我が家は妹を中心に回っている 2
いつだったか忘れたが、何日も猛暑が続いた時があった。
外気温は連日40度を超えるという異常気象だった。
外で40度ということは家の中は43~45度に達すると思う。
「こんなの人間の生活温度じゃねぇ!」
そう叫び、夏休み中だった俺はリビングのエアコン設定を18度まで下げ、ソファで快適に昼寝をしていた。
ちょうどそこへ妹が帰ってきた。
ただでさえ寒がりなヤツである。部屋に入るなり寒いを連発し、あろうことかエアコンを消してしまった。
しばらくは冷やされた空気で快適だったが、そのうちジワジワと室内温度が上昇し煮沸されていく。
小1時間もすると全身から汗がダクダク流れてきて鬱陶しい。
砂漠でラクダと鍋焼きうどんを巡って奪い合いのケンカをしている夢で目が覚めた。
「あっっつー------い」
「起きた?」
呑気にお菓子とジュースをほおばっている妹。
「なんだよ、この暑さは!」
「え? そう?」
風呂上がりかよ!と思うほど清々しい顔をしている。
こいつは頭がおかしいのか? それとも温度センサーが故障してるのか?
俺はすぐさまリモコンを取って確認した。
完全にOFFであった。
「お前消したろ」
「うん、寒かったから」
「寒いじゃないよ。焼け死ぬほど暑いだろうがっ!」
そう言って再びスイッチを入れた。
「ちょっと、やめてよ」
妹はリモコンを奪い取ろうと飛びついてきたが、身長差があるうえ、まだまだちびっこの彼女が届くはずもない。
しばらく奪い合いが続き、それでも必死で抵抗してくるので、俺は己のパンツの中に突っ込んだ。
「ほら取ってみろ!」
「はぁ??」
「どうだ、取れまい」
「……もういい!」
さすがにこれは諦めたようだ。
まさか兄貴のパンツに手を入れるわけにもいくまい。
妹はブスッとした顔をしながらTVを見始めた。
俺は気にもとめず、股間のリモコンをさすりながら北極熊のように快適に過ごした。
再び寝てしまったらしい。
今度は京都の三条河原で窯ゆでにされる夢を見た。
目を開けると妹はすでにおらず、代わりに母が仁王立ちしていた。
「こんな温度で寝てたら体に悪いでしょ!」
「消したら暑くて寝てられないよ」
「何度も言ってるでしょ。設定温度は26度だって!」
「それじゃ石川五右衛門になっちゃうよ」
「なによ石川五右衛門って」
「……いや、別に」
俺は快適に寝ているだけなのに、なぜみんな怒るのだろう。
別に悪いことをした覚えもないのだが……。
ところで母さん、俺のパンツに手を入れた? ダメよ、いくら親子でも恥ずかしいからっ!
その後、夕飯の時間になっても妹が下りてくる気配がなかった。
「隆志、ちょっと呼んできて」
「へーい」
軽い感じで返事をし、二階へ上がって妹の部屋をノックした。
「おい、ご飯だってよ」
返事は返ってこなかった。
面倒くさいと思ったが、もう一度「おーい、メシ!」と呼んだが音沙汰なし。
「なんだよ。寝てるのか?」
そう言ってドアを開けた。
部屋は真っ暗だったがベッドはこんもりしてるので確かにいる。
「おい、起きろ。ご飯だってよ」
体を揺さぶると「うぅぅ~」と、小さなうめき声が聞こえた。
「ほら、いつまで寝てるんだ。ご飯の時間だぞ」
「ふぅーふぅー、すぅー--ふぅぅぅー-」
吐き出す息が不規則で苦しそうである。
「おいどうした?」
何だか様子がおかしいので明かりをつけると、顔が真っ青で唇が紫色に変色していた。そして毛布に包まってガチガチ震えていた。
俺の脳が緊急事態宣言を発令し、急いで母に報告した。
「ひ、寛子。大丈夫?」
母に抱きかかえられて病院に行った妹は、そのまま緊急入院することになった。
これって俺のせい?