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進路希望 1

sideロイス


「いったい彼らは何なのですか!?」


バンッ!!とテーブルを叩きながら先ほどシーズとルインの試験管を担当した女性が声を荒げた。試験の時とは違いフードを脱ぎその顔を晒している。彼女の顔は、少し垂れ気味の青い瞳、ふっくらとして艶やかな唇と妖艶な美女といえる顔立ちだが、今はその瞳を鋭くさせ眉間に皺をよせ苛立ちを感じさせる姿はとても迫力がある。


「学生で転移魔法を使用できるなんて聞いたことありません。それ以上にあの魔力量は異常です!! あの量は現在の王宮魔法士たちよりも遥かに多い。しかしそんな報告聞いていません!!」


先ほどから声を荒げている女性は王宮魔法士と呼ばれ、このアシュトレイン学校があるカスティス国の王宮に務める魔法使いだ。この学校を無事に卒業できればより良い就職ができるとされるが、それでも王宮となると話は別だ。王宮で務めることができる者は尊いとされる血筋、もしくはかなりの実力が必要とされる。そのため王宮に魔法使いとして勤める王宮魔法士はこの国の魔法使いたちの憧れともいえる。

しかし今回問題となるのは、その憧れともいえる魔法使いたちよりも魔力の量が多いとされる存在がいたということだ。

本来学校には王宮に対して報告の義務があるというわけではない。学校を運営しているのは国ではなく個人だからである。

しかし王宮魔法士としては国の魔法使いたちの頂点であるという考えから、魔法に関することで把握していないことがあるということが許せないのだろう。そのため、今まで彼らの存在を報告しなかったことに大層お怒りになられている。

だが、学校側からしても彼らの存在を王宮に報告すれば、卒業も待たずに彼らを無理矢理王宮に入れられることがわかっていた為、決して彼らの存在を外には洩らさなかった。いくら王宮魔法士が世間から憧れだとしても、彼らが希望しないのでは無理に入れる必要もない。今回試験管という形で王宮に知らせたのは学校側の保険となるが、問題はないだろう。


「しかも彼らの卒業後はどうなっているのです。今回、貴校からの生徒は宮入りは予定はないはずですが!?」


「ええ、残念ながら今期の魔法使いは王宮入りは予定しておりませんよ」


「彼らほどの実力があれば宮入りは可能です。むしろ他に入れるわけにはいけません!!」


「何故いけないのです。我が校は生徒の意思を尊重しております。彼らが望まないのであれば無理に王宮入りはさせませんよ」


「望まないですって!!? ありえません!! 魔法使いにとって王宮魔法士はこの国のトップですよ普通入りたくても入れないものなのに……まさか他の国に流れるってことはありませんよね!? 貴校はこの国を裏切るつもりでか!!!??」


どうして裏切りまで話が飛んでいるのか。ヒステリックに叫ぶ彼女とそれをのらりくらりと躱す我らが校長ジョーン・アシュトレインの姿を同じ部屋にいるのこりの教師たちは頭を抱えて見ることしかできなかった。

最初、ローズ先生から試験の報告を受けある程度の問題は予想していたが、今回来た王宮魔道士は少しプライドがお高いようで予想以上に騒いでくれている。

現在この部屋で行われているのは、先程の試験による生徒たちの合否を決める会議である。試験内容は制限時間内にオーブを破壊することではあるが、全て破壊できたからといって必ずしも合格とは限らない。それを学校の教師と今回招かれた外部試験管たちで、生徒1人1人について話し合わなければならないとても大切で時間のかかる会議である。それなのに王宮魔道士である彼女は会議が始まると同時に先程から校長に例の2人についてを怒鳴りつけている。


「ロイス先生彼らの進路希望書を王宮魔法士殿に見せて差し上げなさい」


目の前の遣り取りから目を逸らしていると突然こちらに話がとんできた。正直、あの2人が王宮入りを希望していればここまでめんどくさい状態にはならなかったはずなのだが、今回はもう諦めるしかない。彼らと何度も面談して説得やらお願いやら(教師の面子なんてものは既に捨てた)したのだが、彼らは意思を曲げなかった。


「こちらが2人の進路希望です」


急に話を振られても、問題が起きたときはこの紙を提出することは事前に打ち合わせしていたため、慌てることなく王宮魔法士に差し出した。




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《進路希望》


所属:魔法科

氏名:ルイン


第一希望:ひきこもる

第二希望:

第三希望:


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《進路希望》


所属:魔法科

氏名:シーズ


第一希望:自分探しの旅

第二希望:ルインの世話

第三希望:


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