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カラダ、お貸しします。  作者: 月影 陽
1/1

僕が迷い込んで

今日も、何も変わらない日々だった。

学校に行き、いじめっ子のストレス発散に使われ、部活に行き、嘲笑われ、そして、帰る。


始まりは、夏休みだった。

僕は、性同一性障害を隠していたんだ。

性同一性障害とは、カラダは男の子なんだけど、心は女の子、とか、その逆のこと。


学校で言って、笑われて虐められたこともあり、高校では内緒にしていた。

それでも、女の子の格好というものはしていたいもので、している間だけ違和感を忘れることが出来た。


ひらひらの白いワンピースを身に纏い、鏡を見て、笑った。違和感なんて感じない。


コスプレというジャンルに興味がある訳でもない。ただ、僕は女の子で在りたかっただけ。


綺麗な女の人になれるようになったのはそれからそう間がなかった。

ウィッグを被り、ワンピースを着れば、男の子っぽい女の子になれた。


それが嬉しくて、室内だけと決めていたのに、ちょっとだけならと外に出てしまったのだ。

そして歩の悪いことにちょうど僕を遊びに誘いに来たのだろう奴らが玄関先には居た。


「あ………」



「ちょ、お前何してんの?w」

「は?オカマw?」

「ウケるわやばw」


刺々しい視線とともに刺さるその言葉は僕が常識から外れていることを示しているようで辛かった。僕が途方に暮れている間にその"友達"の1人が僕にカメラを向けて




_____カシャ


なんの躊躇いもなく撮影したんだ。

1枚限りではない、連写。


満足したのかある程度撮り終わると、その子はニヤリと笑って、


「ばらまかれたくなかったら俺らの言うこと訊きな?」


と僕を真っ直ぐ見据えて言ってきた。


僕はもうやだったんだ。高校でも虐められるのなんて。

だから、言うことをきく、と言ってしまった。

それが地獄の始まりなんて知らずに。


それから、たくさんたくさんいじめられて、結局写真もばらまかれて、散々だった。

親に心配はかけまいと必死に学校に通い続けて1年半。


それが今である。


夕暮れ時で、日も沈みかけている今の時間は最高のゆったり時間であった。

帰ったら親のテンションに合わせて無理するし、学校ではまあ上記の通りだしでなんだかんだ登下校が1番好きな時間だった。

今日は本を読みながら帰ろう。

前も向かずに本だけに熱中して歩いて帰る。


ふと、前に何者かの気配を感じ、上を見た。しかし、誰もいない。なんだ、と思い、視線を本に戻すと文字が霞んで見えない。

「あれ?」

目を擦ろうと本から視線をあげると辺り一面真っ白。雪かと思ったが真っ白は空中にも滞在しているので違う。



普段は当たりが見えない時は、無闇矢鱈に歩かない方がいいと教わったのでその通りにしようとしたのだが、何故か僕の意思に反して僕の足は歩みを進めた。


視界がはっきりしない靄のなかを歩いているとふと視界が開けた。


そして、僕はひとつのお店を視界に捉えた。


和風な茶屋をイメージさせるそのお店には、赤い暖簾が掛かっていて、


〜遙颯屋〜


の3文字。


店の前では赤髪の男の子がほうきを片手に掃除をしていた。

その行動をぼーっと見守っていたら、男の子が僕に気付き、手を振った。


「やあ、こんばんは。お客さん?」


僕に笑いかけてくれた。

その笑いは、いつもの嘲笑うような笑顔ではなく、歓迎するような出迎えてくれるようなそんな笑顔だった。


「…えっと、こんばんは、少し迷っちゃって……」

だから、僕も正直にそう告げることが出来た。すると、男の子は驚いたように目を細めて、

「そうしたなら、本当にお客さんなんだね…!?やった!やったよ!ルイくん!お客さん!」

そう喜んで、店の中へ姿を消してしまった。

どうしようかと悩んでいたら、また、さっきの男の子が店から出てきて、

「こっちこっち!おいで!」

と手招き。このまま帰ってしまうのも申し訳ないし、なんだか不思議と危ない感じはしない。少しだけならとお店の中へ着いていった。


お店の中は外見通りだった。和風な雰囲気のある椅子と机に、奥には襖があり、如何にも茶屋感が漂っている。

襖の奥には畳があるのだろうかな、と考えているとちょうどその襖が開き、長い髪を一つにまとめた女の子が現れた。そして僕を1目見るなり

「お前が客?」

と呟いた。敵意むき出しで、とても歓迎です!と言っているようには見えない。

なんかいけないときにきちゃったかも………

やばいと感じつつ若干逃げ腰になった僕をニコニコ笑顔の少年が引き止める。

「ちょっとルイくんは今日は不機嫌みたいでね、ごめんね、ああ、そうだ!名前!きいてなかったね。私はドナ、この人はルイ、君のお名前は?」


嫌なら言わなくてもいいと言わんばかりにこちらを覗き込むドナさんの視線には悪いものは感じられなかった。

かと言って軽々と教えるわけないだろうとそっぽをむこうとおもったが、何故か僕の口は動いていた。

「…僕は、カンナです…。」

ぼそっと呟いたので相手には聞こえない、そう思って居たのだがそんなことは無かったらしく。

彼らは満足気に頷き、


「じゃあお店の説明を始めるね。まずここは遙颯屋。何をするかと言うと、ちょっと不思議な悩みを抱えた人の悩み解決のお手伝い?かな。よかったらカンナくんもここで働かない?」

流れるように早口で一通り言ったならそう最後に振りかけられた問い掛けには無意識にYESと答えてしまうものだ。

YESの返答を返した瞬間、ドナさんの目は光輝かんばかりのものとなり、

「ほんと.!?やった!ルイくんやった!一緒に働いてくれるって!」

と嫌がるルイさんにぎゅっと抱きつく様である。今更断れなんてしない雰囲気に陥ってしまった。


「で、どうやって解決するんですか?」


半ば呆れ気味に訊いた問は届くかなと疑問でしか無かった。ドナさんはルイさんに抱きついたまま、

「実は私たち、魔法使いなんだよねっ」

まるで今朝ご飯を食べていないんだよねと言うように突拍子も無いことを言うドナさんを凝視したままちゃっかり3秒。


「え?」


そして3秒後に僕の口から発せられた言葉はその壱音。


「そして魔法使いの私から見るに、カンナくんは魔法使いの素質がありそうなの。だから勧誘したって訳。」


どう考えても先程の言葉は流れ出ただけのように思ったが口に出さなかった。否、出せなかったの方が正しい。

ドヤ顔で決めるドナさんを前にそれをいいだせる人は相当の鋼のメンタルを持っているだろう。残念ながら僕はお豆腐以下だ。



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