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進路希望 4

校長室から出た後、シーズと少し言葉を交わしてから俺たちは分かれた。今日の授業は終わっているが寮に戻るには少し早く、教室に戻ればセレナがいるかもしれないので戻る気にもなれない。行く当てもなく校内を散策していた。


「よっルインじゃん」


そうやって俺に声を掛けてきたのは騎士科のレナルド・シンシアだ。彼は祖父、父、兄、姉が王宮騎士に務めているエリート一家の末っ子だ。

本人も騎士を目指してこの学校に入学したが、周りからの期待やらいろんな思惑に揉まれグレてしまった非行少年ならぬ非行騎士である。

もっとも彼がグレた原因の中には家族が非常に過保護であるということも含まれているので、家族関係はさほど問題は無い。


「さっき呼び出されてたけど今度は何したんだよ」


ニヤニヤしながらさも俺が何かをしたかのように聞いてくる。


「寧ろ何もしてないし」


「サボりすぎたのかよ?」


「ちげーし、もしそうならお前も呼ばれるだろうが」


それもそうかと納得しているレナルドは、非行騎士らしくよく座学の授業をサボり、校外で魔物狩りや迷宮探索をしていた。本人曰く知識とは現地で学ぶものだと。傭兵ならまだしも、騎士の場合は何か違う気もするが自分もよく一緒に行っていたのでよしとしよう。

専門科の違うレナルドと知り合った切っ掛けはサボりなのだが、非行騎士でもやはりエリート一家の一員ともあり、非常に剣が立つ。

俺は魔法は得意だが、剣などの武術は心もとない為、目的によっては彼とパーティーを組むと非常に効率がいい。なによりお互いがサボっている身の為、口煩くないのだ。


「何でも卒業後に引き籠ることがありえないんだと」


呼ばれた理由を簡単に説明する。


「はぁ? 散々話し合って諦めてたじゃん、あいつら」


「先生じゃない外部試験管で王宮から来たやつ」


「へー、外部試験管わざわざそんな所から呼んだのかよ。まっ、ルインも災難だったな。あそこは無駄にプライドが高いやつらがうようよいる」


ハッと鼻で笑いながら然も面倒臭そうに言い放つレナルドは、家族に4人も王宮勤めがいるため、それなりに内部事情を知っているのだろう。


「俺よりもお前は卒業後どうするんだよ?」


俺には引き籠るという盛大な目的がある。しかし非行騎士はどうなのだろうか、本人の性格だと、いくらコネがあっても王宮には入らないだろう。


「まっ俺は適当に冒険者でもやるよ、一応ギルドには登録してあるし」


こいつはもう騎士ではなく傭兵と呼んでいいと思う。いや本人も言ってるし傭兵ではなく冒険者か。


この世界での働き方は様々ある。身分が高いものは別だが一般的には王宮勤めのエリートや、町や村で働いている。しかし魔法や武芸に秀でた者によってはそれらを選ばずに、冒険者として世界で活躍する者もいる。

人が住んでいる集落を少し離れると魔物が多く生息する。魔物によっては人を襲ってくる。そんな時に活躍するのが冒険者である。戦う職業には騎士も存在するが、彼らは基本己の主人を守ることが仕事である為、集落を守るために出動されることは殆どない。

騎士以外にも兵士という存在もあるが、今は置いておこう。

それ以外にも冒険者は、その名の通り世界を冒険している者も多くいる。世界には迷宮と呼ばれる不思議な場所がいくつか存在する。詳しいことは省くが、迷宮によっては多くのお宝があると言われ、それを探して正しく冒険をしているのだ。

他にも、魔物狩りを専門とした者もいる。魔物からは毛皮や牙、鱗といった貴重な素材を入手できる。これらは職人の手で様々な道具や武器、中には生活に欠かせない物に仕上げられる為、需要が高いのだ。

中には、己の強さだけを求めている者もいるのだが、要は自由なのだ。誰かを守るのも、お宝を探すのも、素材を集めるのも、強さを求めるのも、何をしても冒険者だからと納得される。勿論、盗賊行為といった犯罪は許されない。

しかし自由ではあるが、そこに命の保証は無い。また、冒険者として活動するには、ギルドと呼ばれる施設で冒険者の登録が必要になる。登録することで身分証を発行されるが、それが無ければ迷宮に入ることができない。

そして、この登録がされると、基本的に自分の身は自分で守らなくてはいけなくなる。冒険者は誰でもなれるが、それで誰もが生活できるわけではない。多くの人が一攫千金を夢見て冒険者になりそして多くの人が死んでいるのが現状だ。


「よく家族が許したな?」


そんな危険な職業によく過保護な家族が許したなと、心底思い、つい聞いてしまう。


「煩せー俺の将来に家族は関係ねー……っても拠点は家にしろとか、あまり危険なことはするなとかいろいろ言われたわ。もっとも、近いうちにバックれるけどよ」


苦い顔をしながらも、家出宣言をするレナルドに多分無理だろうと思わざる負えない。彼の家族は異常なまでに過保護なのだ。


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