田舎で出会った閻魔様2
息を整え、再び俺の元へ戻ってきた棟梁らしき男は、
「本当にすまなかった。とにかくケガがなくて良かったよ」
俺の肩に手を置きニコッと笑った。
何だか凄くカッコよく思えた。
その後、倒れた木材を黙々と片づけ始めたので、
「あのう、すいません。よかったら俺も手伝いますよ」
「いや、いいよ。これ以上迷惑かけらんねぇから」
「大丈夫です。俺ヒマですし」
一緒に片づけを手伝った。
実際に持ってみると分かるが、木材というのは想像以上に重い。長ければ長いほど取り扱いが難しく、バランスを取るのが大変である。
棟梁が2~3本をひょいと軽く持ち上げているのに対し、俺は1本でヨロヨロし、角をあちこちにぶつけまくっていた。
「アハハハ、若いのに力がねぇな」
「……すいません」
「謝ることはねぇよ。木材扱うの初めてだろ?」
「はい。箸以外扱ったことないですね」
「ガハハハハハ、お前面白いな!」
片づけが終わって少し休憩したあと、
「もう今日は仕事やめだ。おまえ腹減ってねぇか?」
食事に誘ってくれた。
さっきから紅ショウガのたっぷりのった牛丼のことしか考えてなかったので、
「はい。メチャクチャ空きました」
そう言うと、
「じゃあついて来い。手伝ったお礼にたらふく食わせてやる!」
俺を手招きし、駅前の牛丼屋へ連れて行ってもらった。
「お前、この町の者じゃねぇな。どこから来た?」
食事をしながらここに来た経緯を説明すると、
「……そうか」
棟梁らしき男はしばらく考え、少し間を置いてから、
「……おい、どうだ。俺んちに来ないか?」
「えっ?」
予想もしない告白をされた。
突然の告白宣言で返答に困っていると、
「遠慮はいらねぇぞ! ハッキリ言えや!」
そう言って笑った。
「でもそれじゃあ、ご家族に迷惑がかかるんじゃ……」
「俺んちは家族3人だし、家も割と広いし。それに余ってる部屋があるから大丈夫だ」
「うーん」
「いくら悩んだって行くとこねぇんだろ?」
「まあ、そうですけど……」
「それにさ、さっきのバカが辞めちゃったろ? いま忙しくて人手が足りないんだよ。もしお前が手伝ってくれるなら置いてやってもいいぞ。どうだ?」
「……」
「ちゃんと賃金も出すぞ。少ねぇけどなw」
願ったり叶ったりである。
住む場所を提供してもらい、お金まで出してもらえる。
モノ作りが好きな俺にとっては大工仕事も興味がある職種だ。自分で家を建てるなんてロマンあるじゃないか!
「わかりました。よろしくお願いします」
「よし、決まりだ。じゃあ、これから家に行くぞ!」
そうして親方の家へ居候することになった。
捨てる神あれば拾う神あり。
この町に来てクソ会社にフラれ、木材で命を奪われそうになり、金髪男が辞め、いい親方に出会った。万事塞翁が馬である。
ちなみに、初めて俺を見た姉の一言は「どこで拾ってきたの? この小汚い犬」だった……。
お前の大切にしている思い出の写真。それがヒゲ面モヒカンになるのは時間の問題だぞ。
もちろん油性マジックでな!




