第27話 後味の悪い幕引き
お久しぶりです。
また少しずつ書いていきます。
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「ヤタガラスの……抜刀斎だったか。彼の実力は私達の予想を遥かに上回っていたね。その年齢も、だけど」
「歳が若くても、彼はヤタガラスの一員ですから」
純一たちの通う都立士官学園学園長・大国は、学園長室を後にすると通信機器の揃えられた部屋へと来ていた。
画面に映し出されているのは心喰獣襲撃時にも集められた面々、つまりは大和を運営する人々だった。
そんな面々の中で大国へ声をかけたのは大和の最高責任者、市長であり純一たちヤタガラスへ都市防衛の依頼を出した張本人でもあった。
「伝説級……話には聞いていたが、まさかあれほどの力を持っているとは思っていなかった。都市内部に心喰獣の侵入を許したこともだがな」
苦々し気な表情をする市長がその脳裏に思い浮かべたのは、10年前にもあった心喰獣の都市侵入だ。
当時は対心喰獣防御シールドを過信していたことにより甚大な被害を被ったが、それを契機として早期警戒網の整備にシールドの強化と対策を施してきていた。
そんな状況での都市侵入であった。
「全く、抜刀斎がいなかったらと思うとゾッとするな。若くともヤタガラスの名に偽りなし、ということか。さて、報告の続きを聞こう」
「分かりました」
そこから大国は、純一から提出された画像を使いながら市長たちへ報告を始める。
都市内に侵入した心喰獣への対処にはじまり、都市へと侵攻していた心喰獣の群れと伝説級の殲滅、そして消えた八岐景之について。
「心喰獣に関しては、事前に確認出来ていた群れや伝説級を含めて全ての殲滅が確認出来ています」
「それは都市のレーダーでも確認出来ている。恐ろしいまでの殲滅速度だな。損害についても許容範囲だ。それよりも、その消えた学園生について詳細に聞かせて欲しい」
市長たちの懸念は結局のところ、そのことについてだった。
今回の心喰獣侵攻で最大のイレギュラー。
「学園生を連れ去ったという心喰獣だが、欧州戦線で確認されていた“仮面の商人”バティンで間違いないのだな?」
都市間の情報共有が心喰獣出現以前よりも希薄になっているものの、欧州戦線などの情報に関してはヤタガラスやキャラバンによって共有されている。
「直接姿を確認出来たわけではありませんが、連れ去られた八岐に抜刀斎が確認したところ、十中八九間違いないだろう、と」
「そうか……バティンの目的はやはり、“堕天使”ルシフェルの復活か?」
「恐らく」
「可能なのか? 心喰獣の再生なんてことは……」
「奴らの生態は謎に包まれていますし、分からないことの方が多いのが正直なところです。なので、可能性としては有り得る、としか」
実際のところ心喰獣が出現して以降、人類はその生存圏を維持するだけで手一杯だった。
ヤタガラスのような一部の実力者たちによって局地的には勝利を収めることは出来ても、世界的に見れば心喰獣の脅威は強大なままだ。
そしてそれは、人類が持つ叡智という力で心喰獣という怪物を研究する機会を奪い去っていた。
「そうか……しかし、それと学園生が連れ去られたことに何か関連はあるのか?」
「それに関してもハッキリとしたことは何も言えません。報告によれば抜刀斎やその幼馴染へ極度の執着を見せていたこと、心力ランクSということもあり、心喰獣にとって魅力的な獲物だったことは予想できます」
心装兵を多数輩出した八岐家の長男であり、自らも剣術の実力者である景之。
入学時の試験で『心力』ランクがSであると分かってからというもの、元々持っていた選民思想じみた自尊心が加速し、暴走しかけていたのは大国も承知していた。
その自尊心が抜刀斎、純一の登場により粉々に砕かれたこと。
それは拠り所としていたランクや実力で圧倒的な差をつけられ、自分だけのものだと考えていた幼馴染も純一の傍にいったことが原因であることは明白だった。
そんな状況は年若く挫折を知らなかった景之に、大きな負の感情を抱かせるのに有り余るものだ。
そこに目を付けられたのだろう。
「そう、か……ともかく、再び“仮面の商人”バティンをはじめとする心喰獣に襲撃される可能性があると考えるべきだろう。引き続き、抜刀斎にはよろしく伝えておいてくれ」
「分かりました」
結局、出された結論は現状維持。
分かっている情報が少なすぎるため仕方のないことではあるが、それでも気持ちの悪いものが画面に映る面々の胸の中に残った。
「……まあ、今はただ彼を信じるしかないか」
一人呟いた大国は息を吐いて気分を切り替えると、学園長室で質問攻めにあっているであろう少年を揶揄おうと部屋から退出した。




