初めての満員電車
―――――どれくらい時がたったでしょうか。
「もっと電車内へ入ってくださーい!!」
後ろの後ろのずーーっと後ろの方で、微かに駅員さんの声が聞こえた。
暑い。蒸し暑い。私の知らぬ間に電車がサウナにでもかわってしまったのだろうか。
――電車に乗った頃とはうってかわって、四駅ぐらい過ぎたあたりから人がどっと入ってきた。
私は身動きすら取れないまま、座る所の横のかどっこの方で小さくなっていた。
スクールバッグに何も入っていなくてぺちゃんこにする事ができるのが唯一の救いだった。
しかし息もできないほど振り返る事すらできない程窮屈になった車内で、私は一人涙目になっていた。
「次は、○○。○○でございます」
今は○○か。あと三駅……
毎朝こんなむさ苦しい電車に乗るなんて、無理だよ……
そう私が落胆している時。
――私のお尻らへんに微かな違和感があった。
何とか頭だけ後ろを振り向くと、おじさんではなくまだ大学生ぐらいの、強面の男が立っていた。
一瞬痴漢かと思ったけど、こんな満員電車の中、手ぐらいあたってしまうだろう。
それに痴漢とかおじさんとかがするイメージだし、こんな若い人はやらないよね……。
あと三駅だし、私は少しは我慢することに決めた。




