病弱な妹と頑丈な俺
病名は急性上気道炎。世間一般でいうと風邪?
あの後、寒さに耐えながらTVを観ていた。だが、どうにも耐えがたい寒さで気分が悪くなり、自分の部屋へ行き布団を被った。
毛布に包まっていればそのうち暖かくなるだろうと思ったが、次第に寒気が襲って来て熱っぽさを感じた。
「風邪引いたかな」と思い、安静にしていたのだが……。
しばらくして尋常じゃないダルさを覚え、熱がガンガン上がった。体の節々に痛みを感じ、息をするのも苦しくなった。頭痛が酷くて目眩がし、助けを呼ぼうとした時、俺が現れた。
という経緯だった。
緊急入院は思ったように熱が下がらず、とりあえず大事を取っての判断だったらしい。点滴を受け2日後にはケロッとした顔で帰ってきた。
心配させるなよ、バカ!
その日のうちに緊急家族会議が開かれた。
決議内容は……。
・室内設定温度は27度を保つこと。
・妹がいる場所では彼女の好む環境を整えること。
・もし寒いと言ったら、俺が妹を温めてやること。
かなり不利な条件だったが、入院されるよりはマシである。
問答無用の決定事項が伝えられたあと、家中のエアコンを26度設定にされ、温度調節スイッチはテープでガッチリ固定されてしまった。
1つだけ言いたい。
妹は分るさ。入院されては困るし、みんなが守ってくれるから安心だろう。
君たちもマシさ。家族一丸となって困難に立ち向かえば絆も深まるだろう。
ただ俺はどうすればいいんだ?
もし俺が熱中症になったとして、そのテープは剥がしてくれるのかい?
妹はとにかく体が弱かった。
季節の変わり目には必ず風邪をひく。少しでも変なものを食べれば腹を壊す。校庭で整列している時に貧血でぶっ倒れる。そして学校を休む。
甘味料バリバリのグレープジュースを飲んでゲロを吐き、ゲロを吐いた自分にビックリして熱を出す、といったウルトラCまでやってのけた。
……ってか、弱すぎだろう。
食事も猫の飯くらいしか食べないので、全体的に華奢だった。
両親も心配して大事に育てたため、ナイーブなハート、ガラスの体になってしまった。
一方、俺は健康優良児を地で行く頑丈さで、1年を通して半袖短パンというバカ丸出しの格好をしていた。
風邪も引かない、腹も壊さない、学校も休まない、意思は超合金より硬い。
鉄のハートに鋼の体を持つ俺は、クラスメイトから鋼鉄神ジーグと崇められていたほどだった。
同じ兄妹でこうも違うのか。
もしかして、母さん? もしかして……。




