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第五十一話、ゴブリンは伝説を作れますか?(1)

 今日は柚子と合流。


 素敵なモンスターと出会えれば、一日で強化出来るのが強化型俺の素晴らしい所だな。


 ま、他にもいろいろあったがな。


「兄さん、どうですか? 強くなりました?」

「なんか、心を抉りかねない言葉だな……まあ、ほどほどにな」


 開口一番の言葉に、なんとか耐えながら俺は言葉を紡ぐ。


「む、自信満々ですね……楽しみです」


 あまり信じてない? まあ、そうか……話をして翌日のことだからな。


「ま、見てるといい。俺の勇姿をな」

「兄さんはいつも格好いいですよ。だから期待してますね!」


 ん、その期待に応えて見せよう。


 レベルも近いので、そのままパーティーを組む。


 俺が14で、柚子……ユンがこっちはこっちでレベル上げしてたようで12。

 ゴブゴブ道場行かなかったら、おいつかれてたじゃん。


「兄さん、レベル上げないって言ったのに……」

「スキルを上げたりしてたんだ。ある程度は勘弁してくれ」


 ステータス全く上がってないんだから。


「それで、何処に行きます?」

「うん。俺が昨日スキルを鍛えた道場があるんだけど、そこに行かないか?」

「道場?」

「ああ、まあ、普通に籠もってたってだけなんだがな」


 行く場所は決まった。


 そう、小鬼の郷だ。













「また、強くなってるのな。そのウサギは」

「それはそうよ。そうじゃないと、私だけじゃ戦えないし」


 ゴブリン村民兵に対して、派遣される6匹のクロウにラビット。

 気配遮断で、背後からの奇襲をかける俺。

 それに紛れて常にサモニングを敵にかけるユン。


「元々、ユンと同レベルだしこんな物か」

「思ったより敵さんが強くないです……」


 まあ、戦いがメインじゃなくて、ゴブリン調査隊が守ってる通路の先に行きたいのが一番の目的だし。


「ま、レベル20が守ってる先に何があるか興味あるだろ?」

「うん、それもなんか冒険って感じするし、悪くないよね」


 それにしても……ラビットのそんな使用方法があるとは。


「なんか、ユンのそのラビットの使い方……システムの裏をつきました、みたいな感じで凄いな」

「えへへ、一寸考えてみたんだ。ラッキーと一緒に喚んだラビちゃんはMP使ってないから、私のMPが無くても消えないんじゃないかって」


 で、結局、消えなかったわけだから、MPが2しかないユンもサモニングを戦闘中に比較的安全に使うことが可能、って訳だ。


 だが、修正されそうだな。スキル効果でコスト無しで召喚した召喚獣は、基本設定の筈の5分を越えても消えないなんて……デメリットないじゃん。


 ま、俺も負けてられないな。


 目に物を見せてやろう。










 さて、広場だ。


 三匹のゴブリン調査隊が警戒してる。


「うわぁ、全く動かないよ。あんなの通り抜けるのは無理じゃないの?」

「通り抜けるんじゃない。突破するんだ。俺があれらの動きを止める。ただ着いてくればいい」

「その後はどうするの?」


 ふ、そんなのは簡単な事だ。


「道行き次第だ」


 同時に俺はスキル、アーマードカウンターを発動させる。

 体が光のオーラを纏う。


「わ、何それ……なんかアニメの主人公みたいになってるよ」


 それは光栄なほめ言葉なのか?


 で、そのままゴブリン調査隊に向かって走り出した。


「ちょ、兄さん、無茶だよ!?」

「大丈夫、ついてこないと置いていくぞ!」


 6匹のクロウと共に、どんどん近づいていく。


「自動迎撃システムってのは、距離に入れば誰にも止められないのさ!」


 ゴブリン達がその手の武器を振るって攻撃モーションに入る前に、アーマードカウンターの効果範囲に入る。

 これが俺の最大の作戦だ。


「ギギャー!!」

「ギャガグギャ!!」

「ギ? ギャ!!」

「遅い!! もらったぞ!」


 成功。


 俺の体を纏う光から小さなレーザーが発射される。

 そのレーザーはゴブリン調査隊を一体ずつ直撃すると、武器をその手にしたまま各々のゴブリンをスタン状態にする。


「え? 動きが止まった?」

「スタンの時間は2秒だ。このまま駆け抜けるぞ!」


 そして、通り過ぎると、先の通路に入って進んでいく。

 スタンが切れたら奴らは追ってくる。


 だから、この先で撒ける場所を見つけておかなければならない。


「うわ、もう来たよ」

「大丈夫、まだ距離がある! このまま行ける」


 左右を見ながら走る。


 もうアーマードカウンターの効果も切れた。


 適当に道を曲がりながら、転移陣と思われる魔法陣を発見する。


「クロウ、行け! よし、ユン。ここに行くぞ」

「え、何これ!?」


 ユンの手を引いて魔法陣に入る。クロウは持たないだろうが、囮としてゴブリン調査隊に向かわせる。


「多分これがあるから、調査隊は道を守ってたんだ。行くぞ!」

「え、だから何これ!?」


 勝手に魔法陣を発動させる。


「決まってる! ボス戦さ」


 そして、俺達は転移した。


 










 そこは洞窟の中だった。


 実際には感じないが、このじめじめとした雰囲気は、何処かから腐敗臭がしてもおかしくないような気がしてくる。


「何が起こるやら……とりあえずヒーリングだな」

「憂鬱になりそうな場所だね。ねえ、兄さん。ボスって何がいるの?」


 そんなの知らん。が、柚子にそんな事言えない。


「ここがゴブリンの郷だ、なら出てくるのも多分ゴブリンだろう」

「じゃあ、あれがそうかな?」


 ん? あれ? 洞窟の少し先に、でかい金色の鎧を着た変なのがいるな。


「あー、かもな。じゃあ戦闘になるだろうから、準備はしておくか」

「私も、ぎりぎりでラッキー達を呼んでヒーリングすれば楽になるかな?」


 俺はクロウを喚んで、再ヒーリングに入りながら状況を考える。


「あれだとしたら、攻撃力も高そうだし、落とされる可能性高いな。なら先に喚んどいた方が後が楽かもしれないな」

「ん、わかった」


 そして、俺のクロウは揃って、ユンもラッキーラビット達を喚び出し終える。


 よし、行ってみるか。

 

 進んだ洞窟の先はコロシアムのようになっており、そこには、一回りデカい似合わない全身鎧を着て、鉈みたいなものを所持したゴブリン? がいた。


「ヨクモ ナカマヲ。 カクゴシロ ニンゲン」


 でかいなぁ。本体がデカいのか、鎧がデカいのかわからないような、ゴブリン? アーマードゴブリンは、急に会話の余地なく襲いかかってきた。


 即座に襲いかかってくるような気がしていたの為、動くと同時に俺はチャクラムを発動させる。


「ユン、俺が可能な限り動きを止める! その間に出来るだけHPを減らしてくれ!」

「うん、わかったよ! 皆、行くよ!」


 クロウを一匹送還してMPに1還元する。


 チャクラムで動きの止まったアーマードゴブリンに、全員がラッシュをかける。


 両手で殴りまくっては定期的に頭突きをかます俺。

 空から落下を続ける5匹のクロウ。

 杖でボコボコとぶん殴るユン。

 突撃をしながら、ぴょんぴょん攻撃していくラッキーラビットとラビット。


 総勢2人と7匹の総攻撃だ。


 しかし、どうしても攻撃力に欠けるのと、頭突きの関係で3秒に一匹クロウが減るため、攻撃力も段々落ちてくる。


「ユン、ヒーリングに入りたい。少し、ターゲットを取って逃げてくれ」

「うん、わかった!」


 ダメージはやはり向こうが上のようで、スタンが切れたら即座にユンを追いかけるアーマードゴブリン。


 俺はその間ヒーリングに入る。


 視線にはいると襲われるため、端っこに隠れてだ。


「そういや、あいつどんなスキル持ってるんだ?」


アーマードゴブリン、レベル35

所持スキル

凶化(0%)

(その怒りは王への道行き。攻撃力250%アップ。魔防御100%低下)


消費MP低減、レベル1〈1%〉

(MP消費を10%減らす)


威圧、レベル15(10%)

(周囲の敵を短時間行動不能状態にする)


竜巻斬り、レベル18(2%)

(全方位に180%)


全耐性、レベル5(2%)

(全耐性+2)


HP+150

防御+45


 なんじゃこのスキル群は……やばい、欲しい……いやいやいや、この状況で欲を出す場じゃない!


 今は一心不乱にヒーリングするんだ。


「オトナシク、シロ!!」

「何!? 動かないよ!? 兄さん!」


 なんだ、今のは叫んだら動きが止まった?


 威圧か!


 即座に動き出す俺。しかしヒーリングを邪魔しないために逃避をしていた柚子は遠い。


「サモンクロウ! 行け!」

「クラエ、ニンゲンメ!」

「んん、兄さん……!」


 駆け出すも間に合わない、俺は跳び蹴りの為の空中でその目を閉じた。


「きゃ! え、ラッキーちゃん……」


 ガコン!


「ゴブ野郎!」

「グア? キサマ!」

 

 硬い音と共に、目を開けるとそのままアーマードゴブリンの両膝を横から両足で挟むと、無理矢理曲げて転倒させる。


「柚子!」

「兄さん!」 


 駆け寄ると、ラッキーラビットが身代わりになってくれたようで姿が消えていく所だった。


「ラッキー……」

「済まん、無事で良かった。ラッキーラビットはすぐよべるのか?」


 首を振る。


 やはり、幻獣にもデスペナはあるらしい。


「なら、その分も返すぞ」

「うん、勿論だよ!」

「グ、キサマ、キサマーーーーー!!」


 起きあがったところを頭突き。


 動きを止めたアーマードゴブリンを残った俺たちで再度袋叩きにする。


「全然減らないよ」

「スキルでもステータスがかさ増しされてるからな……く、クロウ、送還!」


 MP返還し、頭突き。


 が、アーマードゴブリンの動作の方が早い!


 俺は頭突きの体制から変えられない。


 あの鉈を縦に構えたあの姿勢は竜巻斬りとか言うやつか。

 終わったか。


「兄さん、危ない!」

「な、ユン!?」


 横からの衝撃。


 今度は俺がユンに突き飛ばされたようだ。


「きゃあ!?」

「柚子!?」


 すぐに姿勢を直して柚子の所に行こうとするが、スキルでぐるぐるとアーマードゴブリンが回るので、邪魔で移動できない。

 そのまま倒れて動かない柚子。


(ごめーん、やられちゃった……兄さん、敵討ち、よろしくね)

「柚子……済まん、助かった……敵討ち? 当然だ! この兄の勇姿、たんとみるがいい」


 動きが止まったその瞬間、魔人の左手を発動。


 打つ前からコピー出来るのはわかっている。


 感情で成功率が上がるのだろうか? よくわからないが丁度いい。


 狙い通りにあれをコピー。


 そして、そのままその顔面に頭突きを叩き込む。


「三秒か……よく聞け、きんぴか」


 クロウ6匹を連続召喚する。


「貴様がこれから味わうのは、ただの蹂躙だ。いつもお前がやってるような、な」


 再度頭突きを叩き込む。


 そして、時間一杯まで魔人の左手を打ち込み続ける。


 そして再度頭突き。


 この攻勢にクロウ達も続く。


「クロウ、送還。スキル、アーマードカウンター」


 自動迎撃システムを持つ、アーマードカウンターを発動。

 そして、再度クロウを6匹連続召喚。


 その後はクロウでMPを作り、アーマードカウンターの発動、魔人の左手と頭突きを繰り返す。


「貴様が負ける敗因は一つだ。貴様は俺を怒らせた。ただそれだけだ」


 どれだけ続いただろうか?


 俺の一撃がその場の空気を止めた。


「グ、ググ、グアアアアアアアアア!!?」

「そのまま散れ」 


 消えるアーマードゴブリン。


 その消滅すら俺には必要ない映像だ。


 時間を取りすぎた為、柚子はミカールに戻されてしまっただろう。

 急いで連絡を取る。


(柚子、聞こえるか? 今仇を取ってやったからな?)

(本当? 有り難う兄さん。あんなに強かったのに、流石兄さんだね。初めてやられたからびっくりしちゃった) 


 ん、普通そうで良かった。 


(すまんな、庇ってもらった御陰で何とか出来た)

(いいよ。兄さんの助けになれたんだもん)


 いい妹を持った、俺は。


(よし、今度来た時は、寿司だ!)

(本当!? いいの?)


 兄弟愛を寿司で喜んでもらえるなら安いものよ。


(ああ、勿論だ。今からそっちに戻るから待っててくれ)

(うん、わかった。早くね~あ、でも、またレベル上がったんじゃないの?) 


 沈黙を答えにする。


(むう~もういいから早く帰ってきてね)

(ああ、わかったよ)


 さ、とりあえず宝箱でも開けて帰るか。


「レベルが高かっただけあるな。レベル3も上がりやがって……何処まで迷惑なんだこいつは。エリアボスか何かだったのか?」


 さて、ドロップアイテムは、と……まあ、未鑑定品だよな。

 剣系の武器って、あいつ鉈もってたからそれか?


 何が手に入るかとても楽しみだけど、使えるのか? 俺に。


 スキルは全てコピー出来たし、うん、良かった。


 一発目で消費MP低減をゲットできたから、消費0でクロウと魔人の左手、頭突きを使えるようになったのがでかい。


 クロウが喚び放題の御陰で、送還でMPが1もらえるからMPに困らなくなったし、頭突きで永遠とスタンさせ続ける事が可能になった。


 じゃなかったら、まだ時間かかっただろうな。


 クロウまたレベル上がって召喚数増えた。MPのストックが増えたってことだ。

 頭突きやアーマードカウンターもレベル上がったし、いい感じにレベル上がってるな。


 等と思っていると……更に目の前に宝箱が。

 今までは無かったはず。


 となると、アーマードゴブリンを倒した報酬と考えるのが妥当か。


 ならば、開けるしかないな。


 宝箱の前にたった俺はゆっくりと宝箱を開けた。

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