第3話 幸せな時間
「ねえ、エミリーさん。ここらに剣を教えてくれるとこはあるかな」
「手っ取り早く身につけるなら冒険者ギルドの練習場がいいと思うわ。必ず誰かしら練習してるから」
「そうなんですか。それじゃあ行ってみるよ」
「ねえゼン。なんでそんなに必死なの?」
「え?命がかかっているからさ」
「無理はしないでね」
「うん。ありがとう」
冒険者ギルドの練習場でかたっぱしから模擬戦をしてもらい半日かけてある程度剣が使えるようになった。
午後からは依頼を受けるつもりだ。だけどゴブリン討伐じゃだめだな。もっと鍛えなくては。
「ええと、ゴールデンバッファローの討伐。金貨3枚。肉の買い取り有り。これがいいかな」
「兄ちゃん、やめときな。それ人気あるけどよく死人が出てるよ。Αランクモンスターだから」
「忠告ありがとう」
冒険者ギルドで荷車を借りてアルゴスの町の東の平野に向かって出発した。
途中屋台で串焼きを買って口に頬張りながら歩くこと1時間ほどで到着した。
ゴールデンバッファローはいないが普通のバッファローなら何頭か見かけた。
荷車を引いて北に向かう。20分ほどで沼に到着した。なんとそこにゴールデンバッファローが水を飲みに来ていた。
しかしでかいな。ワゴン車くらいあるな。こんなでかい奴をどうやって倒そう?
槍で突くしかないかな。あ、気付かれた。こちらに突進して来る。
直前でかわして突いてやろう。と思っていたが相手は直前で止まり角をふるってきた。
こいつなかなか頭いいな。脇へ回って逃げるが角で槍を飛ばされてしまった。
剣を抜いて構えるが自分も飛ばされてしまった。しかし運よくバッファローの背中に落ちた。すぐに剣を首の付け根に突き立てた。
「グモモモモー!」
「もう一本喰らえ!」
剣を背中の真ん中に突き立てた。一本目の剣を抜いてファイヤーボールを叩き込んだ!
暴れる暴れる!剣に捕まり耐えて同じ所にまたファイヤーボールを叩き込んだ。
ドサッ!
「どうだ!もう動けまい。とどめだファイヤーボール」
同じ所にファイヤーボールを叩き込む。さすがに事切れた。血抜きをして運ぼう。
「あれ!この!この!動かない。うーん。うーん。うーーん。ハアハアハアハア」
死体と格闘すること30分、何とか荷車の上にゴールデンバッファローを乗せた。
今度は全力で荷車を引く。最初は動かなかったが、だんだんと慣れてきた。
「今回は力が付いたな。修行にはなった」
2時間かかり冒険者ギルドに帰ってきた。
「ハアハアハアハア疲れたハアハアハアハア」
ギルドの受付に行く。飲んでる連中は俺には声をかけては来なかった。この間で懲りたらしい。
「買い取りお願いします」
「ゴブリンですか?」
「いえ、ゴールデンバッファローです」
「外に置いてあります。見てもらえますか」
受付嬢は表に走って行く。
「えええーー!これあなたが倒したんですか?」
「はい、運がよかったです!討伐料は無しでも買い取りは大丈夫なんでしょう?」
「これΑランクモンスターですよ!駆け出しの新人が・・・信じられない」
その後大騒ぎになり俺はギルドマスターの部屋にいる。
「私はギルドマスターのイーサン・ウィリアムズだ。ゴールデンバッファローを君一人で倒したと言うのは本当かね」
「はい、本当です。あの買い取りは」
「大丈夫です!今査定してますから」
「ちょっと手合わせしてもらえるかな」
「はい。分かりました」
ギルドの練習場
「君は槍も使えるのかね」
「はい。少しですが」
「ふむ。かかってきたまえ」
これは強くなる良い機会だ。頑張ろう!
ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!ガイン!
「ふむ。なかなかの腕だ!今度は剣を見たい」
「分かりました」
ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
「ふむ、すごいな。底がしれない力だ。もういいよ」
「はあ」
「君には今日からCランクになってもらう。今回の討伐料もだそう。そこでお願いがあるのだがオークの討伐隊に加わって欲しい」
『受けなさい!』
この声はアシュラ神!
『今回の討伐隊にはあなた達も50人が参加するわ』
残りは何してるんだ?
『他の子たちは別の所に行ってもらってるわ。女を救いオークをせん滅しなさい!』
せん滅・・・
『逃げたら猿よ!』
分かった、分かりましたよ!
「その依頼受けます」
「明日の朝、日の出とともに馬車で出発になる。よろしく頼むよ」
俺は依頼料金貨3枚と買い取り料金貨50枚を受け取りゴールデンバッファローの肉を少しもらって道具屋に帰ってきた。
この国の貨幣は金貨、銀貨、銅貨の3種類で100枚で次の単位となる。
銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚になる。俺の所持金は金貨50枚を超えている。
金貨2枚で一家4人で1ヶ月は食べていけるようだ。俺は稼ぎがいいのかな。
「エミリーさん。これは今日捕まえたゴールデンバッファローの肉だよ。お母さんと食べてね」
「ええーー!ゴールデンバッファロー!そんな高価な肉食べられないわ」
「生きてるうちだよ食べれるのは」
「まあ、そうだけどさ。ゼンはすごいな」
「それで頼みがあるんだ。明日の朝からオークの討伐に出かけるんだ。このお金を預かって欲しいんだ」
「大金じゃない。いいけどちゃんと帰って来てよ」
「もちろんだよ。でも、もし帰って来られなかったらそのお金はエミリーさんがもらってくれるかな」
「・・・危ないの?」
「分からない、多分大丈夫だと思う。だけど世の中絶対なんてないからさ」
「預かるけど戻って来てよ」
「うん」
その晩は3人でゴールデンバッファローのステーキを食べその旨さにびっくりした俺だった。
水浴びして自分の部屋で寝るだけになった。
今回の稼ぎで急きょ買った防具、鎖カタビラ!かさばらないし、丈夫だし役に立ちそうだ。
「ゼン、入っていい?」
「エミリーさん。どうしたの」
「今夜は一緒に居たいのよ」
「ええー、もう寝るんだけど」
「じゃあ一緒に寝ようよ」
「ええーー!意味分かってんの?」
「生きてるうちだよ」
「そりゃあ・・・そうかな」
俺たちは幸せな時を過ごした。