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引き籠る為に 2

ああ…失敗してしまったのか……死んだか俺? じゃあこの意思は何なんだ??

真っ暗な闇の中で自問している。意識はあるのに身体を動かすことが出来ない、動かす身体を認識できないのだ。


『死んでないよん』


一体此処は何所なのかと考えていると、突然に辺りに不思議な声が響いた。


『まったく、いきなりかの地に侵入したかと思えば、随分無謀なことを……

あの地はこの星の中心であり、この星の魔力を循環させている場所なんだからね』


不思議な声は呆れたように語りかけてくる。死んでからも小言を聞くとかありえない。


『だから、死んでないってば! あんたの力は忌まわしい祝福を受けてるけど、あんた自身の性格はその祝福に反してるみたいだから、手を貸してあげたの』


!?


『驚いているとこ悪いんだけど、今あんたの意識と直接やり取りしてるから、思考回路だだもれ』


何だと!!?


『凄いよね~此れだけの祝福受けといてその力を精一杯使って引き籠るとか、怠惰なのか何なのかわかんないよ』


プライバシー何所行った!? 怠惰で何が悪い!! 面倒臭い労働しないで生活できるのであれば、そっちの方がいいに決まっている。しかもその為にこんなにも頑張っているのだから寧ろ勤勉と言ってもいいだろう!!


『いやいや、どうどうと言ってるけど最終目標引き籠りってダメ人間だと思うよ?』


何が良くて何がダメなのかは自分で決めるし。……そんなことより、あんた誰?


『自己紹介がまだだったね、自分は他者から精霊と呼ばれる存在だよ。君の名前は知ってるからいらない』


精霊って架空の存在だと思ってたけど、まぁいい。さっき祝福とか、手を貸しただの言ってたけど、どーゆーこと? しかも忌まわしいとか言わなかった?


『質問だらけだね~……ん~何から話そう。しいて言うなら、君は忌まわしい祝福を受けた存在ってこと。人より魔力多いでしょ? それ祝福のせいだよ、もっとも君の性格だと、祝福本来の目的を果せないから今んところ問題なし詳しいことは知らなくてもいいよ。しいて言うなら、自分たちに迷惑かけなければ、ね。手を貸したってのはそのまんま。君がなかなかの無茶をして暴発しそうだったのを助けたの。今は自分と会話するために意識を失ってるけどそのうち元に戻るよ』


祝福なのに忌まわしいとか意味わかんないし。まっ俺の引き籠りを邪魔しなければ、あんたに迷惑かけないんじゃない? 因みに何で助けてくれたん?


『祝福に反する性格だから』


本当意味分かんねーし……まぁ、助けてくれたことは感謝する。


『ど~いたしまして~。感謝するなら、環境破壊禁止。陣地取ゲーム禁止を心がけてね~』


はぁっ!?どうゆー意味だし?




意味が分からなくて問いかけるも、バイバ~イいう気の抜ける声を最後に自称(本人は他称って言ってたっけ)精霊の声は聞こえなかった。どういう意味だと考えていると今度は遠くから、少しずつ別の声が聞こえてくる。


「……ン!」


「お……て…………イン!!」


「ルイン!!!」


俺の名を叫ぶ声が聞こえた瞬間に目を覚ました。そこには心配そうに覗き込むシーズの姿が見えた。心なしか疲れてるように見える。


「よかった、ルイン大丈夫? 島の魔力が安定したと思って来てみたら、倒れてるし……」


「まぁ、なんとか成功、したのか? 環境破壊禁止、陣地禁止とか言われたけど」


「えっと……誰に?」


「自称精霊」


いつも困ったことがあると苦笑するシーズはこの時は珍しく顔を引き攣らせて大丈夫? と尋ねてきた。失礼な。


そのまま、先ほど起きた自称精霊との会話をシーズに話しながら、俺たちは完成した搭に足を踏み入れた。

搭は外から見ると、空に向かってそびえ立つ巨大で真っ黒な円柱だが、中に入ると明るく清潔感漂う巨大な空間になっていた。窓が無いのに閉塞感を感じず、温度、湿度が快適に感じられる。搭を作成するにあたって、内装は自分が引き籠る部屋しか考えていなかったんだっけ……


「中は追々作るとして、部屋を確認しないと」


俺は一番の目的でる俺の部屋に向かった。こんだけ背の高い搭ではあるが、俺の部屋は地下に作成されているはずだ。

いそいそと階段を降りていくと、地下だというのにそれを感じさせない明るい空間が広がっていた。そして何故か壁の一部に滝が出来ていたり、温泉が湧いていたりと、異様な光景を醸し出していた。


「随分自由な作りだね」


呆れたように周囲を見渡しながらシーズは呟いている。仕方がないだろう、あれだけの魔力を操作したんだ、暴発させないよう必死で内装まで手が回らなかったんだから。


「追々調整すればいいだろう」


いろいろ弁明したいことはあるが、それだけ言ってシーズを睨みつけた。


そこから俺たちはこの搭を住みよい環境にするため尽力した。と言っても、俺は自分が引き籠る地下を弄った位だ。ダラダラできる少し大き目なベットに、暇つぶしの本を収納できる本棚。壁に発生していた滝を利用することで、清潔な排泄場所や

安全な飲み水の確保が出来た。温泉も使い勝手を良くするためにいろいろと弄ったりもした。着々と整備されていく環境だが1つ問題発生した。


「おなかすいた」


そう、食糧事情だ。早朝に島に来て今までぶっ通しで作業をしていて、気づいたら夕刻になっている。塔に入ってから一度、携帯食料を食べてはいるが、固くて味の薄い携帯食料は余り好きではない。町か村にでも食べに行ってもいいが、今この場所を離れるの得策ではない。

島の魔力が安定したことはきっと周辺諸国に知られているだろう。安定したと言っても俺やシーズが過ごせる程度にである。魔力が少ない者がこの島で過ごせば異形まっしぐらだ。しかし、ある程度魔力がある者であれば島で多少過ごすことは可能であり、搭に入ってしまえば永住も可能だろう。

その為、ここを離れたタイミングで誰かが侵入した場合、とても面倒なことになるのは目に見えているのだ。防犯面をきちんと考えなくてはいけないのだが、如何せん快適な環境だけを考えてい為、そこまで考えていなかったのだ。


「携帯食料ならあるけど……流石に嫌だよね、ちょっと食料買ってくるから、ルインは調理場作ってくれない?」


落ち着いたら料理できた方がいいでしょ。そう言いながら出かけて行ったシーズを見送った。


「料理できたらって言われても、俺料理したこと無いし……」


調理場を作ることは可能だが、作ったところで意味を成すのか不明の代物について俺は考える。要は作れる奴が作ればいい。あいつも俺の世話だの、何だのと言っていた。1人で納得しながら俺は作業に取り掛かる。これだけ広い空間だ、部屋がいくつか増えようと問題ないはずだ。それに、もう直ぐ日も暮れる。


「作れないものは今度買いに行けばいいし」


ブツブツと独り言をしながら作業を勧める。当初の作りは、俺のベットや本棚がある空間とそこから壁に仕切られた排泄場所と温泉があるだけの広い空間だったが、そこに更に仕切りを増やしていく。


「ただいま? 新しい部屋作ったの? 調理場??」


無事に作業を終わらせてベットでだらけていると、新たに出来た仕切りを不思議そうに眺めながらシーズが戻ってきた。

俺はシーズが出てからも、空腹の自分にムチを打つかのように作業をしていたのだ。シーズの疑問を解消する前に食事をすることの方が大切だ。いそいそとシーズに近寄り、おなかすいたと言いながら手を差し出す。そうすれば、いつもの苦笑を見せながらも、シーズは何もない場所に手を伸ばした。伸ばした先の空間が歪むと、その歪みに手を入れてから、その手を引き出した。

引き出した手には幾つかの包を持っていて、それからは食欲のそそる匂いが漂っていた。

シーズが手を入れたのは、空間魔法の一種で、使い手の魔力によって入れられる量が変化する収納魔法である。コントロールによっては空間内の時間も弄れるため、食料を入れても常に出来立てで保管される。とても便利な魔法ではあるが、その分コントロールが難しく、並みの魔力量だと収納量も激減する。俺も使えるし、収納量には自身があるが、コントロールがシーズ程上手くないので、食料の鮮度は保てるが、一度収納したモノを取り出すのに時間がかかる。

大きいモノなら問題は無いのだが、小さいモノだと探し出すのに苦労する、大量のモノを収納していると尚更だ。簡単に言うと、何処にしまったか分からに状態になっているのだ。なので俺は最低限度のモノしか、空間に入れないようにしている。因みにここに来るに当たって、空間に入れてきたのは、ベットと本棚、そして大量の本だけだ。

もしかしたら、他のモノも入っていたかもしれないが、覚えていないということは問題ないだろう。


相変わらず緻密なコントロールに関心しながらもシーズから食料を受け取り、そそくさと包を開けた。中から出てきたのは、まだ湯気が出て温かい真っ白な肉まんだ。他にも数本の串焼きもあり、急いでそれらを口に運ぶ。あまりに急いで食べていたら、肉まんが喉に詰まってしまった。熱々の肉まんが喉に詰まるのは、中々に辛く慌てていると、シーズが再び空間から取り出した冷たいジュースを渡してくれた。


「そんなに慌てなくてもいいだろうに」


シーズはそう言いながら、のんびりと肉まんを食べていた。ジュースで肉まんを飲み込みお礼を言いつつ、俺は串焼きに手を伸ばす。牛肉と野菜を交互に刺して焼かれた串と、鶏肉にタレを付けて焼かれた串、魚が1匹焼かれた串と3種類ある。どれもが大ぶりで食べごたえがありそうだ。

その中から鶏肉の串を掴み今度は詰め込むことなく、のんびりと食べ始めた。甘さと塩加減が絶用のタレが美味しい。


「シーズの部屋に料理場作ったから」


鶏肉を味わいながら、サラリと伝えてみる。部屋と言ってもまだ家具が入っていないので、ただの広い空間でしかないが、そこは自分で改造してもらうしかない。

少し驚いたような顔をするシーズを横目に次々と串焼きを食べていく。


「寝る部屋とか必要だろ? もっとも家具が無いからベットも無いけど、でも布団や毛布は沢山あるし」


食べ終わった串を魔法を使い一瞬で消し炭にする。そのまま湧水で手を洗って俺は自分のベットに潜り込んだ。


「温泉は共同になるけど問題ないだろ? お前の部屋に布団とか置いてあるから……お休み」


今日は本当に疲れたのだ、少し早いが寝ることにした。相変わらず、シーズは苦笑していたが、諦めたのかそのまま先ほど作られて部屋に入っていった。


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