんぼ柄のパンツに免じて許してやる!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ