地域密着の雪まつり
いくら口先で言っても行動に移さなければ意味がない。それは絵に描いた餅である。
成功するしないは別にして、やるか、やらないのか、だ。
やらないんだったらとっとと諦めて寝る。やるのであれば細部まで調べつくしトコトンやる。
これが俺の信念だ。
俺は己の信念を貫くべく、おじさんちの子供たちと一緒に庭の雪をすべて雪だるまにした。
それでも飽き足らず、ついでに隣近所の玄関先にも雪だるまを大量に作った。
たまたま通りかかった人はギョッとしてたが、そんなのは関係ない。
ごぼう、ニンジン、ピーマン、海苔、わかめ等を使って顔を作り、小枝、すりこぎ、手袋、帽子などでアレンジを施した。
一心不乱に制作している俺を遠巻きに見ていた近所の子たちだったが、
「面白そうなことしてるね」
ある子が話しかけてきた。
「おう、一緒に雪だるま作ろうぜ!」
そのたった一言で友達が友達を呼び、
「僕もまぜてよ」「私も」「俺もやる!」
町内中の子供たちが参加してくれた。
子供は本当に素直である。頭にバカが付くくらい純情である。
他人だのテリトリーだの、利害だの損得だの、そんな薄汚れた考えは微塵もない。
楽しいと思ったら何でもやる。面白いと思った事に理由はいらないのだ。
みんなが集まると賑やかさがさらに増す。
スプレー缶で色付けする者、いらない洋服を着せる者、プロ顔負けの造形を施す者……。それぞれが雪だるまに好きな思いを描いた。
丸2日かけて町内中に雪だるまを制作し、その数200体を超えてたと思う。
大通りから住宅街に入って大通りに抜けるまでの間、色とりどりの雪だるまがウエルカム状態で並んでいた。
これぞ地域密着型「青森雪まつり」である。
誰からも注目されない、ニュースにも流れないが、作った俺らは大満足であった。
余談だが、それから何日後かにテレビ局が来て本当にニュースになったとか。
その後、迎えに来た母と共に周辺住民に丁重にお詫びをし、俺は首根っこをつかまれながらおじさんの家を後にした。
別れ際に「隆志君、楽しかったよ」「また来年もやろうね」と近所仲間から応援メッセージが届き、それに対してVサインをすると、げんこつで殴られた。
こうして俺の壮大な計画は大成功を収めた。
心の中で「来年もやるか!」と反省することなく、さらに良からぬ計画を企てながら自宅へ帰った。
自宅に戻ったら戻ったで、帰るそうそう親父に頭の形が変わるほど叩かれ、それを見ていた妹が恐怖でワンワン泣き出してしまった。
ここは修羅の国なのか?




