進路希望 2
sideセレナ
試験も無事に全員終わり先ほど集められた教室で説明を受けたところだ。試験の結果は先生たちの話し合いの結果、後日発表とのことだ。先程のの試験で本日の授業が終わったため、補講がない生徒たちはそれぞれ自由の時間を過ごしている。
「無事に試験が終わりましたが、お2人はどうでしたの?」
「試験管が後ろから追いかけてきたけど、まぁ僕は問題なかったと思うよ」
「よゆー」
私が尋ねるとシーズは笑顔でルインは机に突っ伏したままくぐもった声で返してくれる。
「セレナはどうだったの?」
それっきり黙ってしまったルインとはちがいシーズが質問してくる。
「私も制限時間ギリギリになってしまいましたが、オーブの破壊はなんとかできました。木々が茂っていましたので、オーブまでの移動が大変でした」
そう溜息をつくと机に突っ伏していたルインがガバリと顔を上げた。
「俺荒野に連れて行かれたけど?」
「僕も荒野だったよ」
不思議そうに私を見ながら2人が言ってくる。
「まぁ生徒の人数もありますし、それぞれ別の場所で試験を行ったのでしょう。
それよりも、その様子ですとお2人とも試験は合格でしょうし、卒業したらどうなされるのですか?」
木々が移動の邪魔で移動に時間が掛かった身としては、荒野という条件に少し羨んだりもしたが、直ぐに2人の実力なら木があろうと無かろうと関係無いことや、荒野での不利を考え直ぐに話題を変えていく。正直1番この2人に聞きたかったことだ。
この学校を無事に卒業できればより良い就職が可能となる。私は少し例外で学校があまり関係ないところに就職する予定ではあるが、2人の実力はこの学校始まって以来の天才児と専らの噂である。しかし卒業後2人がどうするのかを知っている人は私の周りにはいないのだ。
「引き籠る」
期待を込めた質問にルインが躊躇いもなく答えてくる。
「はっ!?」
何を言われたか理解ができなかった。
「あはは……ルインってばこれしか言わないんだよ まぁ当てもあるし、問題ないかなっては思っているけど」
固まった私を見てシーズが苦笑しながら答えてくれる。当てって何とか、問題しかないでしょう、とか突っ込みしかない。
「因みにシーズはどうされるのですか?」
ルインのことは聞かなかったことにしてシーズに矛先を変える。
「僕は、ルインのお世話もあるか、その合間に少し冒険をしてみようかと」
……
「貴方たちは何を考えてますの!? 引き籠りとそのお世話だなんて!! さらっと答えてますけど、それは仕事ではありませんし、誇れることでもありませんのよ!」
我慢が出来ずについに声を荒げてしまった。でもこれは許されると思う。歴史あるアシュトレイン学校を卒業するのに仕事をするでもなく引き籠りになるだなんて。
それが、実力のある人間がすることだろうか。
「お2人の実力があれば王宮勤めも可能でしょう? そうでなくても他にもこの国の民の役に立つ仕事ができるはずですわ。それとも引き籠るというのは研究施設などで研究するということですの?」
自分の考えを2人に捲し立てる。魔法使いという存在は誰でもなれるものではない。絶対条件として魔力を保持していなければならない。大抵の人間は産まれた時から魔力を保持している。
しかしその量はバラバラで、魔力が少なければ炎魔法を使ってもマッチの火よりも小さな火しか作り出せない。また魔力を全く持ってない人間も存在する。そういう人たちは魔法使いになることができない。
勿論魔力があってもそれを使いこなせなければ魔法使いとはよべないのである。しかし魔法使いとして魔法を使いこなせれば、生活水準の向上から、魔物討伐、医術の発展と多方面で活躍することができる。ルインとシーズの2人は魔力量、技術力どちらもトップクラスの実力だ。2人が魔法使いとして世に出れば、多方面での活躍が期待できる。
「はぁ? うるせーし……俺は引き籠るの、この5年間頑張ったんだからゆっくりするんだよ。研究は気が向いたらするんじゃね?」
そんな私の考えとは逆にまったくやる気のない声でルインが主張する。
「ほら、ルインって言い出したら譲らないし、学生生活を頑張ってたかは正直わからないけど、なんとかなるかなって。偶に僕も様子見に行くし」
「なんだよ、俺マジで頑張ったし」
シーズ、あなたはルインの保護者ですか!? それとルインはよく授業中に寝てたりサボったりと決して頑張ったとは言えません!! と、内心言いたいことはあるのだが、目の前の2人に掛ける言葉が見つからなかった。
≪魔法科5年シーズ、同じく5年ルイン大至急、校長室に来なさい 魔法科5年シーズ、同じく5年ルイン大至急、校長室に来なさい≫
目の前の遣り取りをボーっと眺めていたら突然2人が校内放送で呼び出された。この放送に2人もだらけた会話を中断して顔を見合わせている。
「何で校長室?」
「さぁ? 行ってみるしかないでしょう」
そう首を傾げながら2人は大人しく校長室に向かって行った。