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第29話 信用・信頼1

 依頼人の家を出て、奈々と暁美は駅まで向かう。時刻は14時。暁美はこの後を指示を法明寺にされていないので、事務所に戻るかどうするかを悩む。奈々さんがもしこの後予定なかったとして、色々聞いても教えてくれないだろう。どうしようか。


「奈々さん」


「ん〜、どうした〜」


「奈々さんはこの後予定あるんですか?」


「ん〜。そうだな〜。久しぶりに外出たし、この後、秋葉原行って部品の買い込みでもしようかな〜」


 一応と言っては失礼だけど、見た目も小柄で可愛い女の子なのに、少し汚れた作業着着ている女の子がその格好のまま秋葉原に向かうのはどうなのだろうと暁美は思ったが、特に気にする様子も一切感じられない奈々を見て、改めて奈々の我が道を行くスタンスを尊敬する。自分は絶対同じことはできないけど。


「少しだけお茶できないですか?」


「にゃは〜ん。今回の件でしっくり来てにゃいんだな〜」


「もう、奈々さんわかってるなら教えて下さいよ〜」


「にゃはは〜。そしたら、駅前にあったスパゲッティー屋さんがちょっと気になっていたので、お昼も一緒に食べようか〜」


「はい」


 駅前にあるスペゲッティー屋に入る。店の名前もそのまま、スパーゲ。センスがあるのかないのか・・・。でもスペゲッティー専門店のようなので少しだけ楽しみにして暁美と奈々は入る。


「いらっしゃいませ〜」


「2名で」


「はい。こちらへどうぞ」


 中に入ると、扉が長方形の店のスペースの右奥側に位置して、その延長線上にカウンターが並んである。

 左側には、長方形のテーブル毎に独立していない2人ほど座れるファミレスでよくみかけるような席が両サイドにあり、背もたれの延長線上で壁ができていて、その壁の反対側には同じ席とテーブルを挟んで反対側に同じような席がある。

 そういった組み合わせのテーブルが3組。カウンターと左のテーブル群の間に、正方形のテーブルの各面に椅子が4つならんでいる組が2つでできている店の間取りだった。案内されたのは一番左奥の計4名ほど座れる2名分の席がくっついていて、長方形のテーブルを挟んで席がある組。


「やった、広いですかね」


「当たりだね〜」


「まだ席だけですけどね」


 暁美と奈々は、テーブルに置いてあるメニュー表に目を通す。お〜、すごい。オイルソース、ミートソース、トマトソース、クリームソース、バジルソース、醤油ベース諸々。


「すごいメニューですね。当たりですよ。この店」


「ん〜。そうだね〜。アケちゃん決まった?」


「え!!、奈々さん、もう決まったですか?」


「決まったよ〜。ナポリタン」


「うわ〜、すごい無難ですね」


「アケちゃん、わかってないな〜。ラーメンと言ったら醤油。スパゲッティと言ったらナポリタンだよ〜」


「そんなもんなんですかね。私は、たらこスパゲッティにします」


「アケちゃん。それも無難」


 ケラケラ笑いながら、店員さんを呼んで注文する暁美と奈々。


「それで〜。何が気になっちゃっているの?」


「奈々さん、わかってるじゃないですか。もう意地悪するのやめてくださいよ」


 明らかに何かを隠している表情をしている奈々に、からかわれているのか、なんなのか分からない暁美だったが、奈々は法明寺のほうに悪ふざけしてからかうような人ではないので、なぜそういう対応なのかいまいち読めずにいたが、絶対に話せないような雰囲気を奈々は出すわけでもないので、トコトン追求してやろうと暁美は心に決める。


「そんなに真剣な眼差しでアケちゃんから見られると、ウチはどうしていいかわからないよ〜」


「大丈夫です。奈々さんが知っていることを全部話してくれればそれでいいんです」


「アケちゃん、ネゴ下手くそだね」


「え?!、下手ですが」


「下手だよ〜」


 しばしの間、沈黙が流れる。奈々は先に出されたアイスコーヒーのストローをいじりながら、外を眺めている。


「ちなみに今回、別にウチは吾郎ちゃんから何か聞いたわけじゃないよ」


「そうなんですか」

「そうだよ〜。だってウチは法明寺事務所のスタッフでもないし、吾郎ちゃんが、アケちゃんに言わないことをウチにだけ言うなんてことはないと思うよ。だからそんなに嫉妬しないで」


「し!!、嫉妬とかしてないし」


「あはは、ごめんごめん」


 奈々に暁美が普段、法明寺と奈々とのやりとりをみて思っている事を見透かされていたのかと一瞬暁美は思ってしまった。恥ずかしくて大きい声を出してしまったのもまた恥ずかしい。 

 ただ、意外だったのは、法明寺は暁美に対する信用・信頼の低さから思っていることや考えていることや情報を出してくれないだと思っていた。この4ヶ月の間で少しづつ、言ってはまずそうな話を教えてくれるようになったのを信用・信頼だと思っていたことも少し恥ずかしくなる。


「こちら、ナポリタンとたらこスパゲッティになります」


「は〜い。とりあえず、食べよ食べよ。ふーふー。モグモグ。おいしい」


 奈々は、ナポリタンを食べるとなぜかモグモグと言葉で言いながら口を動かす。


「奈々さん、普通に食べてください。そのモグモグとかいらないですから」


「いや〜、なんかシリアスな展開だから、ちょっとだけ和もうかな〜と思って」


「も〜」


「アケちゃんのたらこスパゲッティも頂戴」


「あ」


 奈々は、頂戴の言葉とともに暁美のたらこスパゲッティにナポリタンを食べたフォークを差し込みグルグルフォークを回してスパゲッティの塊を取り食べる。

 あー、もー、ナポリタンの色がたらこスパゲッティについちゃったよ〜。

 本当、この人は大人なんだか子供なんだかわからない人だな〜。


「言う前に食べてるし、私も」


「あ」

 

 そんなこんなで暁美と奈々はお互いのスパゲッティを取り合ったりしながら、おいしいスパゲッティを食し、法明寺話を再開。


「それで」


 スパゲッティのお皿を定員さんに片付けてもらったテーブルをおしぼりで拭いて、身を乗り出す暁美。


「はいはい。大丈夫ですよ〜。ウチがわかってることは言いますよ〜」


「やった!!奈々さん、ありがとう」


「ただ、それでいいの?」


「え?」


「さっきも言ったけど、ウチは吾郎ちゃんから何も聞いてないし、吾郎ちゃんも意味あってアケちゃんに言わなかったんじゃないの?

 ウチは吾郎ちゃんと付き合いながいから、多分こうなのかな?って思っていることはあるけど、それをウチの口からアケちゃんに言って、アケちゃんはそれを知ってどうするの?吾郎ちゃんにウチから聞いたよ。って言うの?」


 奈々の本質をつく質問に暁美はフリーズしてしまう。

 確かに奈々の言う通り、法明寺には法明寺なりの理由があって暁美に何も言わない。

 それは分かってる。分かってるから悔しくて奈々さんが何かを知っているなら、奈々さんにしか話してなかったとしたら、聞いてやろう。って思ってしまった自分の心は隠さない。


「あ、ほらほら、アケちゃん」


 奈々は自分の作業着からハンカチを取りだして、暁美の目のあたりをハンカチを当ててくれる。


「あ、ごめんなさい」


 暁美は感極まってしまった自分に今のタイミングで気がつく。


「ふふ。いいんだよ。いいんだよ〜。アケちゃん、青春だね〜。吾郎ちゃんはちょっと変わった奴だけどいい奴だから。きっと吾郎ちゃんなりの考えがあるだけだけど、アケちゃんがいつもの通りの全力でぶつかれば、きっとアケちゃんが気になっていることも教えてくれるよ。ファイトだぜ〜」


 えいえいお〜っとやっている奈々を見て、少しだけ吹き出してしまう暁美。


「も〜、奈々さん」


「ピース」


 文字通りピースをする奈々に、背中を押された気がした暁美は、法明寺が何を考えているか知らないけど、この気持ちは自分でぶつけないといけないと改めて心に誓う。


「ありがとう、奈々さん。今から、法明寺おじさん、しばいてくる」


「あはは、その調子。いこういこう〜」

次は18時にアップします。

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