はた迷惑な大計画
天使と女神を同時に愛し、二股で悪魔に魂を乗っ取られつつ、青森の親切と優しさが詰まったバスに揺られること20分。自宅から約14時間かけておじさんの家へ無事到着した。
「おじさ~ん。あそびにきたよ~」
玄関を勢いよく開けると、なぜかおじさんがヤレヤレという顔で立っていた。
「こんにちは。君江の息子の隆志ですぅ~」
「まったく、隆志ですぅ~じゃないよ。相変わらず呑気なやつだな。いいから上がれ!」
「お邪魔しま~す」
居間に案内され、煙突が突き出たでっかいストーブの前に座った。
「おおっ、隆志君、元気?」「久しぶりぃ~」おじさんちの子供がニコニコしながら話しかけてきたが、
「ちょっとお前たち、少し静かにしろ」
おじさんは子供たちを制止し、神妙な面持ちで切り出した。
「おい隆志、お前勝手に家を出てきたろ」
「いや、ちゃんと出かけるって言ったよ」
「うそつけ。お母さんの許可を得てないだろう」
「うそじゃないよ。行く先はちゃんと伝えたよ?」
「お母さんはいいって言ったのか?」
「うん。早く帰ってきなさいって」
「……」
フゥーっとため息をつくおじさん。
実は昨日の夜、母からおじさんに電話があったらしい。
いつものようにベッド潜り込もうとして俺の部屋に入った妹だが、そこに俺の姿はなかった。
焦った妹は、当然のごとく速攻で母に報告。
「まあ、隆志のことだからいずれ帰ってくるでしょ」と高をくくっていたが、いつまで経っても帰って来ない。
徐々に不安が募り「もしかして交通事故?」「まさか誘拐?」等と焦りを抱き、捜索隊の出動要請を・・・と考えたその瞬間、俺が出がけに言った「青森」という言葉に母が気づいた。
「まさか、あの子……」
で、おじさんに連絡が入ったという。
さすが母である。俺の行動原理から思考回路を分析し真実にたどり着く。コナンも真っ青な名推理だ。
もし俺がホームズならこう言うだろう。
初歩的なことだよ、ワトソン君!
「あっ君ちゃん? 俺、浩司だけど。君ちゃんの言った通り、いましがた隆志が家に来たよ」
おじさんと君ちゃんが何分か話した後、受話器を俺に向けて「ほら!」と言った。
「あっ、お母さん? どうもお久しぶりです」
「久しぶりじゃないわよ! あんたなにやってるのよ!」
「何って、おじさんちに遊びに来てるんだけど」
「遊びに来てるじゃないわよっ! 誰が行っていいって許可したのよ!」
「……」
「もういい加減にしなさい! とにかく明日迎えに行くからねっ!」
「いや、明日はちょっと計画が……」
「何が計画よ。お母さんが行くまでおじさんの家でジッとしてるのよ、分かった?」
電話口でキャンキャンする母を見かねたのか、おじさんは受話器を受け取ると落ち着いた口調で君ちゃんを説得していた。
「まったく。隆志、お母さんが心配してるぞ? あんまり無茶はよせ!」
怒るに怒れず、俺の頬を軽くピシャっとやった。
俺の計画はこうだった。
あのニュースを見て「俺に手伝えることはないか?」と考えた。
が、子供に出来ることなどたかが知れてる。けど何かしたい。
その時、雪まつりのニュースが流れた。
雪まつり+楽しめる+雪かきの苦労が減る=ナイスアイデア
単純明快にしてはた迷惑な大計画である。




