第27話 西田理沙盗聴・盗撮案件、調査日①
調査日、11時55分
法明寺から教えられた住所にいく暁美。住所はマンションで、マンションのエントランスの前に法明寺と奈々が立って話をしている。奈々はその小さい体に合わない大きい黒のアタッシュケースを持っている。
「おはようございます」
「あ〜、アケちゃんおはよう〜。今日もとびっきりかわいいね〜」
挨拶と共に、アタッシュケースを置いて、手を広げて飛び込んでおいで。と言わんばかりの姿勢で待っている奈々をスルーして、二人の前に立つ暁美。
「おー、おはよう」
法明寺も暁美と同じく、奈々の行動に対してスルーして暁美に挨拶を返す。
「うー、五郎ちゃんもアケちゃんもリアクション同じだからつまんない」
「大盗、お前のリアクションにいちいち対応してたら会話が成り立たんだろうが」
しょげている奈々に軽くチョップする法明寺。法明寺と奈々が二人でやりとりしているところをみると息のあった長いカップルみたいで少し嫉妬してしまっていることは、絶対に口に出して言うことではないけど、いつも気になる暁美だった。
「それじゃ、一応、依頼人宅に行く前の事前すり合わせな」
「お〜」
「了解です」
「依頼人と相談内容は事前に二人に投げているから省くぞ。家の間取りは1LDK。平米数でいうと62m2だ。今回は依頼人が少し情報を隠して相談してきているように思えるから、調査自体は大盗に担当してもらって、俺は依頼人と雑談がてらに色々話してみるわ。
大盗は設置場所からの犯人の思惑も感じ取ってもらえるとありがたい。今日は嬢ちゃんはお勉強だから大盗の邪魔にならないようにな」
「はいなり〜」
「はーい。了解です」
奈々と暁美は両方ともジャンルは違えど、テンション高いほうのキャラなので、この二人と一緒に調査かと思うと疲れがいつもの何倍にもなりそうだ。と思う法明寺は二人を見て少しだけため息をする。
「よし、いくぞ」
「あ、なんで、今、法明寺さんため息ついたんですか?」
「なんでもない。いくぞ」
「今、絶対、この三人だと面倒くさいって思ったでしょ。思ったでしょ」
「思ったよ。思ったさ。さーいくぞ。仕事モードに入れ」
「んー、納得いかないけど、、、、。わかりました」
二人のやりとりをみて、ニヤニヤする奈々。
「んにゃ〜、二人は漫才夫婦みたいだね」
「な!!奈々さん、おじさんが勘違いするようなことを言うのやめて下さい」
「ったく・・・・・」
結局、依頼人の号室に着くまで静かになることにない3人だった。
ピンポーン。
「はい」
「本日、12時からお約束いただいております法明寺探偵事務所の法明寺になります」
「少々、お待ち下さい」
インターホンの音が消え、三人で待つ。今回はどんな人が依頼人さんなんだろう。4ヶ月ほど色々な現場に顔だした暁美だったが、この瞬間のドキドキ感はまだ慣れていない。探偵は人の心の闇に触れる仕事なんだなと、依頼人に初めてあった時の表情をみて、暁美はいつも思う。
玄関が開く。
「本日は、ありがとうございます。狭いですが、お入りください」
「「「失礼します」」」
そんなに広い玄関ではないので、まずは法明寺から入っていく。次に奈々。最後に暁美が入っていく。お客様の前では、だ〜。とかにゃ〜。とか奈々さん言わないのかな?等と暁美は一人で心の中でツッコミいれる。
間取りは玄関入ると向かって左側に廊下が続いている。
廊下を歩いている最中、扉が左に。扉を過ぎた右側に引き戸があり、その廊下の先にある扉を開けると扉が部屋の中の左端に当たる位置でリビングが出てくる。
扉の前に立っている状態で、手前にテーブルと四人掛けのセットがあり、奥にソファとテレビ台が置いてある。扉の反対側の壁の手前にシンク、さらにその奥には引き戸がある。
「こちらへどうぞ」
テーブル席が対面で2席づつなので、1席をテーブルの席が置いてない方に起き、法明寺、奈々、暁美がL字型で座れるような形を作り、座るように依頼人から案内される。
「「「失礼します」」」
移動した本来テーブルの席が置いてない方に置いた席に法明寺が座り、L字型の法明寺側に奈々が、その隣に暁美が座る。
「お茶しかありませんが、大丈夫でしょうか?」
「すいません、お気遣いいただきまして、大丈夫です」
依頼人は、法明寺の返答にあわせて、ガラスのコップグラスに冷蔵庫から取り出した緑茶を入れて三人の前に順次置いていく。
「すいません」
「あ、ありがとうです」
「ありがとうございます」
あ、ここで三人の使う言葉が変わった。やっぱり奈々さん無理して言葉使ってたんだ。すこし、言葉遣いが戻りつつあるよ。
暁美は心の中でツッコんでおくが、表情はあくまで無表情。
「本日はどうぞよろしくお願いいたします」
「はい。西田様。こちらスタッフの紹介をさせていただきます。私の左手前におりますのが、今回の調査員の大盗で、大盗の左におりますのが、アシスタントの筧になります」
「よろしくです」
「よろしくお願いします」
法明寺の紹介で奈々と暁美が順次、依頼人西田理沙に挨拶をしていく。暁美の経験則でいうと依頼人さんは、どこかたどたどしい所がある方が多いイメージ。依頼している内容自体がどうしても心の闇の部分なので、普段はきっと堂々としているような人でもそうなってしまうのかもしれない。
「では、間取りのご説明をお願い致します」
「はい。玄関入りまして、廊下からこの部屋に向かう途中にある左のドアがお手洗いになります。右の引き戸が洗面所とお風呂場になります。この部屋の手前にあるのは、シンクスペースで、奥にある引き戸の奥は寝室になっています。ベランダはこのリビングの奥にあります」
「ありがとうございます。1LDKですね」
「はい」
「電話器は固定電話をお持ちですか?」
「いえ、持っていません。」
「了解しました。ありがとうございます。それでは、調査開始させていただきますね。少し、機器を使うスペースがほしいのですが、テーブルの上を使わせていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です。宜しくお願いお願い致します」
法明寺が奈々に目を合わせて、顔を少し左斜めに動かす。
あい、あれを出せ。ときっと言っているんだろうな〜と暁美は思いながら、奈々の方を見ると、わかったよ〜。とこれまた少しだけうなづく動作に入って、大きい黒のアタッシュケースを机の上に置く。やっぱりこの二人以心伝心がちょっとだけ悔しい。
「よ!!失礼しますね〜」
奈々が、テーブルの上においた黒いアタッシュケースを開ける。
アタッシュケースの中には、昔の小型ブラウン管テレビを思わせるような奥行きの長いモニターが入っていて、そのモニターの隣には番号1〜9とをいつくかのボタンが並んでいる。
ケーブル線が何本を出ていて、グチャグチャなので、どこがどう繋がっているのかは暁美は目でケーブルの端と端を追ってみたけどわからなかった。
奈々は小型ブラウン管風モニターについているアンテナを伸ばし、ケーブル線に繋がっているノートパソコンをアタッシュケースから取り出し机に置いて電源をつける。
「よしよし、ほっ、ほっ」
奈々の意味不明な掛け声とともにモニターの電源、レシーバーの電源もつけて、パソコンも開いて、色々パチパチやっている。
エンジニアさんのこういった姿はかっこいいよな〜。
暁美は隣の芝は青いと思ってしまう癖をここでも出してしまう。エンジニアも興味あるかも。
こういう事いうと法明寺は、一つの事も出来てないのにとワーギャー言うのはわかっているので、後でこっそり奈々に聞く事にする。
「ほい、準備できました〜」
パソコンのモニターや小型ブラウン型風モニターに電波らしき波形が動いている。
「じゃ、順次やってってくれ。西田様、何をして言っているのかは見ていてもわかりづらいかと思いますので、大盗の作業にあわせて、私のほうで説明をさせていただきます」
「はい。ありがとうございます」
「また、ここから先は少し小声で話させていただきます。まずは、室内電波点検、電話器等回線上電波点検、PBX電波点検と言うのを行なっていきます。盗聴や盗撮は独自の電波を発信していますので、その電波をサーチしていきます。言葉で説明するのも大変ですので、こちらを」
法明寺が西田理沙に紙を渡す。なんだろなんだろ。と暁美は法明寺のほうへ眼差しを向ける。わかった。わかった。と呆れているような表情、パッと見ではわからないステルス呆れ表情は、暁美にもこの4ヶ月でわかるようになってきた。眼差しを向ける暁美にも法明寺から紙が渡される。
次は18時にアップします。
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