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彼が灯した光

作者: ちーのすけ

 私は、海原千春(かいばらちはる)。現在高校2年生。合唱同好会に所属している。今はクラスでも部活でもうまくいっている。今そばにいる彼のおかげだ。

 だが、彼が現れるまではこうではなかった。8年前のある出来事のせいで…。

 8年前、私は、海外から帰国した。元々は、明るくリーダー的存在だった。だが、そこで恐ろしい嫌がらせにあってしまった。教科書をビリビリに引き裂かれたり、蹴られたり、殴られたりされた。それ以来、明るかった性格も暗くなり、そして人への恐怖心が強まってしまった。同級生、教師、親、親戚そして町の人々にまで恐怖心を抱いてしまったのだ。もうこれから、そうやって人と避けていくのだと思った。

 中学の時、元々バスケットボール部だったが、膝の損傷がひどく、しばらくできないと言われたことと部員や先輩からの嫌がらせが原因で辞めて、合唱部にはいった。最初は、嫌々でやっていたが練習していくうちに楽しくなった。そして、部員への恐怖心は、自然となくなった。そんなこともあり、もっと合唱をしたいと思った。

 高校に入学して、生活のリズムがつかめた夏くらいに、合唱同好会に入った。だが、1年生が1人だったからか、いつも同好会に行くと先輩たちが仲良く話しているところ見ると、寂しくなる。私にも優しく話しかけてくれていたが結局、後々から話しかけなくなった。それは、もう慣れっこだった。どうせ、人は、そうやって飽きたらどこかへいくものと思っていた。そんな中、ある先輩が、話しかけてくれた。彼の名は、笹原智也(ささはらともや)。最初は、ぎこちなかったがだんだん慣れていった。辛いことがあって泣いたときも必死で励まそうとしてくれた。あの時は、嬉しくてたまらなかった。なぜなら、今までそんな人に出会わなかったからだ。たとえ、親でもそうは、しなかった。

 親は、私のことを責めてばかりだった。

「どうしてあんたは、いじめられてばかりなの!」

その一言が、いつもストレスとなっていた。8年前にあったことは、知っているが何があったのかまでは、知らないのにそんなことを言うなんて…。そんな風に思っていた。そうやって、言われた人生だった中で初めて励まされるということがわかったのだ。そして、彼に恋心を抱いてしまったのだ。だが、すぐに消えるものだと思っていた。

 文化祭の日、私は、1人で過ごした。誰とも関わりたくなくて、ずっと終わるのを待っていた。薄暗い部室の端で楽しそうに笑う人たちを見ていた。だんだん辛くなり、終わるまで寝ることにした。

「ここにも居場所がない」

そう思った。

 終わった後、私は、1人で中夜祭に行くことにした。体育館の端でずっと見るつもりだった。だが、その時、

「1人じゃ、寂しいでしょ?」

と明るい声が聞こえた。あの先輩だった。

そして、一緒に見ることになった。私は、最初はあまり話さなかったがだんだん時間が経つにつれ、心を開き、話すようになった。

そして、帰り。駅の待合室にいった。椅子に座り何気ない話をした。そして、いつの間にか

「好きな人いるんですか?」

と聞いていた。ある帰り道、先輩が同じ同好会の先輩と仲良く帰っているところを見て気になっていたからだ。

先輩は、

「さあ?」

と言いつつ笑っていた。私は当てようとすると笑って答えた。

そして、私は、自分じゃないんだと思った。だからか、自分がその先輩のことを好きだと言っていた。すると彼は私の左手をそっと撫でた。最初はびっくりしたがなぜか落ち着いた。そして先輩は、突然、

「ねぇ、キスしない?」

と言った。一体この人は何を考えてるんだとは、思ったがなんだか嬉しかった。戸惑いながらも縦に首をふった。そしてキスをした。それ以来、付き合うことになった。そして、いろんな一面を知って今の2人がいる。付き合ってもう、10ヶ月になる今でも、まだ人を信じることができない。そして、まだ人と関わることを避けている。だが、少しずつだが、人への恐怖心は弱まっている。きっと彼が変えてくれたと思う。

次は、私ががんばらないと。果たして彼を幸せにしているのか。果たして傷つけてはいないだろうか。初めて人と真剣に、関わっているから不安もあるがきっといつか、その不安がなくなることを信じている。

 何より、今でも彼と出会ったことに感謝している。こんな風に優しくしてくれて、好きになった人は、いなかった。そして、きっと何があっても彼を信じられると思えた。なぜなら、彼が私の真っ暗な心に光を灯してくれたから。

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