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年齢は単なる数字だ

 今日、俺こと増田隆志は満60歳を迎える。

 自分で言うのもなんだが、見た目はそこそこ若いと思っている。

 まあ、30代などと図々しいことは言わないが、気持ち的には昨日高校を卒業したばかりのヤングガイだ。


 一般的には60歳=定年退職=老後。

 第二の人生として再就職で新たな道を歩むか、縁側で盆栽でもいじってほのぼの暮らすという隠居生活を思い浮かべる。

 俺もこの歳になるまでは、60を過ぎたら、庭に真っ赤なバラと白いパンジーでも植えよう、子犬の横にはあなたがいて欲しい。そう思っていた。

 ところが、気力は全開バリバリである。枯れるどころかますます活力がみなぎってくる。


 ニュースで「60歳 無職の男 少女にワイセツ行為」のテロップを見て、

「うわ、ジジィがいい年してなにやってるんだよ!」と真顔で思ってしまう。

 だが、よく考えるとタメ? 無職? 俺のこと?


 高校球児を未だに年上のお兄さんだと思い、会社の部長と聞くと目上の立派な人を想像してしまう。

 これは俺に限ったことじゃないと思う。

 嘘だと思うなら年取ってみ!




 先ほど、妹夫婦と孫が作り笑顔を浮かべながら遊びに来た。


「お兄、おめでとう!」

「何が?」

「おじいちゃん、おめでとう!」

「だから何が?」

「隆志さん、おめでとうございます!」

「……で、その心は?」


 明らかにおばあちゃんの原宿的なところで、地蔵さんを洗って、ウナギを堪能し、家族そろって楽しんだ後、ついでに買いました!的な紙袋を手渡された。


 中身は大体想像がつく。赤い何かだろ?


 しぶしぶ袋を開けると、案の定、赤いちゃんちゃんこと頭巾が入っていた。


「還暦おめでとう!」


 声を揃えて祝福された。


 別にめでたくもなんともない。まだまだ気力体力ともに充実していて、これから何をして遊ぼうか、この先どうやって人生を楽しもうか考えている俺からすると、還暦の祝杯をあげられたら何とも切ない気持ちになる。


「いやだよ、こんなの着るの! 俺はどっちかというとヒョウ柄が好みなんだよ」

「なに言ってるのよ。せっかく買ってきたんだから着てみなさいよ!」

「いや、だから」


 着るのを渋っていると、


「おじいちゃん、似合うから着てみなよ!」


 孫に言われた。


 世のバカな男共は「孫」と聞いただけでデレーっと目じりを下げ、「こずかいやろうか」と金に物を言わせて操ろうとする。

 だが俺は違う! たかだか孫ごときに言われたところで自分の信念を曲げるつもりはない。

 

「いいから! ね、おじいちゃん!」


 そういう言い方をするんじゃ……俺は孫なんぞ何とも思って……。

 か、可愛いぃぃー-。


 半ば強制的に袖を通され、頭にスッポリと頭巾を被せられ、無理やりみんなの前に立たされた。

 これは新手の羞恥プレイなのかい?


「うわー似合う!」

「おじいちゃん素敵!」

「隆志さん、とっても似合いますよ!」


 家族中の称賛を浴びながら恐る恐る鏡をのぞき込むと……。

 そこにはチンドン屋も大爆笑しそうな頭のゆるい老人が笑っていた。


 なあ、これってダメな大黒様じゃねぇかよ!


 よし決めた。俺は今から床屋へ行ってモヒカンにしてくる。そして来年はスカル柄のちゃんちゃんこを着てロックンロールしてやるぜ!



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