再登場
コンコン。
「早く出てよ」
「しばらくお待ちください」
「……」
ゴゴゴッゴン。
「出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ」
「うるさいうるさいうるさいうるさい」
「……」
ガンガンガンガンガンガン。
「早くしろ。腹が暴走行為をはじめてるんだよ! パラリラいってんの!」
「やかましー--い!」
カラカラ。ジャァーーーー。ガチャ。
「ダメ人間!」
「便所女!」
バタン。
暴徒は沈静化され、街と腹には平和が戻った。
姉が帰ってきた。
研修を終え、その後地方での勤務を何年かこなしていた。
本人が地元勤務を望んで異動届を出しており、今回ようやく念願がかない地元勤務になったらしい。
もちろん親方とおかみさんは大喜び。
親方なんぞは、現場でもニタニタし、サイズは間違えるは余計なところにまでビスを打つわで、俺の手間が増えまくっていた。
親方、それは娘が帰って来たからじゃないよ。年だよ、年!
一方、俺は例のアパートを購入した。
別に考えがまとまったとか理由が見つかったという事ではない。
神社でボーっとしている時、ご神木から天狗が下りてきて「買えばぁ?」と言ったから。
何がどうなるかは分からないが、やるだけやってみる。ダメだったらやり直せばいい。
腹をくくって「大家さん、この物件譲ってください」と言った。
「理由が見つかった?」
「いいえ、まだですけど、やってみて考えます」
「ハハハハ、旦那の若い時にそっくりね」
そう言って、リフォーム代とほぼ同じ金額で譲ってくれた。
家へ帰って親方にその旨を告げると、
「自分でやるなら金がかからずに済むな。それでも1人で全部終わらせるには1年以上はかかるぞ」
サラッと気が遠くなることを言われた。
「ですよねぇ~。やること多いっスもんね」
「修理箇所が多岐にわたってるから、何でも屋をやんなきゃ収まんねぇな」
「みんなに教えてもらってますから、その辺は大丈夫っス」
「お前、元々手先器用だしな」
「たまに親方も手伝ってくれます?」
「いくらで?」
「時給500円でどうですか?」
「お前、クビにするぞ!」
それを聞いたおかみさんは爆笑し「あんた、隆志をクビにしたら仕事無くなるよ!」と煽っていた。
大変だろうが何だろうが、購入しちゃったものはどうしようもない。
「よし! やるか!」
布団の中で静かに気合を入れた。
熱く燃えている俺の横を、バックプリントに熊の顔が描かれたパンツを履いてウロつく姉。
なあ、君は今年で何歳になるんだ? というか、どこで売ってるんだ?




