10/20
初めての制服
四月。
寒さもだいぶ和らぎ、暖かな春の風が優しく吹く中、ついに私の高校の入学式の日がやってきた。
「ふーぅ、緊張する」
入学式の準備が終わり時間が余った私は、緊張を解すようにその場に軽くジャンプをした。
カチカチの真新しい制服、春の匂い、いつもと違うスクールバッグ。すべてが私の気持ちを高揚させる良い材料だ。
私の通う事になった学校である鎌津高校、略して鎌高には同じ中学だった子が一人もいない。
しかも、鎌高は中高一貫校でもあり、いわば私は外部入学なのだ。
つまり、ヘタすれば本当に孤立しちゃうかもなわけ。
さっきから胸のドキドキが抑えられず、落ち着きなくあたりをうろついてはお母さんに怒られるのを繰り返している。
チラッと時計を見ると、丁度いい時間になっていた。
「おかーさん!もう行くねー!」
相変わらず忙しげなお母さんに叫ぶようにそう言った。
「はーい。お母さんもあとから行くから、先行ってて!」
私は適当に返事をしつつ、いつもいるはずの家に名残惜しさを感じつつ出発した。




