第5話 親衛隊に殴り込み
次の日冒険者ギルドに行ってみると大変な騒ぎになっていた。なんとみんな俺のことを噂しているのだ。
アルゴスの英雄だの、オークキング殺しだの、期待の超新星だの、みんな言いたい放題言っている。
みんないい気なもんだ、こっちは逃げたら猿にされるのに。受付に行くとギルドマスターの部屋に行くように言われた。一体何の用なんだか。
「失礼します」
「おう!入れ」
「俺に用って一体何なんですか」
「せっかくBランクになったんだ。お偉いさんに顔を売っといた方が良くはないか」
「どういう意味ですか」
「偉い人に顔を売っておけば何かと融通を利かせてもらえるだろう」
「そんなことしても強くなれませんので結構です」
「お前何も考えてないだろう」
「いや考えてますよ。そんな暇あったら剣の素振りでもした方がマシですわ」
「まったくしょうのねえ奴だな。これは昨日のオークキングとジェネラル討伐の金だ。金貨で120枚ある」
「それは貰っておきますよ。それじゃあね」
うーん。もっと強くなるには強いやつと訓練するしかない。どこかにいないかな。エミリーに聞いてみるか。
道具屋エミリー
「なあエミリー!どこかに強い奴いないかな」
「えー!そんなん私は知らないよー騎士団にでも行ってみたら」
「騎士団?」
「町の治安を守っているんだから何か知ってるでしょ」
「なるほど」
「ああ、行っちゃった。稼ぎはいいし優しいし、いい人なんだけどなんであんなに強くなりたいのよ」
騎士団詰め所
「オークキングを倒すような奴と互角に戦える奴はいないな」
「あんたら強いんだろ?」
「お前が強すぎるんだよ」
「どこかに強い奴はいないのかな?」
「王宮に行けば宮廷魔術師がいるな。後は親衛隊長がいるな。おっと会えないぜ。普通の奴は通れないからさ」
「う〜ん。そりゃ参ったね」
どうしようか。とりあえず魔法を強化しておくか。ファイヤーボールしか使えないからな。見れば覚えられるんだろうけどな。
いや近くに強いやつがいるなら会いに行けばいい。とりあえず行ってみよう。
「なんで通れないんだ」
「だめだ、だめだ!お前みたいな冒険者が来るとこじゃねえんだよ。かえんなかえんな!」
くそう!ここからは貴族や王族しか通れないということだ。
それじゃあしようがない。変装して押し通るか。いやここからはまずいな。他から入ろう。
俺は黒い布と黒い服を買い変装して貴族街区に忍び込む。
しまった。中に入ったらこんな黒い服はかえって目立ちまくりだな。元の服装に戻す。
ええと、騎士団長のいるところは・・・おお、ここにも騎士団がある。きっとここだな。
どうせ正面からだと入れないからな。忍び込もう。
おお、やってるやってる。
「貴様らそんなことで王都の治安が守れるか!気合を入れろ!」
「は、はいっ!」
うん!町の騎士団よりは確実に強いな。さてどうやって勝負するか。
「おい!そこに隠れている奴!何者だ?」
「さ~すが〜。もう見つかっちゃった。俺は冒険者ゼンだ。お前と勝負がしたくてここまで来た」
「何だとー。平民はここには入れないはずだが」
「そうなんだよ。なかなか入れなくて大変だったよ」
「こいつ!ひっ捕らえてやる」
騎士団員が襲いかかってくる。しかし、団員程度では俺には触れることすらできなかった。
「お前らそんなんで王都の治安が守れるのか?俺が鍛えてやろうか?」
「く、くそう!」
団員たちはみな這いつくばっていた。団長が出て来た。
「よし!俺が相手になろう!」
「いいぜ!」
俺たちは剣を抜きお互いに構える。
「行くぞ!」
「おう!」
ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!
うん、さすがに団員よりはずっと強いな。お、何か仕掛けてくるな。
「スラッシュ!」
「おっと!へえーこんな技もあるのか」
「くっよけられたか!」
「幻影剣!」
「おおっ剣が増えた!すごいな団長!さすがだよ」
「ふん!ふん!ふん!」
俺は大上段から相手を打ちすえる。さすがに相手も避けたり受けたりして防いでいる。
「何という打ち込みだ!」
「つばぜり合いになったので足蹴リを食らわせてやった」
ドカッ!
「ぐああ!」
すかさずさっきのスラッシュを真似て出す。おおすごい衝撃波だな!
「うわっ!」
団長は片膝をついた。その体制から無数の突きが来る。腹に受けてしまった。しかし鎖カタビラを着ているので平気だ。
俺たちはこんな感じでもう10分は戦っている。団員達はそれを驚いた顔で見守っている。
「すごい!うちの団長と互角に戦える奴がいるなんて驚きだ」
「いや団長が押されてきているぞ」
ガイン!ガイン!バキッ!
「ハアハア、あれっ!剣が折れちゃた!安物はだめだな」
「ハアハアハアどうする。まだやるか!」
「ハアハアハアあたりまえだ!実戦で待ったなどない。うりゃー!」
団長の剣を右腕で受けて左手でパンチを入れる!団長が吹っ飛んだ。
「ハアハアハア、ぐふっ、なんていう力だ!」
「ハアハアハア剣がなくても戦える!」
「うおーりゃー!」
「ま、まいった!」
俺は殴るのをやめ腕の治療をする。だいぶ痛みは和らいだ。
団長は片膝をついてまだ立てないでいる。俺はヒールをかけてやる。
「お前すごいな。素手で俺を殴り倒すとは」
「いや練習になったよ。ありがとう」
「お前冒険者なんかやめてうちに来ないか?」
「いや、戦いがあれば多分一緒になることもあるだろう。またな」
「俺は親衛隊騎士団長のハウザーだ」
「覚えておくよ」