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惡ノ宴

作者: ケツアゴ方天画戟

ハロウィンなので衝動的に書きました。ほんへ?……ハイ

今日は10月31日、ハロウィンだ。休日なのも相まって、夜とはいえ街のそこかしこで何かしらのキャラのコスプレをした男女や、可愛らしい仮装(おめかし)をしてお菓子をねだる子供たちの姿が見える。

で、そんな街並みで俺と友人4人も仮装して楽しんでいる訳だが…


「…寒っ」


「おうおうどうしたァ奏弥、早く家帰ってソシャゲのイベントやりてぇって気持ちダダ漏れてんぞ」


「んな訳、あるっちゃあるけど…予想以上に寒くてな?若干萎え気味なのはそう」


「でも、折角だから皆で仮装して遊ぼうって言ったの奏弥じゃんー?主催者が弱音吐いてどうするのさー」


そう言って俺の事をからかってくるのは健一と梓沙、それぞれ狼男と吸血鬼の格好をしている。確かに仮装しようぜ!って言ったのは俺だけど、俺だけどさぁ…


「ミイラのコスプレ結構寒いんだわ。下半身はともかくとして、上半身の肌見えてるところ地肌だからな???」


「10月終盤に上半身半裸とかギリギリ正気の沙汰じゃないわね。まぁ、クジ運に見放された奏弥にはお祈りメールを送っとくわ」


「何のお祈りなんだよ…」


「それはアレだよ、次の前世をお祈り的な?」


「来世じゃねぇのかよ」


お祈り煽りしてきやがった2人は悠音と浩輔。こっちは小悪魔とフランケンシュタイン、口撃の威力が小悪魔どころじゃないのは気のせいじゃないだろう。

そしてさっき出たように俺はミイラ。全員で1つずつクジ作ってランダムに選んだ結果なんだが、誰だよ上半身地肌+包帯のミイラとか細かい指定まで書いたやつ。やるなら見栄えする梓沙か悠音の元にクジ渡ってくれよ…書いたの俺だけど。なんで自分のが回ってくるんだ?


「ハックショァ!…いやマジでキツい。上着着てええか?」


「奏弥にはミイラとしてのプライド無いんか?」


「誉はドブに捨てました」


「うーんこの。霧○の真似しようとして失敗したオタク君だよそれじゃ」


「なんだァ、てめェ…?」


「奏弥、キレた!!」


「○子過激派だ」


「お、梓沙梓沙、あっちで限定スイーツ売ってる」


「ほんとー!?行く行くー!」


男3人でついでに後退のネジを外そうとしてたら女子2人はスイーツを買いに行ってしまった。にしても女子2人が仮装しながら楽しそうにスイーツを食べている様子、うーん……


「てぇてぇ」


「オタク君さぁ…」


■■■


そんなこんなで全員楽しんで、時間も遅いしさぁ帰ろうとなり解散してしばらくした頃、誰かから電話が来た。


「はいぃもしもし?」


『もしもし?悠音よ』


「あぁ、あぁ?悠音?珍しいな電話してくるなんて」


悠音は携帯を持ってはいるが、それで何かをしたことが殆ど無い。強いて言うなら今のように電話するくらいだけど…家族の人以外にしてるのは初なんじゃないか?なんか変な気分になるな??


『まぁ、そうね。とりあえず要件を言うと、今から暇かしら?家に来て欲しいんだけど』


「んぇぁっ!?」


『どうしたの?』


「え、あぁいやナンデモナイヨ???」


やっべぇめっちゃ変な声出た。仕方ないだろ彼女いない歴=年齢の陰キャオタクなんだから!とかいう謎の言い訳も浮かんだが、現実はそんな突然ラブコメみたいな展開にならない。


『…?で、暇かしら?』


「まあ、暇だけど。特にやることも無いし、そっち行けるぞ」


『そう、ちなみに内容は来て貰ってから言うわ』


「お、おお。分かった」


『ん、じゃあまた後で』


悠音がそう言うと電話は切れた。

えー…えーー、どういう展開?俺何かやらかした?なろう系主人公とかそういうのじゃなくてマジで何かやったか?アレか、てぇてぇ発言が何かの琴線に触れたか。でも行くった言った以上行かなきゃダメだよなぁ…


「…とりあえず行くか」


俺は考えるのをやめて悠音邸に向かうことにした。時刻は夜の12時前、数時間前までの騒がしさは幻のように無くなっている。


▼▼▼


「デカいなぁ…」


家から歩くこと10分、上り坂の終わりにでかでかと存在する悠音邸の門前に到着した。彼女の家は中々のお金持ちで、この街でもトップクラスにデカい豪邸が建っている。なんなら何故か敷地内に小さな教会まである、入った事ないから分からんけど、キリスト教か何かか?

とりあえずチャイムを鳴らそう、不法侵入者扱いはされたくない。


『どちら様ですか?』


「えー、悠音さんの友人の…」


『奏弥様ですね、只今開門致しますのでお待ち下さい』


「あ、はい」


ダンディな声した人が応対してくれた。執事さんだよなぁとか考えてると門がひとりでに開いていく。そこにはマジでいかにも執事~な感じの服装をしたおじさまが立っていた。とは言っても何度か来たこと自体はあるため名前も知っている。


「こんばんは、晴義さん。すみませんこんな夜遅くに…」


「いえいえ、このような事もございましょう。特に今晩は…」


「あー、まぁ、ハロウィンの夜ですからね。つってもなんか小さいパーティ的なものだと思うんですが」


俺がそう言うと、晴義さんは少し表情が固くなった気がした。でも…気のせいだろうな、俺が変に警戒してるだけか?


「そう、ですね。ではご案内致します」


「ありがとうございます」


案内されるなか、夜12時を告げる鐘が街に響いていた。


▲▲▲


「こちらでございます」


「はぁ…ここって、教会、ですよね?」


俺が晴義さんに案内されたのはあのよく分からん小さな教会の前だった。ここで何かやるのは初めてだから何が起こるのかだいぶ気になる、思わず晴義さんに聞いてしまった。


「えぇ、教会でございます。では、私はこれで…」


「ちょ、ちょっと…行ってまった」


ここで何をやる予定なのかなどを聞きたかったのだが、すぐにどこかへ行ってしまった。なんか、なんだ…?違和感あるんだけど、もしかしてドッキリ企画的な?まぁいいか、とりあえず扉開けてみないと分からん。

扉に手をかけて力を少し入れると、それだけで扉は簡単に開いた。微妙に薄暗い教会の中は少し頼りない光量のロウソクで照らされていて、演説台みたいな所には悠音だけでなく健一、梓沙、そして浩輔もいた。ドッキリ企画ではなさそうだな?やるとしたら誰もいないとかだろうし。


「よお、待ってたぜ。とりあえず水でも飲めよ、ぼちぼち疲れただろ?」


「すまんな。…あー、これからなんかやる感じか?遅れたとしたらすまん」


「気にしてないわよ、距離的にこれくらいの時間になるのは分かってたから」


「奏弥の家、ここまではちょっと遠いもんねー」


「僕たちの家がかなり近いってのもあるけどね」


俺以外の3人はここまで徒歩3分くらいの位置に家がある。近くだとすぐ行けて良いなぁとは思うが、そもそも行く用事自体があまり無いから別に超羨ましいとかでもない。というかアイツらはなんでずっとあの場所にいるんだろうか。


「それで、何をするんだ?徹夜で雑談でもするのか?」


「いや、違うわよ。今日はこの街の秘密を奏弥にも話そうかと思うの」


「この街の…秘密?何?古戦場痕だったりするのかここ?それとも徳川埋蔵金的なのが…」


「違ぇぞ」


「夢を見させてくれねぇ!」


健一の無慈悲な言葉で俺のちょっとした希望(?)は粉砕された。若干残念に思ってると、今度は浩輔が口を開く。


「僕が説明するよ。理由も知ってると思うんだけど、この街、夜12時にいつも鐘が鳴るよね?」


「あー、確かに鳴るな。昔ここに出た化け物を封印するためだったか?」


「そうそう。で、今夜はそれに関することをするんだ」


「はぁ…ってことはアレか?ゴースト○スターズ的n「不正解ー」…(´・ω・`)」


俺のちょっとした希望その2は食い気味に否定された。じゃあなんだっていうんだ…?


「何をするんだって顔ね。そんな奏弥にはこれを飲んでもらうわ」


「えっ、何それ」


「"ふしぎなくすり"ってヤツだな」


「まずいですよ!」


おいおいおい、友人全員が俺をヤクの道に進ませようとしてないかこれ。これ友人と言えど流石にダメだよな、よし、俺はNOと言える男だ!


「いや、流石にヤクは…」


「まあそう言うと思ってさっきの水に混ぜてたんだけどねー。そろそろ効き始めるよー」


「は??????」


俺の人生終わった…このままヤク漬けにされるのか?いやでも1度でやめることさえ出来ればこっちのもんだ。俺は薬物になんか屈しねぇ!…ん?なんか視界が変に…


「なぁ、なんか視界が歪んでるんだけどこれ絶対ヤクの効果だよな?」


「そうね。でも大丈夫よ、少しものが()()()()()ようになるだけだから」


「うっそだァ…ぁ?なんか月が紫に…」


やべ~~~色彩の判断に異常出始めてんじゃん、教会の窓から見える月が変な色してる。淡いとはいえ紫色してる訳無いやん…てかアイツらの姿もなんか―――は?


「え、お前ら早着替えの特技持ってたっけ?」


「持ってないけど?…あぁ、そういうことか。なるほど」


「いや何がなるほどなのぉ…?」


月から視線を戻したら、4人が数時間前に見た仮想の姿になってた。いや、なんかあの時よりも段違いにリアルな気がする…えっもしかしてそういうこと?


「こういう形のドッキリだったら早くそう言ってくれよ。マジで心臓に悪いから…」


「ハハハ、もう見えてるみてぇだな?でもまだ疑ってるだろ?」


「当たり前だろ、お前らが伝承通りのバケモンだなんて…なぁ?会話ができることに安心はしてるけど」


「うーん、じゃあこうすれば疑わない、かなッ!」


バキャアッ!!


「………」


浩輔…いや、浩輔って呼んでいいのか?とにかくソイツが突然近くにあった木の長椅子を片腕で持ち上げて、とんでもない速度で俺の後ろの壁にぶつけやかった。後ろからしたとんでもない破壊音的に一撃でぶっ壊れたんだろうが、衝撃的すぎて声が出せないし振り返りたくもない。


「ちょっと?物を壊していいとは言ってないわよ?」


「あぁ、ごめん。力の制御がやっぱり、ね…」


「とにかく、これでほんとだって信じて貰えたよねー?」


…ヤバい。その感想と冷や汗しか今は出てこない。どうする?というか何が目的なんだコイツら、俺を生贄に捧げるとかそういうオチだろこれ。それに刃向かうためにバトる…馬鹿言え、今の膂力見てそれ言えるならそいつは範馬の家系だ。

つまり俺が取れる選択肢は1つしかない。いつまでもこれからも愛され続ける最後の選択肢―――!


「ッ!」


「あっ!?奏弥てめェ逃げんな!」


「この状況で!逃げない一般人が!いるかってんだよ!!」


そう、逃走だ。あぁやっぱり長椅子粉砕されてら…じゃなくて、逃げるにしたってどこまで逃げる?俺の家か?だが家に行ったところでアイツらにバレるのは分かりきってるし、かと言って他人の家に転がり込むなんて真似はできない。もう12時過ぎてんだぞ、迷惑にしかならん!

そう考えながら悠音邸の門を出る直前、人影が急に目の前に現れた。


「オイオイ、どこ行くってんだよ?まだ話は終わってねぇぞ?」


「ウッソだろお前…」


人影は狼男(健一)だった。俺の方が色々先手取ったはずなのになんで回り込まれてるのかは…まぁ、狼男だからだろう。身体能力クソ高そうだしあの種族。


「話聞かねぇってんなら、お前をとっ捕まえてやるよォ!」


「ハァ゜ッ!?うぉぉぉイィ!?石畳ぶち砕けてんじゃねぇか!!」


とっ捕まえる宣言とともに振り下ろされた腕を死ぬ気で避け、たら振り下ろした先の石畳が粉砕された。え?捕縛(生死問わず)?


「ッハハ、よく避けたなァ!」


「クッソ……!」


またとっ捕まえに来るけどそれもどうにかこうにか振り切…れねぇ!素の身体能力が高すぎんだよ!なんか無いかなんか無いか…無いんだな、これが。

いや、打開策は無いけど隠れ先は浮かんだ。そこに行けるかどうかの壁がクソデカい訳だがどうするか。


「ゥオラッ!」


「ッ…!」


「おめェ、意外と身のこなし軽いじゃねぇの!」


「俺も、なんでこんななってるのか、分かんねぇ、んだよっ!」


とりあえず目的地まで走りながら避けながら行くしかない。回り込んで振り下ろしてきたヤツの腕の下を潜って股下スライディング、振り返りざまの一撃は立ち上がる勢い使って前方に飛び込み、追撃の蹴りを、蹴りィ!?分かるかァこなくそ!!


「なっ!?」


「えぇぇえなんで上手くいってんだよ!?」


ヤツの蹴りに合わせて足裏を合わせて、その推進力でさらに進む。なんで成功したのか分からんけど逃げれるなら重畳!更に進むために1歩踏み出し、かけて、足が出かけた場所に槍が突き刺さった。アスファルト貫通してたりなんで槍があるのはもうこの際気にしない。また走る。


「あら、避けるのね」


「もうヤダ…なんで空飛んでんだよ小悪魔だからか」


「理解が早いわね」


「でも、一撃で仕留めるつもり、だったろ?」


「誰が1発勝負だと言ったかしら?」


そう言いながら片腕だけで何かを手繰るような動きをすると、小悪魔(悠音)の元にさっきの槍が戻ってきた。何?ここだけ異世界になったの?俺の日常返して…


「せいっ!」


「うわ怖ァ!?もう捕まえるって体でッ、殺そうとしてるよな!?」


「大丈夫よ、死にはしないわ」


「それ死なないってだけですよね悠音さん???」


もう自分かどうなってるのか分からん。分からんが何故か掠りすらもせず走り続けてられるのは事実だ。なんだなんだ俺もウ○娘的な存在になったか?この状況でこのジョークはシャレにならんがな!


「てかお前もお前でぇ!なんでずっと、追いかけてくんだよおぉォ!?」


「そりゃおめぇ、捕まえられてないから、だろッ!」


「マァァァジ勘弁してくれもう!!」


「じゃあ大人しく捕まりなさいよ、っと」


「つゥッ、捕まったら、何されるか分かったもんじゃねぇんだよなぁ!?」


当然のように追いかけてくる健一もセットで、当たったらオワタ式の槍投げが襲いかかってくる。何このクソゲー…正面に来る槍を1時の方角に避けたらそこにまた振り下ろされる腕を掴んで跳び箱みたいに跳躍、着地先に投げられる槍も掴んで地面に突き刺して、それを踏み台に更にジャンプ!あの薬の効果なのか知らんがやけに体がよく動くなぁ!思考も働くなぁ!


そして目的地まであと3分の1くらい、ここを凌げば俺は助かるんだ!とか思ったからいけなかったのだろう。前髪が邪魔で頭を振った直後、槍でも爪でもない何かが俺の頬を掠めた。


「痛っ!?遂に攻撃見えなくした、訳じゃないねうん!ずっと攻撃してきやがるし!」


「これでもダメかよ?…良いな、そろそろか」


「なんてぇ!?」


健一がなんか言ってたけど聞き取れなかった。てか掠めたやつ何かと思ったら砕けてた石畳じゃねぇか!誰だよどっかの緑色バスケマンもビックリな超遠投かましたの、いやもうアイツしかいねぇけど!アイツ昔っからゲームでもリアルでも遠距離狙撃得意なんだよ!弾道計算どうなってんだ?!


「浩輔だ!!浩輔だな!?浩輔の仕業だろ今のォォ危ねぇ!現実はァ!弾幕アクションゲーじゃ!ありませぇええええん!!」


つーーかこんな大声出してるのに近所の誰も反応しないっておかしくなぁい?「いつまで騒いでんだ!!」って言ってくれる雷オヤジの1人や2人はいても良いだろ!


「死ぬ、マジで死ぬ!」


「死なないためにも早く捕まって欲しいんだけどね?」


「ねぇもう否定する気すらないじゃん、このままだと殺すって遠回しに言ってるじゃん…!」


避けて避けてまた避けて、たまにクソ正確に狙ってくる石礫は財布に入ってた1円で弾き飛ばす。金が勿体ないなんて言ってられるか、金より命だ。

そして遂に目的地に到達、エンドレスに続くかと思えた逃走劇もこれで終わりだ。


「うおぉぉ!!」


「げっ、家に入られたか。流石に家屋を傷付けるのはな…しかも奏弥の家だし」


「そうね…惜しいけど私たちはこれ以上干渉できないわ」


「ハッ……ハァッ……」


諦めたような声が聞こえたので安堵して一気に体の力が抜けた。思わず倒れそうになったがまだ終わりじゃない、騙しといて部屋に入った瞬間…なんてことも十分有り得る。だから俺は真の目的地である、アイツらにも言ったことの無い部屋に逃げることにした。


「ここを、こうして…っ、よし。ここまで来ればもう安心だろ」


着いた場所は俺の家の地下倉庫。俺が産まれる前からこの家には存在していたようで、小さい頃に家を探検してたら見つけた。それ以来俺だけの秘密として家族以外の誰にも話したことがないアイツらにとっても未知の部屋だ。


「暗いな…明かり明かり、あった」


流石に夜中になると地下だから超真っ暗だ。照明のスイッチを手探りで見つけてそれをONにして――――――絶句した。


「は……………?コレ…」


俺の真正面に見えたのは、5人の絵姿。それぞれ狼男、フランケンシュタイン、小悪魔、吸血鬼、…そしてその4人の上にそれらを統べるように配置された、なんだこれは、魔王…?

しかもそれだけじゃない、それぞれの顔にはアホほど見覚えがある。そらそうだ、ここに描かれてるやつらは…


「俺たち……?」


「そうだねー」


「!?ァガッ!」


突然梓沙の声が聞こえたので振り返ろうとしたが、後頭部への衝撃と背中に何かが刺さった痛みで意識が遠のいていく。クッソ、なんでバレてたんだ…?


「ふふふー、吸血鬼のコウモリを舐めちゃダメだよー」


「ク、ソ……」


誇らしげに言ってそうな梓沙(吸血鬼)の声を最後に、俺の意識は暗転した――――――


●●●


「……?」


目が覚めると地下倉庫にいた。ただ俺の記憶している状況と色々異なる点がある。まず1つ目…


「ハッ!?え、縛り付けられてる…?」


俺は椅子に腕ごと拘束されていた。逃げることは許さんと言わんばかりの雁字搦め、解ける気配はどこにもない。そして2つ目。


「よォ、目が覚めたみてぇだな奏弥」


「うーん、ちょっと強くやりすぎたかもねー」


「お、お前ら…」


健一たち4人が俺の前に立っている。夢では無く現実で起きたことであると示すかのように全員例の姿だ。夢なら覚めて欲しかったなぁ…


「おはよう、奏弥。調子はどうだい?」


「控えめに言って最悪だよこんちくしょう…つーか、なんで俺がこんな目にあわないといけないんだ?やっぱこの絵か?」


そう言いながら俺は後ろにある絵画の方を見る。やっぱ俺たち5人の似顔絵?なんだよなこの絵…


「そうね、奏弥にも私たちみたいな力があるのよ。…って言っても信じなさそうだけど」


「当たり前だよなぁ??」


そんな話信じたくもねぇよ…いやでも、あの逃走劇中のバカげた身体能力がそっち系の力だとしたら否定できない。

困惑してると、何やらドヤ顔をしながら梓沙がゴソゴソしだした。なんだ?何をする気だ?


「自分でも自分の力が信じられない、そんな奏弥にはこれをプレゼントー!」


「…薔薇?」


「あぁ、薔薇だ」


梓沙が取り出したものは、淡い紫色の薔薇だった。確か宵月薔薇だったか、懐かしい。なんかうっすらと光ってるが新手の蓄光塗料でも…待て、俺は今この薔薇を見てどう思った?懐かしい…?


「…っ」


何故か分からんがあの薔薇から目が離せない。物珍しいとかそういうのでなく、もっと何かこう、俺の心の深いところに関係があるような…あぁクソ、拘束が鬱陶しい。千切るか。


「!?コイツ縄を…」


「ストップ、これは…そういう事なんだね?」


「そうだねー、やっと思い出したみたい」


「追い詰めた甲斐があったわね。力の自覚と一定時間以上の接触、戦闘…ようやくよ」


アイツらがなんか言ってるが無視。俺にはコレが、この薔薇が必要なんだ。コレがあれば全てを…!


「はい、奏弥。…いや、(ロード)様」


「あ、あぁ…」


梓沙から宵月薔薇を受け取った俺は、迷うことなくそれを口に含み嚥下した。口の中で出血するとも思ったが、そんなことは無かった。まぁいい、そんなことは些事だ。これで俺は―――!


「…」


「「「お帰りなさいませ、我らが主様よ」」」


◆◆◆


「なぁ、帰ろうぜ…?こんな薄気味悪いとこ嫌なんだけど」


「何言ってんだよ拓馬、俺らはこの街の謎を解くためにここまで来たんだろ?」


「そうそう、っし。開いたぞ颯斗ー!」


「お、やるじゃねぇか幹也。じゃ早速突げ―――」


この街では化け物が封印されている。毎夜12時に鐘が鳴ることでそれらは復活しないようにされているとされているのだが、人為的にその封印が解かれた場合は―――


「「「――――ッ!!!!?」」」


惡の宴が始まるだろう。

多分一部の人は元ネタにピンと来るかもしれませんが、気のせいかもしれません。気のせいじゃないかもしれません。

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