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滞納者は魑魅魍魎?

 アパートを購入してから、やることが山ほどありとにかく忙しかった。


 現場が終わってからアパートへ直行。現場で余った材料を使って修繕。足りないモノはホームセンターへ。

 現場、アパート、ホームセンター、自宅を往復する毎日であった。


 全部をいっぺんに完成させることは出来ないので、まずは内装から綺麗にし、外装は手が空いた時にチョコチョコ直していくようにした。


 畳はフローリングにし、壁紙でアクセントウォール、バスユニットは知り合いから安く譲ってもらったB級品を使い、細部に至るまでビシッとした。

 古い例えて言うと、W浅野が住むような部屋に!


 元々、アパートの作りも素質もいいので、キチンと手入れをすれば見違えるように綺麗になる。

 そのかいあってか、一部屋完成する度に入居して貰えるようになった。

 初めて閲覧した人が「この部屋可愛い」と言ってくれた時には、心の中で「よっしゃ!」とガッツポーズした。


 やっぱさ、人に褒められるって嬉しいよね。成長するよね!




 その日、外壁を洗い、剥げた塗装をかき落とし、ペンキを塗る準備をしていた。

 すると、一番端の部屋から物音が聞こえた。

 ここを手掛けて半年くらいになるが、今まで音などしたことがない。住んでいる気配すらなかったので気にも留めなかった。


 そういえば以前、大家さんが「この部屋の人が家賃を滞納している」と言っていた。

 まあ、こういうボロアパートには滞納者もしくは事故物件は付き物である。

 大抵はあまり質の良くない輩が住みついて、「無職か生ぽ」というのがお決まりのパターンだ。

 大したやつじゃなければいいが、落ちぶれた玄人だったら面倒くさいことになる。


 うーん、明日パンチパーマでもかけてくるかな?

 そう思いながら作業をしていた。



 ガチャ。


 玄関のドアが開いた。

 パッと振り向くと……意外や意外、女性だった。


 手に小さなゴミ袋を持って足早に、しかも少しよろめきながらゴミ捨て場へ向かった。ダストボックスに入れ、また足早に、今度は外壁に手をつきながら戻ってきた。


 俺は二階の階段付近から見ていたが、部屋へ入る途中、俺と目が合いバツの悪そうな顔をしてドアを閉めた。


 パッと見だけだが、明らかに普通じゃなかった。

 体は細くガリガリで髪の毛は色素が落ちたような茶色をしていた。

 例えていうならミイラが墓場から復活した感じ。

 あの日、夢に出てきた魑魅魍魎にソックリなのである。


 物事にはあまり動じない俺だが、さすがに怖くなったので今日の仕事は中止し、軽トラの寅ちゃんをホイルスピンさせながら帰った。



 家へ帰ると、己の部屋で健康的な女が空手の型を練習していた。

 ある意味こいつも魑魅魍魎の類なので声もかけずに黙って寝た。


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